世界はフラット
この世界は、
壁だらけで、
道も悪路で、
未来は絶望という淵に繋がっていて、
淵にたどり着いたとき、
進む先がないので、飛び込む。
そこが、最後を迎えるところ。
そう、感じていた。
壁は多い。
つまらない学校。
合わない友人、
行きたくない進学先、
うるさい親や先生とか大人。
白い箱、職場。
タバコ臭い上司や同僚、
審議書になかなか押されない決裁印、
苦情しか言わない客、
愚痴ばかりのランチ仲間。
そんな中で見つけた、いまの夫。
警戒心のない、屈託ない表情が、いい。
未来も過去もない、今の幸せが大事な彼が、いい。
考えのない素直な彼が、安心する。
この人を、私の居場所に置こう。
物じゃない!と怒られそうだけど、
家具のように配置した。
私の居場所は、何もない白い壁に囲まれた箱。
まずは彼を部屋の真ん中に置き、
一緒に座るソファーを置く。
一緒に食事を取るテーブルを置く。
一緒に眠るベッドを置く。
そうやって、生活する居場所ができた。
ここは安心して過ごせる、私の居場所。
気づくと、
白い箱の職場が、活気ある人が働く所に変わった。
今までの経験を伝える上司、
私のミスをフォローする同僚、
相談しに頼ってくる後輩、
お礼を伝えるお客様、
決裁印とともに修正箇所が書かれた付箋、
ランチ仲間とお出掛けの約束。
世界は自分が作っていたんだ。
見たいものしか、見ていない。
私だけじゃない、誰もが、そう。
私が、世界を、変えていく。
私は安全基地を手に入れたので、家族を増やすことにした。
メンバーが3人追加された。
小さい時は、カルガモみたいに、ついてきた。
大きくなった。
それぞれに過ごす。
寂しく感じるが、誇らしくも感じる。
旅立ちの準備を始めている。
彼らには、まだまだ世界は壁と悪路。
チーターと雑魚がいっぱい、いるそうだ。
今は、それでいい。それがいい。
広い世界と家を往き来する。
世界にあると思った壁は、
押したら崩れた。
呪文を唱えたら、勝手に開いた。
悪路だと思った道は、
綺麗な花や石で溢れていた。
秋にはフカフカの落ち葉でいっぱい。
踏むとガサガサと心が踊った。
冬には霜柱が立ち、ザクザクする。
雪が降って、足跡ができる。
楽しいしか、ないじゃん。
そうか、世界はこんなにもフラットだったんだ。
補足。
ただの惚気です。
結婚生活、いいですよ。
パートナー選びが、最大で唯一のポイント。
私は、居心地の良さが決め手でした。
親で苦労した人は、特にオススメです。
同じタイプだけは、選ばないように気をつけてね。