50代・行政書士副業開業の記録(41)~あの派遣会社2・非正規労働の拡大~
毎週月曜日に朝礼があった。35階の大きなガラス窓からはに富士山を眺めることができる。そのスペースの一角に数十人の本社社員が集まる。そして十訓の唱和である。大声を張り上げるのは、最先端のビルで行われているとは思えず昭和感(軍隊感)満載。宗教的とさえ言える。今も営業会社は似たようなものかもしれない。
実は前日までに一人が指名され、音頭をとるのだが、完全に暗唱できなければならない。私も当番に当たったことがあるのだが、途中で詰まることの許されない雰囲気はかなりのものだった(大汗)。さあ、みなさん声を張り上げて、ご唱和ください!
一. お客様の立場にたて、究極の満足を与えよ
一. 夢と志を持ち、常にチャレンジせよ
一. 困難の先に栄光がある、逆境を乗り越えよ
一. 物事の本質を見抜け、雑音に動じるな
一. 原因があるから結果がある、公正に判断せよ
一. 積極果敢に攻めよ、守りは負けの始まりなり
一. スピードは力なり、変化をチャンスと思え
一. 自信を持て、謙虚さと思いやりを持て
一. 笑顔と共に明るくあれ
一. 正しくないことをするな、常に正しい方を選べ
実は内容はすごくよいのだ。これができればどこでもやっていける。スタートアップの会社は今でもこんな感じであろう。「弛まぬ(たゆまぬ)ベンチャースピリット」というのもあった。この覚悟で仕事をしている人が世の中に実際どれだけいるか。私はいまもできていない。ベンチャーにワークライフバランスなんてことは無いわけで、それはそれで立派な考えだとさえいえる。
急成長の最中は、トップが新時代の経営者としてチヤホヤされ、当時流行った「ヒルズ族」が憧れの対象となっていた。そんな空気は感じるものの、しょせん我々一般社員はコバンザメどころか、さらにそれにくっつく小魚でしかないわけで。
事実として記すと、それまで26の専門職にしか認められていなかった派遣業務が、製造業に拡大されたのがこのころ(2004年)で、不況に苦しむ企業が飛びついたのである。小泉純一郎・竹中平蔵のコンビが進めたという見方もあるが、雇用の流動性に乏しく解雇規制の厳しい日本においては、非正規労働者は企業にとっては「禁断の果実」となり、労働者側はたいしてキャリアも身につかず、氷河期世代と呼ばれ置き去りになった面がある。私も片棒の一部を担いでいたといえる。
この点は現在も全く変わっていない。解雇規制の緩和は今回の衆院選の議論の一つにもなっているようだが、多額の企業献金が政党に渡っている以上、進展は難しいかもしれない。スポットバイトといわれる〇イミーなどの隆盛は、当時のスポット派遣とまったく同じことが起きていると思われる。
当時と少しだけ異なるのは、ネットの発達で少し勉強すれば搾取の仕組みに気づくことができるので、無理して働くことがなくなったことか。働いたら負け・万年人手不足とは、弱者があみ出した「戦法」なのかもしれない。成長を経た歴史の最先端といえなくはない。いえないか。
のちに会社は不祥事で業務停止となり、十訓は大いなる自己矛盾となってしまう。コンプライアンスが重視される現代ではなおさらだ。最後の「正しくないことをするな」などは、完全にオチになってしまっている。
建前と現実の多いなるギャップというわけだ。もう少しこの話題を書きます。次回は派遣会社の業務について。