新・夢十夜(五)
一 オーストラリアの断崖絶壁
オーストラリアの海岸にいる。素晴らしい景色だ。砂でできた断崖絶壁の上である。僕は砂の塊を下に落とす。次第に大きくなっていくようだ。砂浜にいる人たちに被害はないかと心配になる。
二 娘の友人
僕の娘Kの友人のYさんともう一人の女性が僕の前にいる。二人は僕と交際したいと言っている。僕は将来的にKが娘になる可能性があるわけだけれど、それでいいの? と聞く。二人は顔を見合わせてニヤニヤ笑っている。
三 トイレットペーパーと自動車事故
トイレットペーパー12ロール入りを買う。持って帰る際、僕は路上でそれを蹴りながら歩いていた。風が強く蹴ったトイレットペーパーの束はスルスルと転がって行く。そして大通りにまで出てしまう。車に当たらなければいいがと思っていると、運悪くやって来た自動車が急ブレーキをかけ、後続の車が衝突する。前の車のリアガラスが砕け散る。僕はあわてて駆け寄り運転手に声をかける。幸い意識もあり特にどこかを痛めているようでもない。僕は謝罪し、後に連絡先を書いたものを渡しますと伝える。僕は警察で何て言おうかと考えている。子どもみたいに蹴飛ばしていて、誤って道路に転がり出てしまってと正直に言うべきか。会社にも遅れると連絡しておかないと行けない。顧客との約束もあったからキャンセルしてもらわないといけない。ああ、面倒なことになってしまった。
四 3つのトイレ
実家である。朝起きてトイレに行くと見知らぬ少年がそこから出てきた。そうか、昨日泊まっていたのか。隣のトイレからも別の少年が出てくる。もう一人泊めたのだった。中に入ろうとしていたらまた2階から、少女が降りてくる。そうだ、この子も泊まっていたのだ。そんなに客間はないから、娘の部屋で寝てもらった。「こんなに喋ったのは初めてです。Kちゃんが寝そうになっているのに何度も話しかけて起こしてしまいました。」娘のKがあくびをしながら降りてくる。僕は奥のトイレに行こうかと思う。この家にはいったいいくつトイレがあるのか。実際には奥に1つあっただけだ。表にあったトイレを何かの理由で奥に移したのだった。
五 Dream land with S
親友のSと夢の島に来ている。車は島に入れないようで手前の駐車場に停める。島には泳いで渡れるくらいの距離で、以前は気持ち良く泳いだこともあったが、船に乗ることにした。2分ほどで着くが90フラン必要なようだ。そこで僕は車の中に荷物を全て置いてきたことに気付く。あとから車を取りに行ってホテルに入ると思っていたが、このまま島に渡るなら、財布やスマホなど持ってこないと行けなかった。それでもう一度車に戻る。Sが、こちらの方が近道だと言うので、狭いトンネルを通って行く。ふと目の前に何か物体が現れる。と思った瞬間にきらきらしたものがバラバラに広がっていく。蛾のようだが、美しい。どうやらこれはプロジェクションマップで映し出されているようだ。次の映画の宣伝かもしれない。僕たちは車に急ぐ。
六 積乱雲と飛行船
四条通りから少し上がったところだろうか。歩いていると北西の空から積乱雲が近づいてくる。その下では大雨が降っている様子が分かる。どんどんこちらに近づいてくる。僕は急いで角を曲がり建物の陰に入る。バケツの水をひっくり返したような雨を降らせながら通り過ぎていく。その後は青空が見える。びしょ濡れになってしまった人もいて騒いでいる。僕はお店の様子を見ながら大通りに出る。そこでは何かイベントをしているようで、上空に小さな飛行船が飛んでいる。子どもたちが乗っているようだ。僕は遠くの空にまた次の積乱雲を見つけて、危ないから飛行船を降ろすように言おうと思って、イベントの責任者のような人を探している。
七 村上春樹の世界
妻とスーパーに買い物に来ている。義母が出かけるので夕飯の準備ができない、外でみんなして落ち合ってどこかで食べないかと言う。しかし、僕は仕事が終わる時間も遅いので無理だと思う。子どもたちも各自家で勝手に食べられるよう冷食のよくばりパックを買っておくことにする。この前買って、まあまあ美味しかったのと、他の種類も食べてみたかったから。それでスーパーの中を歩いているのだが、どうしたわけかバックヤードに入り込んでしまったようだ。お店側に出ようと思って出口を探す。階段を下りて一番地下まで行ってみる。そこにはたくさんの人が出られずに待たされている。エレベーターに乗れば出られるはずなのだが、そのエレベーターが来ないのだそうだ。僕はこんなところで待っていられないと思い、階段を上っていく。2階上に上がるとお店側が見えた。妻にも声をかけ上がってくるようにと言う。妻と合流して外に出ようとしたところで僕は裸足であることに気付く。地下で靴を脱いで忘れてきたのだ。取りに戻ってついでに地下にいる人たちにこっちから出られるよと伝えようと思う。ところがさっきまでつながっていた階段がなくなっている。仕方なく戻って外に出る。広場のようなところで、ベンチがあったのでそこに座る。僕は妻に語りかける。「そうか、わかった。一番上の階と一番下の階はつながっているが、他の階では行き来できないんだ。そして、これは反時計回りにだけつながっている。なんだか村上春樹の世界やな。」周りに何人かの若者たちがいる。僕はこの中の誰か村上春樹を読んでいる人がいるだろうか、と思う。
八 寮の移転と水槽の買い手
寮生大会の招集がかかっている。寮長が前で準備を始めている。「今日は1年生が少ないがどうした?」今日は、1年生は授業がなかったため遊びに行ってまだ帰っていないようだ。それがバレるとまずいよな、と僕は思っている。僕は寮長に全体への連絡事項を1つさせてほしいと伝える。「先ほど水槽の買い手が決まりました。」寮は近々移転することが決まっている。もともと風呂の浴槽だったところに水槽を入れて魚を泳がしていた。それをどこかの貴族の息子が気に入り、引き取ってもらえることになったのだ。僕はまだ親しい友人にしかそのことを伝えていない。寮生大会の中で連絡事項として話そうと思っている。
九 熊の親子
熊が出る。家から外に出るときは近くにいないか気を付けないといけない。何人かの子どもたちが襲われている。射殺するべきかどうか議論もされているようだ。僕は恐る恐る外に出る。いまは近くには見当たらない。少し歩いて橋のところに来ると皆が騒ぎ出している。どうやら熊が出てきたらしい。と思っていると大人の大きな熊が2頭と子どもの小さな熊が6頭くらい走ってこちらに来る。ぬいぐるみのようでかわいい。小熊を抱いて撫でてやる。母熊が襲ってこないかと冷や冷やしている。できれば殺してしまわずに共存する道を探して欲しいと思っている。
十 心の強い王女
弱くて尊く清い国の王女のもとに僕はいる。強くて卑しく横暴な国の王子が交渉をしに来るという。一大スクープである。その場をカメラに収めなければ行けない。僕は戦場カメラマンを探しに行く。なかなか見つからずに知人たちの家に向かう。「ここからまっすぐ行ったあの家の向こう側で交渉がある。その写真を撮ってほしいのでカメラマンを見つけたらすぐ来るように伝えてほしい。」と言って僕は戻っていく。そんな危険な場所には居たくなかったので戻るのがいくぶんためらわれた。しかし、意を決して戻ってみると既に交渉は終わっていた。清い王女は卑しい王子と結婚する約束を交わしていた。僕は王女に聞く。それで良かったのかと。王女は「どうってことないわよ、あんな男。」と言っている。なんと心の強い女性なのだろうか。