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アートセラピーと心理学理論について【マシュマロ質問箱から】

みなさん、こんにちは!

先日、マシュマロ質問箱に初めての投稿をいただきました!同じくアートセラピストとしてご活躍の方からの質問でした。仲間が出来たようで、とても励みになります。ありがとうございます。

今回いただいた質問は、

どのような心理学理論を背景にアートセラピーをしているのか?

これはアートセラピーがどのような特徴を持った心理療法なのか、みなさんにもっと知っていただくきっかけになる質問に感じます。

そこで、アートセラピーと心理学理論の関係、アメリカのアートセラピストの傾向、そして最後に質問頂いたわたしのよく使う心理理論を併せて書いてみました。

アートセラピーと心理学理論について

アートセラピーは、ある一つのやり方に沿って行うセラピーではなくて、「アート制作や作品」を介して行う心理療法の『手段』として理解されています。

そのため、アートセラピーの背景にある心理学理論は、一つの理論に限定されません。それぞれの理論に合わせ様々なアートセラピーのアプローチが存在しています。

例えば、フォビアを抱えるクライアントに、アートセラピーを使う場合。

精神分析理論の場合は、本人に自由に絵を描いてもらい、そこに描かれる絵の要素を本人の無意識と捉えながら、本人の考えとフォビアがどう繋がっているのか分析を進めることで、本人の洞察力を上げ解決を模索するやり方もあれば、

認知行動療法(CBT)を取り入れたアートセラピーでは、恐れているフォビアを描いてもらい、それに対する対処法を次々描き込んでもらうことでコーピングスキルのオプションを広げていくなど、具体的なお題やゴールを設定するやり方もあります。

また、フォビアの話をした後に、気持ちの振り返りのような形でクライアントさんに絵を制作することを提案し、その過程を一緒に過ごしながら、そこから生まれる様々な感情や思いを一緒に整理し消化していく方法は、ヒューマニスティックの背景を持つセラピストさんがよく使うアプローチで、スタジオタイプのアートセラピーにも取り入れられています。

ただ、アートセラピーが始まったきっかけは、フロイトの精神分析の流れを組んだ方達によるものだったので、アートセラピスト界の重鎮たちには精神分析系の方が多く、学術的にもこの理論が一番研究されているように思います。そのため、日本でも精神分析系のアートセラピーが一番普及しているのかもしれません。また、フロイトの『無意識』への理解は、アート作品を分析する上では欠かせない項目なので、アートセラピーを理解するには精神分析・精神力学の基本的知識が必須だと感じます。

アメリカのアートセラピストたちの傾向

アメリカのアートセラピストは、心理カウンセラーの州や国家資格を同時に取得されている方が多く、みなさん、様々な心理理論アプローチをクライアントさんのニーズに合わせて折衷しているのが一般的です。

中には、ユング派など、独自のトレーニングを積んだものしか名乗れない派もありますが、それは一握りな印象です。

また、クライアントの層によっても向き不向きの心理理論があるように思い、例えば、後期ステージの認知症のクライアントさんには認知行動療法のような具体的なゴールを設定したアート制作は出来ないことの方が多く、逆に、不安が強い子供にはスタジオタイプのアートセラピーのアプローチやフリードローイングは不安を与えすぎる、など向き不向きがあるように思います(もちろん個人差がありますが。)なので、その時その時で、状況をみながら、アプローチを変えていくことが出来るぐらいの心理学理論の知識や、それに付随するアートセラピーのお題やアプローチ方法の引き出しを持っていることがとても大切になっています。

また、最近は、トラウマの分野で広く知られるようになったソマティックセラピーが盛んなのもあって、アート制作をソマティック(体感的な・体を動かした)活動に置き換えて利用するタイプのアートセラピーも増えてきました。

わたしのよく使う心理学理論

わたしは今まで受け持ってきたクライアントさんに、子供や認知症患者さんなどが多かったのもあって、個人的には精神分析・精神力学、パーソンセンタードや実存主義を含むヒューマニスティックアプローチを利用したアプローチがとても好きです。

認知行動療法的なアプローチもしますが、パーソンセンタードのアプローチに近い形で制作時の様子を観察したり制作を手伝ったり、制作後の作品を振り返る作業では精神分析的な考え方で作品を掘り下げてクライアントさんの深層心理を模索するスタイルを取っているので、やはり精神分析・力学的、ヒューマニスティックの傾向が強いと思います。

また、自閉症スペクトラム障害など発達障害の子供達には、不安解消の一環として、グラウンディング(気持ちを落ち着かせるために体感を意識したアクティブティ)を目的にしたアート制作を提案することもあります。

様々な心理学の研究が進むに合わせて、アートセラピーも、手を変え品を変え、色々応用できる形を模索中です。

長くなりましたが、マシュマロに投稿して頂いた質問にお答えさせて頂きました。アートセラピーというなかなか知られていない学問ゆえ、色々話題を話し合える場が今後も作っていけたらうれしいです。

今後も、このような素敵な質問やコメントをたくさんお待ちしております。

どうぞよろしくお願いいたします。


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