大義とは〜「なんのために勝つのか。」読書日記〜


本投稿のGOAL:・廣瀬氏の略歴、人柄がわかる。
        ・「大義」の意味がわかり、自分に置き換えられる。

アルカスユース熊谷、ヘッドコーチの菅原です。

本日は読書日記です。

「なんのために勝つのか。ラグビー日本代表を結束させたリーダーシップ論」(廣瀬俊朗著、東洋館出版社発行)

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空前のラグビーフィーバーを巻き起こした、2019年ラグビーワールドカップ日本大会における、ラグビー日本代表の歴史的快挙。

その4年前の2015年、現イングランド代表ヘッドコーチ、エディー・ジョーンズ氏が率いるラグビー日本代表は、ラグビーワールドカップイングランド大会に臨みます。それまでの日本代表のワールドカップでの戦績は、24戦中1勝21敗2分け。しかしこの大会でエディージャパンは、ラグビー大国、南アフリカ代表を下す「ブライトンの奇跡」を含む3勝を挙げ、決勝トーナメント進出まであと一歩に迫りました。
本書の著者、廣瀬俊朗氏は、エディー体制となった日本代表で最初のキャプテンを務め、その類稀なるリーダーシップで、低迷期にあったラグビー日本代表を選手の立場から改革しました。廣瀬氏は2015年ワールドカップの最終メンバーに選出されるも、出場機会はなし。しかし、試合に出場せずとも選手として陰日向なくチームを支え、まとめる彼のリーダーシップは大きな注目を集めました。
エディージャパンのことから、遡って幼少期、学生、社会人時代に経験したことや当時の想いまでが、赤裸々に綴られています。

2015年に初版が発行された本書。
「今さら!?」感は否めませんが、ずっと気になていたので、この機会に読みました。


1、 著者紹介


昨年大ヒットしたテレビドラマ「ノーサイドゲーム」の浜端譲役を務めたあの方です。幼少期に大阪府の名門ラグビースクールである、吹田ラグビースクールでラグビーを始め、高校は府内有数の進学校、大阪府立北野高校に進む。チームは府予選ベスト32止まりだったものの、その高いリーダーシップがセレクターの目に留まり、高校日本代表に選出される。その後、慶應義塾大学理工学部に進学し、ここでも中心選手として活躍。大学卒業後は東芝に就職し、ジャパンラグビートップリーグの強豪、東芝ブレイブルーパスでプレーを続ける。高校、高校日本代表、大学、社会人と、所属したチームの全てでキャプテンを務めた。2015年ラグビーワールドカップイングランド大会メンバー。獲得キャップは28。ラグビーワールドカップ日本大会時にも「スクラム・ユニゾン」という組織の立ち上げに参加、出場国の国歌を広める活動を行うなど、現在も幅広い分野で活躍中。


2、 小さなことを積み重ねる


「小さなことを積み重ねていけば、無心の境地に行けるかもしれない」と本人が語っているように、これこそ、廣瀬氏の行動の最大の特徴だと感じました。
小さなことはないがしろにされがちです。変化に気づきにくいし、そもそも「小さなこと」だからです。
ただ、一朝一夕に大成功を収めることはできません。だからこそ小さな目標を立て、それをクリアしていく過程を楽しむ。その先には確実に成長した自分が待っている。だから「小さなこと」にこそ全力を尽くす。そのためには謙虚で誠実でなければならない。廣瀬氏はそう言います。
「小さなこと」を積み重ね続けた自分は「大義」を達成する自分に繋がっている。廣瀬氏の言葉からこうしたメッセージを受け取りました。
「ゴールに確実につながる『今』」。最近私が気づかされたことと重なりました。


3、「大義」とは


廣瀬氏は、ラグビーに限らず、「勝つチームには大義がある」と言います。
「大義」とは「ミッション(使命)」という言葉などに置き換えられるでしょうか。
つまり「チームが成し遂げなければならないこと」「チームの存在意義」を意味します。
当然「〇〇大会で優勝する」といった類のものよりも、より大きなゴールを指します。
だから、勝つチームのリーダーは、まずチームの「大義」を語れなければなりません。
廣瀬氏は、日本代表キャプテン就任時、ラグビー日本代表の「大義」を、

・「日本のラグビーファンを幸せにする」
・「日本ラグビーの新しい歴史を築く」
・「応援してくれるファンの憧れの存在になる」

と設定しました。
「ブライトンの奇跡」は、まさにこの「大義」を現実のものとした好例でしょう。
この「大義」の達成へ向け、謙虚に誠実に「小さなことを積み重ねる」。
廣瀬氏の人柄が伺えました。


4、「大義」の下に続く3要素


廣瀬氏は、「大義」を成し遂げるためには、その下に続く3つの要素が必要不可欠だと述べます。
その3要素とは、

・「覚悟」
・「ビジョン(道のり)」
・「ハードワーク」

です。以下引用。

「覚悟とは、一度決めた大義のために日々地道な努力を重ねられるかどうか。それがないと大義は語れないし、仲間からも信頼を得られない。」

「ビジョンとは、どうやって強くなるかの過程がハッキリしていること」

「あとは、そのビジョンに向かって全員がハードワークするのみ。(中略)その日々を過ごすことで、僕たちは本当に強くなることができたし、自信が生まれた。何より素晴らしい結果を残すことができた。」


「大義」というゴールに辿り着くための「ビジョン」という道筋があり、そこに「覚悟」を持って「ハードワーク」する。
個人的には、中でも特に「覚悟」と「ハードワーク」が肝だと感じました。「大義」「ビジョン」は、言うなれば「思い描く『絵』」です。
では「覚悟」と「ハードワーク」は?
「そのチーム、組織に属する人間の『心持ち』『行動』」です。
「組織はなまもの」とよく言われます。属する人間の「心持ち」、実際の「行動」によって、白くも黒くもなります。
こうした仕組みを見事に言語化できる廣瀬氏は、本当に頭がキレる方なのでしょう。
またしても目から鱗が落ちました。


5、なんのために勝つのか


本書の題にもなっている「なんのために勝つのか。」という言葉。
読み終えて、廣瀬氏の唱える「大義」に繋がっていると感じました。
廣瀬氏は、

「大切なのは、勝つためにプレーするのではなく、勝つことでファンにラグビーの素晴らしさを伝えること。」

「そうすれば、必ずそこに『ストーリー』が生まれる。そのストーリーをファンと共有できれば、何者にも代え難い喜びが待っているはず。」


と本書で述べています。
2012年、低迷期に喘ぐラグビー日本代表にエディー・ジョーンズヘッドコーチが就任するのと同時に、その初代キャプテンを任された廣瀬氏。
壮絶とも言える過酷なトレーニングを課すジョーンズ氏、それに懸命に取り組む選手たちの姿がテレビに映し出される度、ファンは期待を膨らませました。
「ワールドカップで、決勝トーナメントに進出する」
ということは、日本ラグビー界における悲願でした。
ただ、廣瀬氏は「勝つこと」「2015年ワールドカップで決勝トーナメントに進出すること」を「大義」とはしませんでした。
それは「ビジョン」の1つに過ぎません。
勝つこと、それに到るまでのストーリーを通して、応援してくれたファンと共に「大義」を実現する。
だから勝たなければならない。
勝利を追い求める関係者は多いですが、その勝利から何かを伝えたい、という関係者は意外と少ないのではないでしょうか。
目先の利益に走り、盲点になりがちだからです。
結果を残す人は、最初に目指すべきゴールがありますね。

今回も実りある読書ができました。


本日もお読みいただき、ありがとうございます。


ARUKAS YOUTH KUMAGAYA ヘッドコーチ 菅原悠佑

ありがとうございます。今後ともアルカスユース熊谷をよろしくお願いいましたす♪