F-IoTの現在と今後の展望
F-IoT : FactoryーIoTとは、工場においてIoT(Internet of Things : あらゆるモノをネットワークやインターネットにつなぎ、新たな価値の創出を目指す技術)を活用するためのソリューションや、その取り組みのことです。
IoTの活用領域の1つであるF-IoTにより、工場で産業用ロボットや製造設備の稼働状況や不良発生状況の可視化、品質管理や生産管理の自動化および高度化、電力使用状況の最適化などが行え、またトラブルに対しても、日々の傾向管理による予兆検知や発生時の対処を迅速化できるようになります。
このコンセプトは、2011年にドイツで「Industry 4.0」が提唱されたことをきっかけとして始まったとされています。それは、IoTやクラウドなどの技術を用いて製造業の高度化を目指す取り組みです。
F-IoTの目指す姿
その一例として、(株)デンソーが開発したFactory-IoTプラットフォームがあります。このプラットフォームでは、世界130工場の「設備・人・モノ」をネットワークでつなぎ、工場のさまざまな機器から収集したデータを1つのクラウドに蓄積し、自由に活用できるようにしたものでした。当時、オープンソースソフトウエアを活用したクラウドネイティブ(*)なプラットフォームの自社開発は業界初でした。
(*)クラウドネイティブ ・・・ システム構築において、最初からクラウドでアプリケーションを実行したり、ソフトウェアを開発したりすることを前提とした考え方。クラウドの利点を最大限に活用しつつ、拡張性や可用性に富む最適なシステムの構築が可能です。
F-IoTのメリットとしては、以下のようなものが挙げられます。
①製造ラインの自律制御や可視化・自動化による生産性や品質の向上
②工場間のデータ共有や分析による最適な製造プロセスや改善策の導入
③クラウドネイティブなプラットフォームによる柔軟かつ迅速なシステム開発や運用
これらを活かして、グローバルのデータのタイムリーな共有と繁栄を行い工場運営を最適化することが、F-IoTの目指す姿です。
具体的活用事例とトレンド
次に、実際にIoTを活用している企業の事例を紹介します。
①ファミリーマート : 店舗内の冷蔵庫や冷凍庫にIoTセンサーを設置し、温度管理や在庫管理の効率化
②ヤマト運輸 : ドライバーにIoT端末を装着させ、荷物の追跡や配達員の安全管理
③日本郵便 : 郵便局員にスマートウォッチを着用させ、健康管理や業務の支援
IoTの最新トレンドとして、以下のようなものが挙げられます。
①5GやLPWAといった高速・低消費電力・広域カバレッジの通信技術の普及によるIoTデバイスの多様化や大量接続の促進
②AIやエッジコンピューティングといった技術の活用により、IoTデバイスから収集したデータの高速・高精度に処理・分析する技術の進化
③クラウドやブロックチェーンといった技術の活用による、IoTデバイス間のセキュリティや信頼性の確保が可能に
F-IoTの課題
一方で、F-IoTには課題も存在します。
①工場ごとに異なる設備やデータ形式に対応するための統一基盤の構築
②大量のデータを安全に管理・活用するためのセキュリティや分析手法の確立
③現場の人たちにITやIoTの技術を理解してもらうための教育やコミュニケーション
どれも非常に重要な課題で、どれかを軽んじてしまえばその効果は非常に限定的なものとなってしまいます。そうならないために、構想段階でしっかり目指すビジョンを明確にする必要があると思います。特に、工場を作る段階からそこまで考えることができていれば良いでしょうが、大半はすでに運用されている工場にIoTの技術を適用する事例がほとんどと思いますので、今までの仕事の仕方やそこに働く方々の思いを汲み取りながらシステム構想を考えることが必要になります。
以上がF-IoTの現在と最新トレンドです。IoT自体は、工場だけで使われるものではなく、さまざまな業界や分野で活用されていますが、特に少子化が進む日本では従来のような工場運営が難しくなっていくでしょうから、リーンな工場運営を可能とするF-IoTの導入は必須になってくることが予想されますので、私自身も他人事と思わずに導入に尽力したいと思います。
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