祝福のルーレットが廻る⑦ 高井戸の言葉

私は、くそ真面目だった。
「給食を残してはいけません」と言われたら、サラダのドレッシングまですべて飲み干した。ちょっと変な子どもだったのかもしれない。

その私にとって、桜庭に高井戸という友達は新鮮だった。
彼らは学校ヒエラルキーの最上位のグループに属している訳ではない。だが彼らは、それらのメンバーとも仲良くやっていた。
彼らに連れられて、ゲームセンターにも行くようになった。

ある日、高井戸くんが私に言った。
「浅田、お前は下手なんだよ。友達とうまくやるのは…」
途中まで言いかけて面倒になったのか、
「あ~…、まぁいいや」
彼は最後まで言わなかったが、私はそれでも衝撃を受けた。
彼は…高井戸遼一というこの同級生は、「友達とうまくやる」なんてことを考えて作戦を立てて行動をしていたのか。

高井戸遼一自身は、この発言をきっと覚えてはいないだろう。
だが私は、彼のこの発言から「集団におけるポジション作り」を考えて行動している人々がいることを知ったのだ。

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