ベーコン、という本
体調を崩した、と言うのは大袈裟だが
万全な体調というには大きく首を横に振りたくなる。
こんな具合で今日を始める。
人の文章を読んでいると、
やっぱり私も、というように
書き始める手がある。
今読んでいる本は
井上荒野さんの「ベーコン」
少し大人向けだろうかと怖気付いて
Amazonから届いた後も
読み始められずにいた
でも、届いた本への興味は
日に日に蓄積され
少し前から、堰を切ったように
読み老けている
とても面白い。
彼女のことを知ったのは
NHKの趣味どきでやっていた
「人と暮らしと、台所」という番組でのこと。
料理を愛する人々の台所に訪れ、暮らしの断片と、料理との付き合いとを紹介する番組で、録画して撮り溜めておいては週に1度か2度、贅沢な気持ちで見るのが日課だった。
あれは、季節ごとにやる番組なのだろうか。
今の時期は放映されていない。
次回予告の時から
興味津々だった。
何といっても「荒野」
という名前が美しく、
さあどんな情熱的な文章を
波乱を醸す物語を綴るのだろうと
想像を巡らせていた。
しばらくして、
その番組内で引用されていた彼女の短編小説を読んでみたくなって
ネット注文したという次第。
先に挙げた私の予想は
しかと裏切られた。
情熱的というよりはむしろ淡白で、
短編だからなのかもしれないが
意地悪なほど、結末を教えてくれない。
でも、本当に美味しい料理、という感じが、
すごくする。
素材の味と、その食感を舌で嗜み、
鼻から抜けていく地の香りで
余韻を味わう。
とても上質で上品で、
でも浮つくことなくしっかりと
本質が存在している。
「あれの」と、彼女の名前は読むが
「こうや」という読みで発してみると、
確かに殺風景な乾いた感じが
その名の通りかもしれない。
こんなに偉そうに言葉を並べておいてまだ読み終えていないのだ。
番組で紹介されていた一節を、まだこの目にしていない。
あまりにも良くて、
何とまあ魅力的な文章だろうと
魅せられた興奮冷めやらず
一旦、ここに吐き出してみた。
私は食べることが好きだから、
彼女の文章に惹かれるのだろうか。
美味しい文章というのは、初めてだ。
ぜひとも
読んでください。
井上荒野「ベーコン」
P.S.
今日は風邪っぴきの体を抱えて
もう一話ぐらい読んでしまおうかな。