閉店する二鶴(にかく)を描いた田川の風景画の話
こんにちは、アーツトンネルのタカキです。突然ですが、あなたは、どんな絵が好きですか?
ちなみに僕は抽象画が好きです。
さて、先日、風景画にまつわるこんな出来事がありました。
サドシマの風景画シリーズ
アーツトンネル代表であるサドシマヒロカは、イラストレーターでもあります。
田川地域の風景を描いた風景画「眩しすぎて見えない」という彼女の作品シリーズは、とても人気です。
風景画は、風景を様々な手法で描きますが、彼女の描く風景画は、黄色の使い方が特徴的ですよね。
風景画の舞台が無くなる?
先日、その風景画の舞台となった二鶴(にかく)という食堂が閉店するという噂を耳にしました。
1933年に創業した二鶴は、当時、田川の炭鉱労働者たちに人気の食堂だったそうです。
看板は色褪せ、ところどころサビていますが、どこか洒落ています。そして、何と言っても歴史を感じさせる佇まいが素敵なお店です。
僕は田川に30年以上住んでいるのですが、実は二鶴には一度も行ったことがありませんでした。
サドシマに聞くと、店主の方は、この絵のことをご存知ないそう。
ある種、宿命的なものを感じた僕は、サドシマにこの絵のポストカードを5枚ほどもらい、二鶴に車を走らせました。
絵を見た瞬間あふれた笑顔
田川を訪れたことがない人はご存知ないでしょう。田川は本当に閑散としています。田川が賑わうのは、川渡り神幸祭の時、そして、週末の飲み屋街だけです。
そんなここが田川の中心地。伊田駅、伊田商店街、風治八幡宮のすぐ近くに二鶴はあります。
そして、タイムスリップしたかのような風景。
この路地を入ってすぐのところに二鶴はあります。
お店に入ると、4〜5人のお客さんがいらっしゃって、みんなちゃんぽんを食べていました。
店内の雰囲気はレトロそのもの。
照明の感じや、静けさが、どこか北野映画を思い起こさせました。
店主が水を持ってきてくれたので、ちゃんぽんを注文した後、絵のことを伝え、ポストカードを渡しました。
「うわー!上手ですね!うれしい!」と店主はとても喜んでくれました。よかった!
話をお伺いすると、2023年いっぱいでお店を閉めるとのこと。
店主が作ってくれたちゃんぽんは、大きなしいたけがいくつも入っていて、とても美味しかったです。
僕の前に来ていたお客さんがお会計する際「残念やね。また来るきね」と店主に声をかけていました。
地域の方に愛されている食堂なんですね。
作品として未来に繋がっていく
「風景」や「歴史」が作品として未来に繋がっていく。これは間違いなくartの価値であり力(ちから)です。
その点で、風景画や人物画は、常に変化していく風景や人物の「時」を、「作品」に封じ込めるものなのかもしれません。
ポストカードを見た時の店主の笑顔がとても印象に残っています。
「時」を「記録」や「記憶」だけでなく、「作品」にすること。それはアーティストにしかできない大切な仕事なのかもしれません。