マカロンが好きといいたい乙女。

彼は会ったとき、とてもやさしい声を出した。
距離があるのに、耳元で囁くような声をしている。私は長所ともとれる彼の声がとてもいやらしく感じた。
喫茶店まで歩くときに大して雨は降っていないにも関わらず、一人だけ自然と傘を差した。
初対面では不適切な人だと感じてしまった。

彼はもともと、そういう声質なのだろう。

ならば、私は彼が本来に生理的に無理な人だ。

デートを早くに終わらせたい時、いつだって質問は上の空である。
そんなときの定型質問なのは、
「どんなスイーツが好きですか」である。

大抵この質問は喫茶店の空間にいつもとても適しているからだ。

彼はチーズケーキと答える。
続けてマカロンが苦手とのことだった。

マカロンは実際は私の大好きなスイーツである。
でも彼の前では、
「あっ、わかります。マカロンって砂糖感すごいですもんね!」とほぼ自動的に答える自分を誇らしいと内心思った。

私はこのような消化試合のお見合い程、明るく対応するようにしている。
まるで、採用担当の人事が本当は不採用の相手をより丁寧に見送るときみたい。

私は、たぶん運命の相手にははっきり
”自分はマカロンが好きなんだ”と伝えているような気がする。

私は自分の好きなものをしっかり伝えることが出来る相手に出会いたいんだ。

わたしが探してる、欲しい人は
きっと、自分の気持ちに素直に
マカロンが好きなんですと言える人だ。

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