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東京アルプス《屋上びらき》

2020年11月21日、東京ビエンナーレ2020/2021の公募アートプロジェクトである東京アルプス《屋上びらき》に参加した。会場となったのは中央区にある銀座貿易ビルの屋上階。《屋上びらき》は東京各地にある未利用のビルの屋上を開拓し、さまざまなアクティビティにつなげようというプロジェクトだ。この銀座貿易ビルは東京アルプスにとって2番目の「開拓地」となる。

コロナ禍ということもあり人通りの少ない静かな銀座2丁目。ビル1階からエレベーターに乗り、いつもはランプのつかない「R」のボタンを押し屋上階へと上がる。約1,000平方メートルの屋上フロアには白と青の円形のビニールシートが間隔をあけて敷かれている。朝10時、《屋上びらき》記念式典のテープカットからはじまり、2組の音楽家によるライブ、最後は参加者全員による記念撮影。気温15℃、ときおり冷たい強風が吹く肌寒い冬晴れの青空の下、参加者はシートに座ったり寝そべったりしながら2時間を自由にすごした。

今回、参加して感じたのは「高揚感」と「開放感」だ。ふだんは立入禁止の屋上階。来客を受け入れる気配のないむき出しの床のタイルとコンクリート。安全に配慮したうえで開放されている商業施設の屋上と違い、未利用の屋上を訪れるのは探検のような緊張と高揚感がある。その屋上から見上げれば東京にも広い空があることを思い出させてくれる。うっとうしい雨粒を落してくる灰色の雲、ギラギラと紫外線で肌を焼きつける夏の太陽。ふだんの生活でビルの間から眉間にしわをよせて「にらむ」空ではなく、屋上から「ながめる」空はわれわれの心を開放する。また、「~びらき」という言葉には「海開き」、「山開き」のように閉じていたものを開放する、新しくはじまるワクワク感もある。

主催の東京アルプスはビルの屋上を「空と街をつなぐ場所」と位置づける。東京には江戸川区の面積に匹敵する4,917ヘクタールの屋上があるそうだ。そのほとんどの屋上は「未開の地」である。次の「開拓地」もきっと私たちをワクワクさせてくれるだろう。

渡抜貴史


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