34.medium 霊媒探偵城塚翡翠(相沢沙呼) 感想考察

相沢沙呼さんの『medium 霊媒探偵城塚翡翠』を読みました。
続編にあたるinvertの方をオススメされたのですが、どうやら1作目があるようだったのでmediumから先に読みました。

第20回本格ミステリ大賞受賞
『このミステリーがすごい! 2020年版』国内編1位
『2020本格ミステリ・ベスト10』国内ランキング1位
Apple Booksの「2019年ベストブック」ベストミステリー
「2019年SRの会ミステリーベスト10」1位
の5冠を獲得した作品のようです。

ネタバレにならないから先に言っちゃうけど、期待していなかったのにめちゃくちゃ面白かったです。
ネタバレ見ないうちに、これは是非読んでほしい。
最初から最後までずっと面白いです。

こっからネタバレ
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見事に騙された。
私が好きな『無能なナナ』って漫画であるセリフなのですが

"愉快なマジシャンはショーの始めにわざと失敗して観客の傲慢を買うという"

という台詞があるわけですが、
正に香月史郎も、読者である私も見事に奇術にかけられていました。
プライベートでの翡翠はたどたどしく、世間知らずの女性にしか見えずその裏が見えたからこそ、本当に隠していることに気づくことができませんでした。

本作品は
第一話 泣き女の殺人
第二話 水鏡荘の殺人
第三話 女子高生連続絞殺事件
最終話 VSエリミネーター
と章ごとに犯人が違う短編を形作っているのですが、
最初に連続殺人犯のシリアルキラーが明示されており、章ごとにも犯人が絞られるパターンが多く、倒叙(とうじょ)型のスタイルを取っています。

第一話 泣き女の殺人単品で見ても、霊媒能力を使った犯人の特定と、わかっている犯人を追い詰めていく様は手に汗握る展開でした。
被害者となる倉持唯花を霊媒で呼び寄せるシーンの寒い寒い!!って自分に何が起きたか理解してないシーンは見ていて辛いものがありました。

第二話、第三話も同様に犯人がある程度絞られてる状態で、どう証拠を突き付けるかという今までにないミステリの流れを新鮮に読むことができました。

さて、三話まで読んでいって少しの疑問はあれど、それをただの小説自身の粗い部分だと思い流してしまったことが最後に一気に回収されていくと誰が思うのでしょうか。
私が思ったことは以下の通りです。
①血のついたティッシュを何でわざわざ外に捨てたんだろ。トイレに流せよ。
②こんな女性の読者受けが悪そうなキャラをよくヒロインにしたなあ
③最後の交霊のとこ、魂は停滞して未来を見通すことはできないのでは…?
④未来は読めないのに、自分の死が近いとわかるのか
⑤3話の犯人の蓮見綾子が香月にだけ犯行理由を語った理由
⑥連続殺人犯が性的倒錯者ではないと執拗に言う理由(やけに言うなあ程度に思ってた)
⑦『霊媒探偵香月』ってタイトルじゃないの何でだ?

ちょっとは違和感に思っていたんですけど、特に意味はないと思って読み進めていったから最終話での大どんでん返しは驚きました。
え、香月さんが犯人なの!?
え、霊媒うそだったの!?????
これほど綺麗に小説で騙されたのは初めてかもしれない。
そして解決パートの面白さ。
翡翠の語る推理は、ちょっとそれは思いつかないだろって部分も多かったんですけど、これほど面白い解決パートは今までにありませんでした。
まさか、1話~3話まで全てこのための伏線だったとは…。

最後の大どんでん返しがなくても面白い小説だな~と感じていたところで、まさかの最終話の展開は見事としか言えない。
私はとんでもないミステリ、いや、"奇術"を目の当たりにしました。
今まで読んだミステリというジャンルの中で、一番好きな本かもしれない。
なんとこの作品、続編があるようです。
いや、1作で完結してるやろ。って思うところですがこの作者の実力なら面白いこと間違いないでしょう。
今度は読者をペテンにかけたように、犯人をペテンにかけてくれるのではないかとワクワクします。
『invert 城塚翡翠倒叙集』
早く読みたいところです。

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