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「しゃしょく」 と言えば

お仕事はなんですか?

「しゃしょく」です

あ、社員食堂?

ちがいます

写真植字、略して、写植です

印刷前の工程で
版下というものを作るのですが
その版下に貼る文字を作っています

・・・


そんな写植の仕事をしていました。
もう30年も昔の話になります。


写真植字


当時、もっていた淡い夢を叶えることはできず、
転々としていたとき、
縁あって、
ある写植屋さんにひろってもらいました。

最初に教えてもらったのは手動写植機。
写真植字はその字の如く、
写真の原理で文字を印画紙に焼き付けます。

漢字や仮名がびっしり並んだ文字盤を
機械にセットして、
一文字ずつ、
ガチャコン、ガチャコンと打ち込んでゆきます。

印字は一発勝負。
取り消しはできません。
うっかり隣の文字をひろってしまえば、
現像した後に切り貼りして修正。

初めて機械を動かしたときは、
緊張でアタマの芯が熱くなり、
ふわふわしたのを覚えています。

先日、思いがけず、印刷博物館の企画展示
「写真植字の百年」を知り、見に行きました。
右が手動写植機です。
展示されている文字盤を見ていた若い二人が
「すごいたくさんの字、どうやって探すの」
「自動で選んでくれるんじゃない」

「自分で探すんですよ」
思わず教えてしまいました。


その後、電算写植機を担当することになります。

デジタルへ移行


その写植屋さんは、兄弟2人でやっていて、
弟さんが社長をしていたので、
社長、お兄さん、と呼び分けていました。

社長は手動写植機、
電算機はお兄さんが担当していました。

電算機に流し込むテキストデータは、
パソコンで用意します。

時代はまだワープロ、パソコンはMS-DOS。
(生まれて初めて叩いたキーが、
画面に文字を打ち出してゆくことに感動)

その頃のファイル名には、
半角英数字8文字しか使えず、
組み合わせを工夫して整理。
文字コードの存在も知りました。
(たとえば、漢字の「鳥」はUnicode9CE5)

そのうち、Windowsが登場し、
Macintoshが台頭してくると
写植の需要はなくなっていきました。

そして、いま


わたしは写植時代の終わり頃、
仕事をはなれ、
時が過ぎ、
いまはまた縁あって違う職種で
パソコンを使っています。

あのころには想像もしなかったところにいて、
今、こうしてパソコンと向き合い
仕事ができているのは、
お兄さんの指導のたまもの。
(いまは亡きお兄さん永遠に私の師匠です)


そして、
これからもなお

想像しえない未来があるかもしれない。

なにかに挑戦しながら、
歳を重ねていきたい

と、思っています。


#想像していなかった未来

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