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母は、かわいい人

いつも母は不機嫌だった。
テストの点数、習い事の宿題や進級、友だち関係から好きな音楽まで、必要以上に口を出してきた。

うっとおしい。

私は距離を置いた。

子どもが生まれ、里帰りや復職の際にお世話になった。口出しは変わらずだが、実母ほど頼りになるものはいない。付き合いが深まる。心の壁は、垣根に変わった。

母は、父を追うようにして、亡くなった。
後悔はつきない。

ある日、ママ友から、うちの母は楽しい人だったと聞いた。

気になる。これは、インタビューじゃ。

チャンスは以外と早く巡ってきた。ランチのお誘いをもらい、前のめりに約束。

なかなか、刺激的だった。
スパゲッティにミカンを入れたり、食事中に揺れてみたり。
彼女はそれらを、楽しい人と言った。
私だったら、どう表現しただろうか。


『1人は寂しい、一緒にいて。』

怒りや嫌みの裏に隠れて、見えなかった言葉が見えてくる。私への口出しは、愛情や心配が屈折して現れた⁉️

今、私は母を可愛い人だと思っている。

おっちょこちょいで、自分の機嫌をとるのが、上手ではなかった。何より、気持ちを言葉に変え、相手へ伝えるのが下手くそだった。

空の上では、気持ちをストレートに伝えられているだろうか。


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