草の匂い、川の音

稲刈りのお手伝いに行ってきました。
祖母は農家で今は亡くなってしまったけれど、父が土地を受け継いで農業をしています。

街では窓は閉め切って運転しているけれど、田舎に近づくといつも全開、とてもいい匂いがしてきます。

祖母の家に着くと、まず深呼吸。草がさらさらと風で揺れる音と、芝生の匂いがします。耳をすますと川の音、近くに小川が流れています。土の匂い、野菜を植えている畑の匂いです。身体全体に一気に吹き込まれます。


長袖に長ズボン、前の作業の時の土がついたままの長靴に帽子、きれいとは決していえない格好に着替えて手伝いに行きますが、そこには沢山の親戚の人。特に仲が良いとか、悪いとかは無いけれど、昔から知っている、そんな人たちと刈り取った稲を干す作業をしていきます。重くて疲れるけれど、私たちが食べるお米、私たちの田んぼの収穫物です。
仕事中は特にいい匂い。稲の匂いです。私が稲を持ち上げようとするとカエルが逃げていきます。トンボが無数に飛んでいて、子供達はコオロギを捕まえたり、他の子は大きなでんでん虫葉っぱに包んで大事そうに持っています。沢山の生き物たちが溢れかえっています。

親戚とご飯を一緒に食べ、休憩を一緒に取り、とにかく目の前の大量の作物を日が落ちるまでに収穫しなくてはいけないのでみんなで協力して、時々は声をかけあいますが基本的には黙々と、大忙しです。

思えば、私が普段いる職場、デスクにはなんの匂いもしていません。匂いがするとすれば、紙の匂い。それと外に行けばアスファルトと車の匂いです。家でも匂いはしていません。人と人工物だらけです。

人間と人工物しかない場所に生活があると、そこに優しさを感じられなかったり、自分1人でこなさないといけない作業に追われていたりすると、なんだか辛くなってくる。それはその場所がただ人間と人工物しかないから感じている感情なのかもしれません。

田舎にいると、本当に人間って自然の一部なんだなって思わせてくれる。その中でも自分はにたくさんいる生き物の中の一つでしかないし、そんな自分の嬉しさも寂しさもぜんぶ吸い取ってくれるそんな優しい匂いが立ち込めてます。

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