祝福のルーレットが廻る③ 密やかな話

田原くんのグループとは友達付き合いが続いてはいたものの、私の周囲にいる友達模様は少し変化が起きてきた。

かつて兼田聖司くんがいた北陸地方の某企業の寮に、あたらしく同級生が引っ越してきたのだ。しかも、ふたり。
桜庭(さくらば)と永山(ながやま)。

それに、小学校の時はクラスが一緒にならずあまり接点がなかった高井戸遼一(たかいどりょういち)。
家が比較的近いということもあり、彼らと行動をともにする機会が増えていった。
もともと原田くんのグループは学校限定での友人関係というか、休日に一緒に遊びに行くようなことがあまり無かった。
桜庭、永山、高井戸とは逆に同じグループという意識はほとんどなかったが、帰り道などこの時期は結構多くの時間を共有していたように思う。

中学になり、性の話も出てくる。
別にアダルトな話をしたい訳ではない。
私の人生を振り返るには(そして恐らくほとんどの人々の人生を振り返る場合でも)、重要な事柄であるからだ。
ご容赦願いたい。

ある時、高井戸が桜庭陽(よう)に小学校の時の同級生…屋敷優佳の話をした。
何となく、密やかな話だった。
私は何となく、聞いてはいけない話のような気がした。
クラスの大人びた男子たちが、屋敷優佳に「なにか」をしてもらったか、させてもらったか、という話…だったように思う。

この類の話は、当時の私には無縁の話だと、思っていた。
ただ、ほんとうのところは…私の体の一部は、しっかり熱くなってしまっていたように思う。
私は、脳内に大人びた屋敷優佳の姿を思い出しながら、かすかに聞こえる彼らの話に、同級生がそんなことをしているということに内心大きな驚きを感じつつ、聞き耳を立てていた。

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