愛と死を煮詰めて
採血で起きる朝。
一発でできるかなあ、、、と苦笑と緊張交じりの職員さんが腕に射した針は目覚めにはちょうど良かった。注射ひとつとってもその人の性格が出るのだな、と思う。職員の方はみんなやさしいけれど、今朝のは飛び抜けてやさしかった。
今日もまた一人退院していった。自分より若くて、とても大人しい方だった。
話す事はほぼなかったのだけれど、よく彼のベッドから音楽が流れていて、それも結構な頻度でスピッツが聴こえたのでよく聞き耳を立てていたし、「チェリー」「空も飛べるはず」などは勿論、「8823」「夕焼け」「恋する凡人」といったコアな曲も流れたりしていたので、一人でこっそり楽しませてもらってもいた。
やっぱりファンだったのだろうか。勇気を出して聞いておけばよかった、と思う。
彼が去っていった後の病室で、前途を祈りながらスピッツを聴く。
Twitterを眺めていたら言葉狩りや表現規制に関するツイートがちらほら流れてきたので、うーむ…としばし読み耽る。
こういう話題に関しては元々関心がある上に、大学の卒論で放送禁止用語をテーマにしたのもあって今でもその類の話は気になってしまう。そしていつも森達也の「放送禁止歌」が読み返したくなる。とても面白い本なのでおすすめしたい。
採血の結果がさっき来た。数値は至って良好である。気になるγ-GTPも39で、200台だった頃が嘘のよう。因みに体重も測った。57.3kg。どうなんだろう。
入院生活もやっとこさ居心地が良くなり始めたというか肩の力が抜けてきた気がする。
もっとも、大事なのは退院してからなのは重々承知なのだけれど。
想像した以上に(素晴らしく)騒がしい未来が待っている事を切に願いながら、とりあえずは今日も一日を生きられた事に感謝したい。
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