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【備忘録】AstroDienstにおける進行図(プログレス)のアングルの進行設定「ARMC 1 Naibod/prog.day(default)」の理屈

ホロスコープを作る時に、僕はよくAstroDienstを使っています。
そしてたまに進行図(プログレス/セカンダリープログレッション)を出すのですが、いつも使っている設定の理屈、つまりはどのような計算を経てこの図が出来上がっているのかがたまに頭からすっ飛ぶので、備忘録としてここに残しておこうと思います。


進行図概要

進行図とは

進行図とは、ネイタルチャートに対して個々人の時間の経過を反映することでどのような変化が起こるのかを予測する手法で、進行図といえば基本的に「プログレス」または「セカンダリープログレッション」の事を指します。以下本記事では「進行図」と統一して表記します。

進行図で用いられる星の進行の原則はいわゆる「1日1年法」と呼ばれるもので、出生後1日後の星の配置を出生後1年後の変化として読みます。
なので、30歳の時の状態や運勢を占おうと思えば、生まれてから30日後の天体の配置のホロスコープを使います。

ハウスはどうするのか?

さてここまでは基本中の基本ですが、ここで一つの疑問が浮かびます。「ハウスはどうするのか?」という点です。
1日を1年後の星の配置とするのはいいものの、ハウスは何を基準に算出すればいいのでしょうか。
例えば僕の場合はネイタルチャートのアセンダントは天秤28°17′33″にありますが、このまま使用していく形で良いのでしょうか。一部の占星術家にしてみればそれもアリだと言うかもしれません。技法を簡易化するという面で見ても悪くないですね。
しかしながらAstroDienstをはじめ、そのような設定を採用しているウェブサービスやアプリを見たことがありません。理屈は様々だと思いますが、生まれてから人というものは常に変化を繰り返していくものでもありますし、ハウスで読むあらゆる事柄も人生を通して移り変わるものだと言われれば、それはまあそうですよねとなりますし、ここは変に抗わずに進行させた方が良いものとして受け入れていくとしましょう。

そして今回のテーマが、その「進行図におけるハウスは何を基準に算出するか」を決める設定の話です。
今回はAstroDienstに搭載されている3つの設定の内、デフォルトになっているものの説明をします。本当は3つとも書き残しておきたいのですが、力尽きたので一つだけとりあげます。また他のウェブサービスやアプリケーションではAstroDienst以外の違った計算方式が採用できるケースもあります。自分の哲学に沿った方式を採用して、鑑定技術の向上を図っていく上で、参考にしていただけますと幸いです。

ARMC 1 Naibod/prog.day(default)

それではここから具体的に設定過程を説明します。
この設定は3つありますが、設定でサイン上の惑星の進行に変わりはなく、変わるのはハウス、特にアングルの進み方のみです。

チャートタイプから進行図への変更ができる
今回の主役は表示オプションと計算オプション内の「Progressions」

初期設定(default)として選ばれているのはこの設定です。何も設定せず進行図を作成すると反映されています。
「ARMC」というのはアセンダント・MCを表し、この設定がアセンダントとMCの双方に働いている事を指します。
そして「1 Naibod」というのは、プライマリーディレクション(日周運動を用いた予測法)で用いる「ナイボッドのキー1つ分」ということを指しています。このナイボッドのキー1つ分を、「/prog.day」つまり進行させる日数分(年数分)反映させる、ということを表現した文言です。

余談ですがナイボッドのキーというのは16世紀のドイツの占星術師ヴァレンティン・ナイボッドが提唱したもので、彼の名前を取っています。彼の占星術・天文学の影響は後にティコ・ケプラー・ガリレイらも採用するほどの素晴らしいものだったのですが、彼は晩年、身の危険にさらされる時期を自分の占星術で見いだし、期間が過ぎるまで身の安全を確保するために、十分な備えをして家に引きこもっていたところ、強盗がその様相から空き家と勘違いし、家に押し入られたのちに殺害されてしまいました。本人なりの予防をしたにもかかわらず運命から逃れることができなかった、占星術の示す運命というものを考えさせられるお話です。

さて、この設定は簡単に理解しようと思うならば「生まれた時間と同じ時刻に」に軸を置くということです。
例えば僕の場合は1992年4月11日19時1分に生まれていますので、30歳ぴったりのタイミングの進行図を出そうと思えば、生まれて30日後の1992年5月11日19時1分のアセンダント・MCを進行図に反映させます。

ただここで気をつけなければならないのは、「そこから半年後の運勢を占う場合のハウスの位置は12時間後か?」という点です。そのまま12時間進めますとサインを半周する動きになりますが、これはそもそも考え方が異なり誤りになりますのでお気をつけください。

要するにこの設定は、今年の誕生日の出生時刻から次の誕生日の出生時刻までの「差」が、ゆっくり進んでいくものとして覚えて頂ければ良いと思います。例えば僕のアセンダントの場合、以下の様に遷移していきます。

  • 30歳誕生日19時1分=蠍22度35分19秒

  • 30歳3ヶ月=蠍22度47分24秒

  • 30歳6ヶ月=蠍22度59分13秒

  • 30歳9ヶ月=蠍23度11分26秒

  • 31歳誕生日19時1分=蠍23度23分47秒

これらの数字から平均を取って進行させる手法も誤りですので注意してください。ウエイトを置いている場所とサイン毎にアセンダントへ上昇するスピードが異なるためです。
もっと正しく説明するならば、「進行させる時間をナイボッドのキーを反映させた進行弧として値を求め、それを恒星時上に反映させる」感じです。ちょいムズですね。

そしてここからが備忘録です。
「アセンダント天秤28度17分33秒生まれは30歳6ヶ月分進行すると蠍22度59分13秒へ進む」
上記の考え方に至る過程を記します。

まず本来であれば、この計算には黄道座標と赤道座標を変換し合う計算過程が入るので、sin、cos等の三角関数を含んだ計算式を示したいところなんですが、まず僕が数学が苦手であるのと、時間が経って読み返した時に計算が再現できる自信がない、視覚的に理解できない、実際に関数電卓等で計算してみたものの確かな数字が算出しきれなかった等の要因が重なり、計算式を羅列したものを残すのはあまり良い手段ではないと判断したため、もっと他のツールを使ってより視覚的にわかりやすいものにしたいと思います。

使用するアプリはStellariumです。無料で使用できる非常に有用なプラネタリウムアプリですが、このアプリには星の黄道座標と赤道座標を同時に表示してくれる機能がありますので、これを使っていきます。

まず出生場所に現在地設定を合わせ、適当な年月日で太陽の位置を「ネイタルのMCの度数」である獅子1度38分38秒(黄経121°38′38″)へ合わせます。これはアセンダントが出生緯度の影響を受けるので基準としてふさわしくないのと、後に出てくる恒星時はMCに関係するためです。

太陽は黄緯0度なので合わせやすい。

すると、赤線で示した場所に恒星時で赤経「8時15分33.24秒」が表示されています。この値がネイタルMCの赤経です。

続いてナイボッドのキーを反映した進行度数を用意します。ナイボッドのキーは360度を平均的に1年で進行するように調整したキーですので、360度を1年で割って、1日で進行する度数を求めます。

  • 360度/365.25日=0.985626283368

この数字がナイボッドのキーです。1日で0.985626…度(59分8.25秒)進行させるということです。ただこの数字は黄経ではなく赤経に反映させる必要があるので、先程の計算で赤経に変換した数字を用意しました。

そして30歳と6ヶ月はつまり30.5年ですので、これにナイボッドのキーを掛けます。

  • 30.5年×0.985626283368度=30.061601642724度

つまり30.5年の赤経上の進行弧は30.061…度(30度3分41.77秒)となり、さらにこの度数を恒星時に変換します。(恒星時は1時間15度です。)

  • 30.061601642724度/15度=2.004106776182時間(2時)

  • 0.004106776182時間×60分=0.24640657092分(0分)

  • 0.24640657092分×60秒=14.7843942552(14.78秒)

  • 計 2時0分14.78秒

この値が、30歳と6ヶ月分のMCの進行弧です。
これをMCの赤経に足します。

  • 8時15分33.24秒+2時0分14.78秒=10時15分48.02秒

これが進行後のMCの度数です。これを黄経に変換するために、この度数へ太陽をStellarium上で進行させます。

すると黄経は151°57′10.9秒、つまり乙女1度57分10.9秒であると示されています。
実際にAstroDienstでも、若干の誤差はありますが同様の数字が示されています。

MCが決まると、アセンダントは緯度に従って決定されるので(この計算過程もまた複雑なので割愛)、結果、僕の生まれた緯度でMCが乙女1度57分にあると、蠍22度59分がアセンダントに上昇してきます。以上が流れになります。アセンダントから直接求めるのではなく、一旦恒星時基準のMCを計算する必要があるのがミソです。

おわりに

天球の基礎知識があると、ここら辺をもう少し立体的に理解することができるようになると思います。結構面白いので興味を持てた方は是非チャレンジしてみてください~。

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