作り手の思いを知る ~食べものにも役割がある~
食べものを買うとき、あなたは何を優先しますか?
味、品質、見た目、価格、、、
色々ありますよね。
でも、そこにもう一つ加えてほしいことがあります。
それは・・・
作り手の思い。
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「生産者」と「消費者」の距離が遠すぎる
仕事柄、生産者の方とお話する機会がよくあります。
そのときに必ず聞くのが、
どういう品質・内容なのか。
はもちろん、
どういう思いで作ったのか。
なぜなら、それをお客様に伝えたいからです。
ちょっと商売の話になりますが
お客様に商品について聞かれたときは、その商品の生産者がどういう経緯で、どんな思いで、どんなところにこだわって作ったのかもなるべくお伝えするようにしています。
そうすると、高確率で売れるんです(笑)
セールスのテクニックのように思うかもしれませんが、でもこれはとても大事なことだと思ってます。
なぜなら、現代は生産者と消費者の距離が遠すぎるから。
僕が小さい頃は、まだ今のように大きなスーパーがたくさんはありませんでした。
毎月行われる地元の商店街の朝市に行くのが大好きで
肉屋さん、魚屋さん、豆腐屋さん、酒屋さん、駄菓子屋さんとか
色んな商店のおじちゃん・おばちゃんがいつも声をかけてくれました。
お腹が空いたら友達と一緒に肉屋さんに行って、ハムを1枚もらったりして。
楽しかった思い出の一つです。
今では買い物のほとんどはスーパーなので
ときおり、あの頃のような商店街が恋しくなります。
その頃の商店って、
お店に行ったら自然と会話をします。
どうやって選べばいいかとか
どれがおすすめとか
もっといったら、こっちの要望に対してアンサーとなる品をすすめてくれたりもしました。
僕は小学生だったので、当時の大人ほど思い入れがあるわけではないけど、昔の商店を知っている人はみな口をそろえて「古き良き時代だね~」といいますね。
もちろん、いまでもそういうお店がないわけじゃないです。
近所の八百屋さんに行くと、こちらが聞くと色々教えてくれます。
今回、『食の選び方大全』を書くにあたって、色んなお店にお邪魔しました。
その中で、昔からやっている商店から教えていただいたことがたくさんあります。
商品の知識。
生産者のこだわりの部分。
その商品を取り扱おうと思ったきっかけ。
などなど、お買い物をしながら、そこにある沢山のストーリーを聞くことができました。
聞いたら次々と商品にまつわる話が出てくる。
なぜ、そんなに沢山の情報があるのか。
それはつまり、その商店が生産者と近かったからだと思うんですよね。
スーパーが悪いわけではないのですが
スーパーの店員さんに色々聞いても、その食品の置き場は教えてくれるけど、その食品のこだわりとか内容までは話してくれません。。。
もちろん、詳しい人もいるとは思いますが、その人が常に売り場で話をしてくれるわけではありませんよね。
ちょっとイヤな言い方に聞こえるかもしれませんが、スーパーはただ買い物をするだけのところ。
そして、昔の商店は買い物+情報収集+コミュニケーションがあった。
スーパーやコンビニができて、1つのお店でなんでも買えるようになりました。
しかも安い。
めちゃくちゃ便利になった反面、
生産者の声が届きにくくなっていったんだと思うんです。
でも今は、
インターネットのおかげで、生産者の思いが知れるようにもなった。
生産者にもよりますが、生産者自らが情報を発信してくれています。
ある意味、商店街が活発だった時代よりも、より直接的に生産者と繋がれるようになったとも思います。
生産者の思いを知って、その考え方に共鳴すると、不思議と応援したくなりますよね。
「買い物は投票」という考え方がありますが、僕たちが買い物をすることは生産者を応援することになり、それは小さいながらも社会に影響を与える行為なんです。
だから、食品を買うとき、もちろん「安い」のに越したことはありませんが、それだけで買い物をするのはちょっともったいない。
気になる商品があったら、品質や性能だけでなく、その生産者の考え方も知ると、きっともっと買い物が楽しくなるはずです。
食べものにも役割がある
と、ここまで話をすると
「結局、無添加がいいって言いたいんだろ」
「有機農業を応援してほしい、ってことだろ」
そう思う人もいるでしょうね。
確かに。
ちょっと前までの僕は、まさにそうでした。
でも、はじめて本を書くことになって、
色々な生産者に話を聞いたり、調べたりしているうちに、自分の考えを見直す良い機会となりました。
僕は執筆を通して
生産者や販売者の話を聞いて
「食べものには役割がある」ことを教わりました。
毎日の健康を守るためにある食べもの。
こどもを楽しませる食べもの。
恋人とのデートを盛り上げる食べもの。
友人との飲み会で、テンションを上げてくれる食べもの。
感傷に浸りながら、お酒と共に寄り添ってくれるような食べもの。
同じ食べものでも、その場面ごとに違った役割があります。
人、時間、場所によって、
色んな役割があるんです。
食について詳しくなると、
栄養や帰経(効能)、添加物や農薬のことばかりに目が行ってしまって、知らず知らずにうちに食べものをジャッジしてしまうことがあります。
でも、
食べものにも人と同じような役割がある。
すべての食べ物に存在価値がある。
良い悪いとジャッジする必要はないんです。
いまはそう思えるようになりました。
そして、
その食品を作る生産者や販売者もまた、ちゃんと役割を担っているんですよね。
なんか偉そうに言ってしまいましたが、誰かに必要とされているから商売が成り立っているのであって、商品1つ1つに、生産者の思いが込められているということ。
それが、
健康になってほしい、であったり、
楽しい一時を過ごしてほしい、だったり
大切な人のプレゼントに使ってほしい、だったり。
有機農業をしている人は、健康や環境を良くしたいという考えをもっています。
慣行農業をしている人も、同じように思っているし、食糧供給という意味で大きな役割を担っています。
それぞれのお話を聞いて思うことは、みんなポリシーをもって仕事に取り組んでいるということです。
キレイごとのようですけど、
喜んでもらいたい。
誰かの助けになりたい。
そんな生産者の思いや考えが、商品として棚に並んでいるんですよね。
だから
そうした生産者の思いを知ることが、買い物により深い意味を持たせると思うんです。
とはいえ、ずっとそんな風にまじめに考える必要はないですよ。
でも、これまでそんなことを考えたことがなかったら、1度はそんなことを考えてみるといいと思います。
僕も、もともとジャンクフードが大好きで、一時期は毎日のようにハンバーガーやフライドポテトを食べて過ごしていました。
でも、食の仕事について、無添加や伝統的な製法を守る食品に出会って、体も変わったし、考え方も変わりました。
そこで、「これが絶対にいい!」という頑なな考えを持って、商品を普及していました。
でもでも、そこからまた視野が広がって、考え方がより中心に近づいたように感じます。
たぶん、両極端、正反対のものを知ることができたから、自分なりの中心が見つかったのかな、と。
それは生産者の思いを聞くことができたから。
そうでなければ、価格や品質だけで選んでいたし、自分のなかで良い悪いと差別していたと思うんですよね。
作り手の思いを知る。
そうすれば、きっと、毎日の買い物がもっと楽しくなる。
あるとむ
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