「世界」とは? 〜「チア☆ダン」読書日記〜

本投稿のGOAL(読後感):・「チア☆ダン」のあらすじがわかる。
               ・「世界」という言葉を考えるきっかけになる。

菅原です。

新型コロナウィルス感染症の爆発的流行に備え、緊急事態宣言が出されようとしています。
東京都を中心に、私の住む埼玉県も対象地域に指定される見通しだそうです。
我々にできることは限られているので、引き続き、手洗い、うがい、マスク着用の徹底、不要不急の外出の自粛を最大限心がけるつもりです。

在宅が多くなるこの機会に、これまで時間を充分に取れなかった読書、そのアウトプット、発信にも一生懸命取り組みたいと思います。

今回読んだ本は、
「チア☆ダン『女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話』の真実」(円山夢久著、KADOKAWA発行)
です。

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1、 あらすじ

1993年、五十嵐裕子は、福井県の公立高校に保健体育科の教員として赴任した。
しかしその高校は、金髪やメイクは当たり前、警察に補導される生徒も頻繁に現れる、いわゆる「荒れた」学校だった。生徒指導を担当していた裕子は、非行に走る生徒たちを、とにかく力で押さえつけようとする。そんな裕子と生徒の心の溝は深まる一方だった。
心身ともに疲弊した裕子は、2004年3月、自ら異動願いを提出、新天地を求めた。
次の赴任先決定を待つ裕子に、転機が訪れる。
何気なくつけたテレビで、神奈川県立厚木高校ダンスドリル部「IMPISH(インピッシュ)」の、日本人初となる全米チアダンス選手権優勝を追ったドキュメンタリー番組を見たのだ。
チアとは無縁の裕子だったが、それを見た瞬間「いつか、こんなチームを作って全米制覇する!!」と決意を固める。
2004年4月、裕子の赴任先が、福井県立福井商業高校に決まった。県内一、スポーツの盛んな高校である。
そこには「バトン部」があった。バトン部のメインとなる活動は、甲子園で野球部を応援することである。
そのバトン部をチアリーダー部にいきなり変えてしまおうと考え、実行した裕子。
甲子園で応援することを望む生徒らと対立しながらも、少しずつ意識改革を行い、2006年4月、新生チアリーダー部「JETS(ジェッツ)」を立ち上げる。
思い立ったら、保護者の意見にも、生徒の意見にも耳を貸さない裕子は、強化にかかる金銭面や、その向こう見ずな性格で保護者や生徒からの反感を買うこともしばしばあったが、決して「全米制覇」の信念だけは曲げない。こうした裕子の情熱は徐々に生徒に伝染し、2006年「JETS」立ち上げ時から次第に国内大会での成績も上昇、そして初代「JETS」の1年生が3年生になった2009年3月、福井商業高校チアリーダー部立ち上げから5年、とうとう全米チアダンス選手権優勝を成し遂げる。

2、 読後感

「壮大」の一言です。特に専門種目もなく、ましてチアダンスの経験も一切なかった五十嵐先生が、ひょんなことから一瞬にして夢見ることになった「チアダンス全米制覇」。そして福井県の公立高校の、ごく普通の女子高生が全米チャンピオンになるストーリーはまさに「壮大」。本を読んで久しぶりに涙が出ました。
いちばん勉強になったのは、五十嵐先生の信念を曲げない姿勢です。私も一応教員ですが、特に保護者に大きい声を出されると、正直一瞬怯んでしまうことがあります。作中にも出てきましたが、保護者等との対立による話し合いになったら、教員は妥協点を見出し、話し合いをひとまず丸く納めようとする傾向がなくはないです。しかし五十嵐先生はそれを絶対に行わなかった。この辺りは、私の前任校、石見智翠館高校女子ラグビー部の磯谷監督や、男子ラグビー部の安藤監督、硬式野球部の末光監督、サッカー部の糸賀監督と通ずる部分があります。結果を出す指導者は、絶対に折れないですよね。改めて勉強になりました。
ただ、私にはこの人たちのようにグイグイと集団を牽引することはできません、正直。もちろん私には信念が何もないという意味ではありませんからね。それでも、ヘッドコーチとして確かな信念を持ってチームを勝利に導くことはできるはずです。その方法を整理して、前回述べた「再現性」を持たせられるようにします。

3、「世界」とは?

東京オリンピックの影響からか、「世界」で戦えるアスリートが増えました。私たちにとっても「世界」という言葉が、どこか身近に感じられるようになりました。サッカーJリーグのユースチームの選手たちは、そのほとんどが国内のクラブでのプレーを考えず、将来はヨーロッパのクラブでプレーすることを希望しているそうです。
一方私ですが、恥ずかしながら海外に行ったことがありません。いや大して恥ずかしいとも思っていません。別に行きたいと感じたこともありません。ラグビーの選手時代に海外選手と戦ったこともありません。ラグビーのブレディスローカップ(ニュージーランド代表対オーストラリア代表の定期戦)を、死ぬまでにニュージーランドのラグビーの聖地、イーデンパークで観てみたいなーと、漠然と考えたことはありますが。
何が言いたいかというと、これだけ「世界」という言葉が当たり前のように使われている中、今まで私はそれを全然イメージできなかった、ということです。なぜなら行ったことがなかった、直接接したことがなかったから。
「触れたこともないヤツが、『世界』を語ってはいけない」
と思っていた、という方が正しいかも知れません。
でも、五十嵐先生は違いました。五十嵐先生も、海外旅行の経験はあったかもしれませんが、チアの全米選手権の会場は、前述のドキュメンタリー番組で見たことしかありませんでした。もちろん、先生はチア未経験ですから、海外の選手と対戦したこともありません。それでも、挫けそうになった時、生徒たちと繰り返し繰り返し、録画したそのドキュメンタリー番組を見ては「私たちが目指しているのはここだよ!!」と訴え続けたそうです。いやきっと、自分に言い聞かせ続けていたのでしょう。「IMPISH」のドキュメンタリー番組を初めて見た5年後、全米選手権初出場初優勝の快挙を達成するわけですが、アメリカの大会会場に行ったのは、何とその時が初めてだったそうです。
ただ、何度も見返したその映像は、完全に頭の中にインプットされており、先生も、生徒も、現地についた際「既視感」を持ったというから驚きです。

4、最後に

「世界」を直接経験しなければ、「世界」には辿り着けないと思っていました。辿り着けないと分かっていれば、そもそも目指す必要もないと。ただ、五十嵐先生のストーリーを拝見し「接したことがなくても『世界』は目指せる」と感じました。国内という「フレーム」(前回内容参照)で物事を考えていた自分に喝!!実際に目指さなかったとしても、視野を広く持つことは大切です。本当に実りある読書でした。

ちなみに。
本の内容は「全て」実話だそうです。アルカス熊谷のハイパフォーマンスマネージャー、宮崎氏が、直接五十嵐先生本人に会って確認したとおっしゃっていました。

本日も拙文をご覧いただき、ありがとうございます。

ARUKAS YOUTH KUMAGAYA ヘッドコーチ 菅原悠佑

ありがとうございます。今後ともアルカスユース熊谷をよろしくお願いいましたす♪