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暮らしの勉強メモ⑩草木染のこと

こんにちは!雑貨屋 あるくらし 店主の絢音です。
雑貨屋 あるくらし は、「小さな発見と実験」をテーマに、暮らしのセレクト雑貨販売とワークショップの主催をしています。現在店舗はなく、イベント出店から活動をスタートさせました。言葉を残すことも大切な活動のひとつで、noteでは、お店の歩みや店主の暮らし日記・勉強メモを掲載しています。

京都のアトリエシムラさんにて、機織り体験をした生地。
額装していただき、リビングに大切に飾っています。

植物、植物…、植物を暮らしの中で楽しむ方法、いろんな角度からの楽しみ方を知れたらいいな。植物と暮らしの実験…とブツブツと頭の中でひとり言をいいながら、来年のワークショップの事を妄想していました。
そんな時、ふと本屋さんで目が合った本を手に取ると、「草木染め・自然の色ができるまで」というタイトル。
「わぁ‥‥!!やってみたい!」と心が弾みました。
20代前半の頃、草木染で染められた糸を使った機織り体験に参加させていただいた事がありました。美しく染まった草木染の糸を織っていく時間。目の前で紡がれる景色に黙々と夢中になっていた事を思い出しました。
その時、草木染にもいつか挑戦してみたいなぁとふわりと想い、だけど日々過ごす中で、その想いは心のどこかに漂って、しばらく顔を見せる事はなかったんです。
「あの時憧れた草木染、おうちで試してみるとどんなだろう?」
ワクワクと当時の想いが戻ってきて、手に取った本をレジに持っていきました。まずは、調べて手を動かして実験を始める事に。今回は、そんな実験の過程を記録します。

草木染のこと

染色の手順

左は、「植物と暮らし…」と心で呟いていたいた時に本屋さんで目があった本。
右は、今回の実験にメインで参考にさせていただいた本です。文末に参考文献を掲載しています。

はじめて家で試す草木染。実際におうちで手を動かした過程を振り返りながら、手順をご紹介します。今回は、身近な玉ねぎ染めに挑戦。果たして、どのように染まるのでしょうか?

1下準備と下処理
○染める布の重さをはかる。

家にあった厚手と薄手の布を染めてみます。

染め作業がしやすいように、重さをはかって切っておきます。
家にあった白地の2種類の布(おそらくコットンとリネン??)を用意して染める事に。

○湯洗いする

深めのフライパンに水を張って弱火で温め、洗ってみました。

70℃前後の湯に、布を入れて湯通しします。この工程をすることで、以降の下地染めや、媒染剤がしみ込みやすくなります。
※布に糊付けがある場合は、中性洗剤を加えた湯で良く洗う。
※動物繊維(絹、ウール)やナイロンは染まりやすい。綿など植物繊維とレーヨン・ポリエステルは染まりが弱い。が、一般論なのだそう。

○植物性の布を染める場合、“豆乳”で下地染めする。

豆乳で下地染をする工程があるとは思ってもいなかったので、スーパーに行き、
不思議な気持ちになりながら豆乳を購入。布を浸している時もずっと不思議な気持ちに。

綿や麻などの植物繊維の成分は、絹やウールなどの動物性繊維の成分に比べて、植物の持つ色素分子が定着しにくいのだそう。
そのため、豆乳に含まれるたんぱく質を布に付着させて、動物性繊維に近い状態にしてから染めるというわけです。
「へぇ~、なるほど~。」と関心しながら、でもなんだか不思議な気持ちで布を豆乳に浸します。
豆乳に浸し終わったらぎゅっと絞り、天日干しして一旦乾かします。
こちらの工程は植物染をする前日までに完了させておくのがお勧め!
※牛乳でも代用可。ただ匂いが残る恐れがあるため、豆乳がおすすめなのだとか。

2.媒染剤を布に染み込ませる

初めて買った焼きミョウバン。どうやら、ナスの漬物の色を明るくするときにも
使うようですね。

色の発色と定着を助けてくれる媒染剤。この処理をすることで、染まりやすく色落ちしにくくなるのだとか。
今回使った媒染剤は「焼きミョウバン」。自宅のキッチン道具を使用する際も抵抗なく進められるのが有難いです。明るく、鮮やかな染め上がりになります。

3.植物の色素を抽出する

家にあったお茶パックに玉ねぎの皮を入れて煮詰めます。

玉ねぎを煮出して、染色液を抽出します。こうする事で、植物の色素の中で、水に溶ける性質のものを抽出できるのです。

4.染色する

煮詰めた玉ねぎの皮の色は、深い赤褐色。少しコンソメに似たような初めて嗅ぐ香りがします。
煮詰めていくと、水の色が薄くなります。一方、布は柿のような色になってきました。

染色液に、媒染剤を染み込ませた布を入れて火にかけ、染めていきます。
段々こっくりと色が濃くなる布の姿に興奮します。

5.すすぎ

なかなか水が透明になってくれず、何度もすすぎます。何気に一番骨が折れる作業。

染色後、繊維に定着しなかった余分な色素を落とすため、しっかり布を水洗いします。洗い水が透明になるまで、何度か水を替えながら繰り返しすすぎます。もういいかな?と思ってから、あと3回くらいすすぎました。

6.乾燥

なんて綺麗!鮮やかに柿色に染まる布を見て、なんとも感動します。

染めあがった布の水気を絞り、シワを伸ばして風通しのよい場所に陰干しして乾かしたら完成!
※草木染後の布は、直射日光・高温多湿を避けて保管。お手入れは、中性洗剤で。

おわりに

染めあがった布を前に、なんとも感動しました。
ただ「美しい」という事以外の感動もあったんです。
それが、私にも「できた!」という小さな喜びでした。

不器用なこともあり、手先を使う事に対して「下手」という認知がじんわり積み重なっているなぁと自覚しています。そういったシーンを前にすると「失敗/できないよ」が脳裏に浮かびやすい性格です。今回の植物染も、初回は上手くいかないんじゃないかな、と失敗したときの保険を自分自身にかけていました。大人になり、そんな自分を理解もしていて、「上手くいく!」と気持ちを奮い立たせる日も、「ゆっくりやれば、なんとかできるさ。」と淡々と作業を進める事も、普通にあります。だけど根底には「上手くいかない。」と思ってしまう陰りが、コンディションで強弱が変わりながら、どうしても存在します。「弱さ」と捉えて悲しくなる日も、克服したいと頑張る日も、人間の仕方ない部分だなと見ないように割り切る日もあります。
自分のコンプレックスのような、少し心に引っかかりを感じる部分を、明るく希望を持って過ごせるように、何か捉え方はないかなぁと、日々考えます。
“これまでの経験に、今の出来事や感情、思考が積み重なって、これからの気持ちや思考の総動員構成がちょっとずつ変わっていく。年老いて外見が変わるように、気持ちや認知もそんな風にちょっとずつ、でも確実に変化していく。”
日々は分かりにくいけど、数年、数十年となるべく心地よい方に進めるように、「捉え方」を自分なりに言葉にしてみると、よし。と少し前向きに。
小さなやってみたい。が「できた」と叶った時、大人になった今でも、次の挑戦への小さな勇気になる気がしています。あるくらしでのワークショップを開催する時、そんな小さな“希望”を分けあえたらいいなと、そんな事をふつふつ思うのです。
植物のあるくらし、も来年叶えられたらいいな。

はじめましての方も引き続き読んでくださっている方も、お読みいただきありがとうございます。今後も焦らずゆっくり続けていこうと思いますので、どうぞよろしくお願いします。

店主 絢音

【参考文献】
kahon著 
キッチンにある材料・道具でできる草木染めの布花アクセサリー(2021)
セキユリヲ発行
季刊サルビアvol.3(2006)
箕輪直子著
誰でもできる草木染めレッスン(2011)
小室真以人著
Maito Design Worksのおうちで楽しむ草木染め(2024)


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