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積読月報(2024年7月)

こんにちは。1ヶ月の間に梅雨が明け、夏真っ盛りですね。
と、思っていると突然の夕立に襲われることもしばしば。。。
暑いか、濡れるかしかない(暑くても汗をかいていずれにせよ濡れているけれど)不快な日々です。。。

ただ、夕立にあった日には仕事帰りに丸の内に立ち寄ることが多いです。
今回のヘッダー画像はそんな日に撮影した一枚です。
地面に映り、揺らぐ東京駅。
その光も素敵ですが、駅の向こう側のビル群が霞んでいるところも好きです。

丸の内の商業施設KITTEの屋上。もしかしたら路面に映る東京駅が見れるかと思いましたが、残念ながら見えませんでした。その代わり、細く長い光の道を見ることはできました。
(屋上からだと路面に東京駅が見れないのはよく考えたら光の反射角などを考えれば当たり前でした。)

そういえば、毎年夏になると、積乱雲の写真をよく撮っています。
今年はまだ取れていないですね。
どんな雲に会えるのか、それだけが夏の楽しみです。

昨年撮影した積乱雲。成長しきって雲の上部が水平方向に広がり(アンビルという)金床雲になっている。個人的にはアンビルを見るとテンションが上がる。

前置きが長くなりましたが、今月も読書メーターを使って7月の読書記録をまとめていきたいと思います。
振り返ると7月は結構たくさん読んでいました。


2024年7月の読書記録

読んだ本の数:10冊
読んだページ数:2728ページ

柴崎友香『あらゆることは今起こる』  (シリーズケアをひらく) 医学書院

上手く言葉にできない部分もあるが抜群に面白かった。内容も去ることながら、まず表紙の写真が本当に好き。カッコいい。(あとがきを読むとなおさら好きになる。)
構成としては1辺数ページの短めのエッセイが集まっているエッセイ集のようなものだけど、一つのエピソードにいくつもの余談、文中にカッコの中で語られる同時に思考される言葉など、その構成自体が「あらゆることは今起こる」を表していると思う。一方、内容自体には自分にも通じる部分があるものの、その身近な感覚を豊かに語られる。そう、とても豊かな一冊である。

読書メーターはいつも読み終わった直後にその時の気持ちを整理しないまま書き出しているが、この本に関してもそういう文章だと今読み返しても思う。ただ、最後に書いた「豊かな一冊」という表現がこの本を最もよく表していると思う。
この「シリーズ ケアをひらく」を含めケアに関しての本を読んで毎回感じることは、ASDやADHD, PTSDなどの要素は私たちが誰しも少なからず持っているものであり、その強度が強くなると障害や心的外傷になるのだと感じる。そしてそれは人間を構成する一要素であり、そこから人間そのものというより大きなものを射程に入れて考えることもできるように思う。ケアの本を読んでいて毎回深く考えさせられ、驚かされるのは、今まで全く意識していなかったけれど、自分自身も持っている感覚や要素から、何かの本質を見事に射抜くような物語が展開されるからである。

北村一真『英語の読み方 : ニュース、SNSから小説まで』 (中公新書 2637) 中央公論新社

英語の学習参考書みたいな本を読んだのはすごい久しぶりだけど、とても楽しかった。高校の時以来体系的に英語を勉強してこなかったけどもう一度やり直したい気持ちになった。
前半の新聞やNews, スピーチの文章については割と読めた気がするけど論文とか小説はやはり難しい。というか、TOEICの勉強だけじゃ全然ダメだなぁと痛感した。もっと言えば私は大学受験の時英語はセンター試験だけだったので、受験用の英文解釈の参考書から読み直した方がいい気がした。
なんにせよ英語の勉強久しぶりに楽しいと思えたので続けたいです。

不慣れな分野の英語論文も楽々読めるようになりたいなと思って最近語学へのモチベーションが高い。
その中で読んだ一冊であるけれど、レヴューに書いた通り英語を久々に楽しいと思って読み進められた。
そういえば昔は英語と理科の先生になりたかった。

宮地尚子『トラウマの医療人類学【新装版】』みすず書房

半年ほど読むのを中断していた一冊だけど、申し訳ない、リタイアします…
大好きな宮地先生の本ではあるけど、後半は主に論文をまとめたものでありかなり難しかった。
ただ、最初の文章の冒頭の文章はやっぱり宮地先生の文章好きだなあと思わせてくれる。
もう少し修行して、読み直したいと思います。

宮地先生の本は全て読もうと思って購入した一冊。
確か半年くらい前に読み始めたけど、紹介される事例などを読んでいて少々心が辛くなってしまいしばらく塩漬けにしていた。
書いた通り結局途中まで読んで諦めてしまった点が残念。
機を見てもう一度読み返したい。

伊予原新『八月の銀の雪』 (新潮文庫 い 123-13) 新潮社

私と同じ地球惑星科学分野出身の作家ということで前から気になっていた作家の短編集。
めっちゃ面白かった。というか、やはり近い分野出身ということもあって自分の感性や考え方、興味、まとめれば好みのお話が多かった。ストーリーの面白さも、視点も。表題作の「八月の銀の雪」で留学生グエンが語る地球科学の魅力が私が思っていることとかなり重なった。近いはずなのに、見えない。わからない。それが地球。
また、自然や科学という一見無機質なものに感情が重なるところも私好み。これからも読み続けたい。

ネット上で勧められて読んでみたが本当に面白かった。
どの短編も良かったし、あと最後の参考文献欄から本気度が伝わってきて良き。
地球科学はなかなか語られない科学だと思うけれど、こうした方によって一人でも多くの人に魅力が伝わればいいと思う。
私自身、久しぶりに地球科学系の本を読みたくなった。

伊藤亜沙『どもる体』 (シリーズ ケアをひらく) 医学書院

独特な絵の表紙とビビットなピンクが目を引く。この書影には映っていないけれど、帯文も秀逸です。
本書は吃音をテーマとした一冊。特に当事者へのインタビューをもとにした研究成果がまとめられています。リズムに乗って喋ることについて「乗る」「乗っ取られる」といった考察が面白かった。というか、吃音を糸口にこの本も自分の中の他者と掛け合うみたいな話なのかなと思った。最終章で紹介されていた「ビリー・バット」が以前紹介した『中動態の世界』でも紹介されており、つながりを感じた。

どもる体。タイトルからしてとても不思議な印象。
表紙はもっと不思議というか印象的。
色んな意味で印象的な本だった。

「あらゆることは今起こる」でも同じようなことを書いたが、吃音に関しても、別に私は吃音を持ってるわけではないけれど喋っていて言葉に詰まることがある。そういう時のことを思い出しながらも、そのさりげない感覚がこんな人間の深層につながっているのかと思わされた。
とはいえ、この本をきちんと理解できたわけではない。リズムの話、対処が症状になる話、もう一度通して読み返したい。

清岡智比古『フランス語をはじめたい! 一番わかりやすいフランス語入門』 (SB新書 611) SBクリエイティブ株式会社

ムカついた笑。悔しかった。まず何がムカつくって口調、すごい癖がある。めっちゃハートとか使ってくるし、話しかけてくる。多分リアルだったらあまり関わらないタイプな気がする。ただ、それ以上にそんな普段だったら絶対手に取らない文体なのにわかりやすいし、面白いし、読んでて実際フランス語面白いと思わされたのが何よりムカつく笑。めっちゃいい本。著者のコンセプトに見事にすっぽりハマった気がする。難しいことは置いておいて、という感じだけど込み入らない程度に紹介されるから、無理なく基礎について学べたし楽しめた笑
多分、批判もされやすい書き方ではあると思うけど、こういうのは読み手が「これはあくまでさわりで、ここから他の教科書にも触れていこう」というつもりで読めればかなり有効だと思う。そして例の口調も多数実際に話されたらムカつくけど読む分には大丈夫、むしろ口語調で読みやすくなっているみたいなちょうどいい具合になっててなおさらムカつく。プロの書き手じゃないとできない芸当だと思う。ムカつく。満点。めっちゃ面白かった。

上に書いてあることが全てです(笑)
面白くて悔しかった。
あれからフランス語にあまり時間割けていないので頑張りたいです(笑)
目指せトリリンガル。

福岡伸一『動的平衡 : 生命はなぜそこに宿るのか』木楽舎

10年選手の積読本。おそらく上京するときに持ってきた。ここ最近は福岡伸一と距離を少し取ってたつもりだったので読まないでいたけど、読んでみると恐ろしい。彼の本を読んで生物学に夢中になった高校時代を思い出した。それくらい力のある本だった。最後の像と鯨の描写とか本当に感動してしまった。福岡先生は恐ろしい文才の持ち主だと思う。
彼の主張に対する批判は耳にするし、私自身疑っている面もあるけれど、そうしたことに注意した上で一度本の世界に溺れることは悪いことではないと思う。生命から世界を見たいあなたに、この一冊を。

家の近くの書店が近く閉店するらしく、在庫処分のためかレジ横に価格70%オフという本が並んでおり、その中に「動的平衡2」が混じっていたので購入した。
ただ、それ以前にこのシリーズ第一弾を読んでいなかったので今回読んだというわけです。
福岡伸一先生に関しては少し複雑な思いがあって、高校生の頃彼の『生物と無生物のあいだ』とか『世界は分けてもわからない』とかを読んで、生物学から見た世界というものに夢中になった時期もあった。
ちょうど高校の履修科目選択の時期で生物選択にしようか物理選択にしようかという時期で、彼の影響で生物選択も考えたけれどどこかで生物は限界が来そうな気がしたので物理選択にした。
その後、彼に対する批判や、私自身が専門とする分野について福岡先生が書いた記事がかなり基本的な部分から間違っていたりして正直少し距離を置いていた。それがこの積読10年という結果である。
しかし、今回感じたことは上記の通り、慎重になりながらも、彼の文章をエキサイティングに楽しむことは悪くないと思うし、得られるものも大きいと思う。
本は単に受け身で読み進めるだけじゃなくて、自分から楽しもうと思って前のめりになることも大切ですね。

千早茜『透明な夜の香り』 (集英社文庫)集英社

「最近人気の作家さんらしいしとりあえず読んでおこう〜」くらいの気持ちで数ヶ月の積読の後一読しましたが、とても私好みの好きな作品でした。別にSFとかファンタジーというわけではないけれど静謐で透明感のある世界観に心地よく沈むことができた。匂いをめぐる物語ではあるけれど、その奥には孤独やトラウマといった普遍的なテーマが潜んでおりそれらが「匂い」を糸として織られているような感じ。エンタメ的な面白さもありつつ純文学的な美しさもあってとても面白かった。小川洋子さんの解説もさすが。本編に負けないくらいの名解説(名文章)


ここに書いてある通り本当にいい世界観。
静かで美しい…
なんとなく映画を見ているような気分になった。それくらい情景が思い浮かぶ作品。

▼読書メーター


そういえば先週スクリーンでサマーウォーズを見てきました。
スクリーンで見ると迫力が違いますね👀
暑い日々が続きますがお身体にはお気をつけて

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