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感情の埋葬(あなたの名前を書けなかった話)
あなたにこうして出すことのない手紙を書くのは初めてではない。クロアチアにある「別れの博物館」の展示が東京にやってきたとき、「さよなら」を書いた紙で紙飛行機を折って置いてゆけるコーナーがあったので、私はまよわずあなた宛に書いた。具体的に何を書いたのかは、忘れてしまった。
読まれない・届かない手紙を書くたぐいのワークショップにぶつかるたび、私はあなたに手紙を書いた。学校で毎日顔を合わせて、休み時間
島へ渡る 瀬戸内国際芸術祭2019その4
2019.08.04
4日目 大島
当初は最終日にのんびりまわるつもりでいた高松港周辺を三日目の午後に済ませてしまったので、ガイドブックに所要時間三時間とあった大島に行くことにした。
大島には国立ハンセン病療養所「大島青松園」があり、ハンセン病の歴史を知ることが大きなテーマになっている島だ。この旅を計画しはじめた時点ではまったく視野に入っていなかったのだが、瀬戸内に来るひと月ほど前の七月のはじ
島へ渡る 瀬戸内国際芸術祭2019その3
2019.08.03
3日目 犬島・高松港
前日の夕ごはんはばらばらだったのだが、朝ごはんは同室の三人で同じテーブルについて食べた。さらに車で来ていた女性が家浦港まで一緒に乗せていってくれるというので、素直に甘えた。車の主はそのまま家浦の周辺をまわるといって私たちを降ろして去り、もうひとりの女の子は高松行きの船に乗って帰っていった。
私の次の目的地は犬島だった。維新派の野外劇場での芝居をとう
島へ渡る 瀬戸内国際芸術祭2019その2
2019.08.02
2日目 豊島 ぐっすり眠って起きて七時過ぎにチェックアウト。アカイトコーヒーに朝ごはんを食べに行くと、けっこう混んでいて相席だった。トーストもコーヒーもおいしい。
水分だけでなく栄養補給もきちんとしないと倒れてしまいそうで、ごはんは意識してしっかり食べていた。
朝イチの高速船で豊島へ渡り、着いてすぐ唐櫃岡へ直行、大人気だという島キッチンの十二時半の整理券を無事もらう。
島へ渡る 瀬戸内国際芸術祭2019その1
2019.08.01
1日目 直島 とうとう瀬戸内国際芸術祭に来た。
ずっと行きたいと思っていた。2013年、2016年と都合をつけられず泣く泣く見送り、三度目の正直だ。深夜、遅々として進まない作文仕事の合間に、今年こそは絶対に行く、と突然思い立った。
過去の二回は気候が良さそうな秋会期を狙ったあげく行けずに終わったので、今年は覚悟を決めて休みやすい夏に行くことにして、スケジュール帳とオフィシ