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アーツカウンシルさいたま 令和5年度事業報告会レポート -第2部-

2023年3月31日(土)、アーツカウンシルさいたま(以下ACさいたま)の令和5年度事業報告会-第2部-のレポートを第1部にひき続きご紹介します。
第2部は、「公募プロデューサー事業『さいたまで表現を創る』」「さいたま市文化芸術都市創造助成金」の事業報告と講評を行いました。


芸術祭のレガシー事業から新たに「公募プロデューサー事業『さいたまで表現を創る』」を実施!

まずは公募プロデューサー事業の成り立ちについてプログラムオフィサーの三浦匡史より概要説明がありました。
 
プログラムオフィサー 三浦:「公募プロデューサー事業『さいたまで表現を創る』」は、「さいたま国際芸術祭2020」の中で「公募キュレーター事業」がスタートし、その取り組みを芸術祭のレガシー事業として継承したことから始まっています。ACさいたまがこの事業を引き受ける段になり、名称を「公募プロデューサー事業」に変更して行うこととなりました。
令和5年度はそのパイロット事業としてアーティスト・イン・レジデンス(*1 )も加味した企画としました。space845(*2)とNPO法人アート応援隊 岩槻校舎(*3)をレジデンスの拠点としてプログラム制作を行いましたが、公募の中から採択された2件について、報告をいただきたいと思います。また今後、令和6年度にはアーティスト・イン・レジデンス事業に発展させるビジョンも持っています。  

*1 アーティスト・イン・レジデンス: アーティストを一定期間招聘し、滞在中の制作活動を支援する事業。

*2 space845:オーナー 利根川氏のお父様の元会社兼住居を10年の構想を経て、みんなが集まれる場所であり、各自が自由な表現を出来る場所でもあり、さらに制作するところも共有できる場にしたいとの思いで、2021年にオープン。アート資源調査の調査先。

*3 NPO法人アート応援隊 岩槻校:浦和学院高等学校の提携校国際医療専門学校(旧称 東武医学技術専門学校)の2022年4月の校舎移転で空き校舎となったため、様々な活用を行っている。NPO法人アート応援隊の母体である浦和学院高等学校は、甲子園で優勝経験のある野球部をはじめ、スポーツが盛んなさいたま市にある高校。

プログラムオフィサー 三浦

「公募プロデューサー事業 『さいたまで表現を創る』」選定プロデューサー

額田大志さん(ヌトミック)

 ヌトミック×2.5 architects 共同制作
「しらふの地先へ」ワークインプログレス公演
①滞在:2024年2月15日(木)~24日(土) space845, NPOアート応援隊 岩槻校舎
②公演:2024年2月23日(金) さいたま市民会館いわつき

<コメント抜粋>
演劇カンパニー「ヌトミック」と建築ユニットの「2.5 architects」とのコラボレーション企画で「しらふの地先へ」という滞在制作とワークインプログレスの制作を実施しました。この企画は演劇と建築の観点からのドライブツアー作品となっています。最終的な上演は東京都江東区にある青海三丁目地先という場所で行いましたが、どこかの土地の物語を他の場所でも上演できる、複製可能性を探れないかと考えました。東京で上演するけれども、さいたまでつくり、さいたまでも上演できる。青海だけではなく日本からの視点になっているイメージで制作し、今回滞在場所をさいたま市岩槻区のspace845で、上演はさいたま市民会館いわつきで行いました。
青海で始まったものが、他の場所でも観客に届くというのが一番の成果だったと思っています。また滞在したspace845の利根川さんに非常によくしていただいて、制作する環境が素晴らしいと思えたクリエーションにもなりました。ありがとうございました。

額田大志さん(ヌトミック)

上ノ空はなびさん(to R mansion)

ニューサーカス『ボンジュールさいたま』
①滞在日程:2024年2月26日(月)~3月10日(日) space845、NPOアート応援隊 岩槻校舎
②公演日程:2024年3月9日(土)、10日(日) 大宮門街 1階 門街広場

<コメント抜粋>
私の中でも「さいたまで表現を作る」ことにこだわっていたので、さいたまのどこかの風景を使って作りたいなと思い、応募をしました。Space845の利根川さんにお世話になって、滞在及び制作を2週間かけて行いました。アート応援隊 岩槻校舎でのワークショップは、1~2歳の子どもたちにパフォーマンスを見てもらったり、一緒に体を動かしたりと、とても楽しかったです。サーカス公演を行った大宮門街 門街広場では、”ボンジュールさいたま”というオリジナルの歌を作ったり、観客の方に旗を振っていただいたり、最終的にスタチュー(銅像)が動き出して、最後はくす玉がパン!と割れて“ボンジュール”という言葉が飛び出し、みんなで”こんにちは。これから明るい未来を楽しんでいこう!”というメッセージを込めたものを上演して、祝祭感に包まれた終わりを迎えるサーカスにしました。門街広場に集まった市民や通りがかったビジネスマンなど、みんなで楽しむことができました。
もっと色々な場所で上演させてもらいたかったと思ったり、市民の方や合唱団、高校生のダンス部とも一緒に表現を行ってみたかったりという想いがありました。今回は時間の都合や場所の制約の関係で実現できなかったのですが、先方からは是非やりたいというお声はいただいているので、将来的にできそうなパイプのつながる活動ができたと思います。ありがとうございました。

上ノ空はなびさん(to R mansion)

アドバイザリーボード委員より講評

アドバイザリーボード委員 小林桂子さん

(日本工業大学先進工学部情報メディア工学科 准教授)
<コメント抜粋>
2つともとても素敵なプロジェクトでした。このACさいたまの公募プロデューサー事業は本当に素晴らしいなと思います。良い場所を見つけてきて、そこに作家さんを入れて実際に作ってもらって、アーティスト・イン・レジデンスにより、その間のプロセスや公演も色々な方が見られる状態になっている。またヌトミックの額田さんの作品は、東京の青海で上演をされているのだけれども、今回の事業のように、「さいたま生まれのアート」というのは、さいたま生まれの作家がやるとか、さいたまの施設の人がやるとかに限らず、色々な作品がさいたま生まれになれるんだなと。これは本当に素敵な事業だと思って今後とても楽しみです。大変期待しております。

アドバイザリーボード委員 小林桂子さん


「令和5年度さいたま文化芸術都市創造助成金 『文化芸術を活かした地域活性化事業』」採択団体

 ACさいたまが運営している「さいたま文化芸術都市創造助成金」には2つのプログラムがあり、より規模の大きな<文化芸術を生かした地域活性化事業>があります。令和5年度は8団体が採択されました。事業実施者の団体の皆様の発表をレポートします。
 

ギターやろうぜ・イン・さいたま実行委員会 細川侑乃さん

<コメント抜粋>
私たちはプロのギタリストとギター制作家よる”ロケポン”というグループを一昨年前に結成し、クラシックギターを若い世代に広げたいという思いで活動しております。もっと気軽にギターに親しんでほしいなと思って、このイベントを企画しました。
市内の学校に問い合わせて、その中からさいたま市立内谷中学校の音楽室のギター14台をお借りして、ギター制作家がメンテナンスと弦交換をしました。無償で行い、返却時に中学校からは喜ばれました。イベント当日は20名ほどの小中学生が来て、ギター制作家からギターはどのように作られているのかなど、レクチャーをしました。子供ならではの発想で色々な質問がきてとても楽しかったです。その後武蔵浦和コミュニティセンターのステージに上がってもらって、実際にプロのギタリストの演奏を聴いてもらったり、ギターを弾く体験をしてもらいました。モノづくりの視点からも沢山のことをお伝えできたし、短時間でもギターが弾けるようになるという達成感も味わってもらえたのが良かったと思います。反省点としては宣伝と集客です。機会があれば、今度はもっと沢山の子どもたちに体験してもらえたらいいなと思っています。ありがとうございました。

ギターやろうぜ・イン・さいたま実行委員会 細川さん


 
 

人形のまち岩槻総合文化芸術祭実行委員会 奥山吉寛さん

<コメント抜粋>
コロナの時も開催して、今年度で12回目です。9月30日から10月9日までの10日間、6つの会場で行いました。第1会場 岩槻駅前のクレセントモールでは日替わりでイベントを行いました。オープニングイベントや手作り作家マルシェ、福祉マルシェ(福祉作業所のブース)、モールに人工芝を敷いて公園を作ったり、キッズダンスや地元アイドルの結成お披露目会、子どもの風船遊び会場を作ったり、と色々行いました。 第2会場は岩槻駅前のワッツ西館5階のホールとアトリエルームで、地元のプロミュージシャンを招聘したり、ラテン音楽祭、ジャズ音楽祭、市民演芸会、目白大学の先生と学生さん主体で市民・子ども向けのアート体験を行いました。第3会場は本丸公民館のホールで音楽フェス、市民音楽祭、楽しい音楽祭、と音楽関係を行いました。第4会場はワッツ東館の3階廊下を使ってアート作品展示、第5会場は目白大学の岩槻キャンパスで障害者スポーツ体験テニス、第6会場は商店街の各店舗を展示会場にして、絵画や陶芸、書などの展示や、体験教室などを行いました。ありがとうございました。

人形のまち岩槻総合文化芸術祭実行委員会 奥山さん

岩槻映画祭実行委員会 齋藤淳さん

<コメント抜粋>
2014年に立ち上げ、今年で丸10年になりました。短編映画を全国公募して授賞作品を選ぶという映画祭となっています。元々、私は岩槻でロケ地を映画製作者に提供して地元岩槻で撮られた映画を残そうという活動(岩槻ロケーションサービス)をしていて、それがきっかけとなり映画祭を立ち上げました。今や規模も大きくなってきて運営は大変ですが、やってほしいというお声で続けております。ACさいたまの助成金を獲得できたことで、ゆとりある運営になり、そして今回の大成功につながったと思っております。伴走支援のおかげで、ホームページをリニューアルしたり、さいたま高速鉄道の中吊り広告をしたり、技術者さんにも謝金が払えたりと。こういったことでクオリティーが上がるんだというのも実感しました。また文化的な活動と認められたことで、周りの見る目、印象も変わったと感じます。市民の協力も増えたり、岩槻区長をはじめ区役所の職員さんも来場いただけたりと、今後に向けていい流れもできています。今後も市民に郷土への誇りや愛着が生まれることを願って活動していきます。ありがとうございました。

岩槻映画祭実行委員会 齋藤さん


 

SAITAMAなんとか映画祭実行委員会 田村昌裕さん

<コメント抜粋>
この映画祭は今回で4回目になります。3月2日~3日にRaiBoC Hallと門街広場、大宮西口の武蔵野銀行 M's SQUAREの3会場で、市民のボランティアのご協力も得まして行いました。今まで30分以内の作品1部門だけをやっていましたが、新たに3分と60分の部門を増やし、スマホで撮っても制作できるような短編ものと、60分以上の作品ーこちらは今後映画館上映の展開も考えての部門として作りました。3分の短編ものは22本上演し、60分の方は2本をグランプリとして選出し上映しました。
また「さよならエリュマンテス」「たぶん杉沢村」という招待作品も2本上映しました。
メインプログラムの30分以内のコンペティションは11本上映し、グランプリと準グランプリを選出しています。
映画の上映以外にも、キッチンカーとのコラボレーション、ワークショップ、漫画家による似顔絵コーナー、中央デパートとのコラボレーションにより赤ちゃんのハイハイレースなどのイベントも行いました。今後も皆さんと協力し合いながらコラボレーション企画ももっとやっていきたいと思っております。今後も是非よろしくお願いいたします。ありがとうございます。
 

SAITAMAなんとか映画祭実行委員会 田村さん

アーツさいたま・きたまち 飯島浩二さん

<コメント抜粋>
このフェスティバルも10回目となりました。機械仕掛けのアートタウンという副題をつけてハイテクとローテクが融合するアートフェスタをきたまちエリアで展開しました。
(会期中に展示していた作品の数々を映像におさめたものをダイジェストで会場の皆さんにご報告いただきました。)

アーツさいたまきたまち 飯島さん

好きです指扇!アートフェスタ メッセージ代読

<コメント抜粋>
令和5年度はコロナ明けで皆さんがこの催しを心待ちにされていました。
午前の部では、さいたま市教育長をお迎えして指扇中学校体育館で地元の指扇中学校吹奏楽部、指扇小学校吹奏楽部、土屋中学校吹奏楽部の演奏披露、さらに指扇北小学校合唱部の合唱を披露しました。また、公民館会場では地元の青少年育成会や社会福祉協議会のこども工作教室を行い、多くの小学生が参加しました。午後の部は滝沼川遊水地において指扇地区お囃子保存会8団体による演舞披露、地元のダンススクールの子供たちの演舞披露や風船王子によるアートバルーンショーの開催、さらには埼玉栄高校のマーチングバンド演奏と盛り沢山の催し物を行うことができました。会の最後には地元「秋葉ささら獅子舞」演舞、大宮鳶職組合による「木遣りや梯子のぼり」を披露し来場者に楽しんでもらうことが出来ました。会場内のテントにおいて社会福祉協議会ブースや盆栽ワークショップ、さらに似顔絵コーナーなどの出店、地元福祉事業所による飲食物の提供もあり一日楽しんでいただきました。 

さいたま夢KANA音楽祭 メッセージ代読

<コメント抜粋>
音楽祭実行委員会は、ゴダイゴのタケカワユキヒデさんを中心に市内在住メンバーと埼玉中央青年会議所やさいたま市障害福祉課などと協力をしながら約20名で活動しています。音楽祭を3部構成で行い、第1部の歌のコンテストではグランプリと準グランプリを選出しました。この受賞者にはユニットを組んでもらい、1年間市内のイベントやお祭りなどで、さいたま市歌「希望のまち」を広めながら、さいたま市の魅力や観光PRの活動を行ってもらいます。またさいたま観光大使にも任命されます。第2部は、バンドコンテスト「The登竜門」で”さいたまで夢を叶える!”をコンセプトに音源審査とテレビ埼玉のアプリ投票に残った5グループでの決勝を行いました。グランプリ受賞者にはテレビ埼玉の番組出演とレコード店でのCD販売権が授与されました。
第3部はタケカワユキヒデ氏のステージと受賞者の表彰式を行い、約4時間半にわたって音楽尽くしのイベントとなりました。またロビーでは市内の障害福祉施設の方による焼き菓子や手芸品の物販で賑わいました。
18年前から続いているイベントですが、時代の流れとともに形を変化させながら、私たちの思う「夢叶うまち、さいたま」を目指して活動していきたいと思います。
大きくても、ささやかでも、みんな色々な夢をもつことができる。それぞれの夢がここで叶えることができる。さいたまだからこそ夢が叶う。実行委員会では、みんなが夢にむかって活き活き、ワクワクして暮らす躍動感のある未来のさいたまのイメージを「夢叶うまち、さいたま」と表現しています。
 

アドバイザリーボード委員長 芹沢高志さん

<コメント抜粋>
3年に1度行われる「さいたま国際芸術祭」は注目されるイベントではありますが、毎年地道に続けている創造的な活動がなければ、3年に1度開くイベントをポンとやってもある意味白々しいわけで、その基礎体力を養っていかなければならない。この助成金という形で、地域活性の活動に援助をしていくことはとても重要なことだと思います。今日の報告は、熱のあるプロジェクトだなと感じるものだったと思いますし、アーツカウンシルの仕事としてこのような活動に助成金をつけていくという体制、またはシステムは重要だと改めて感じました。

アドバイザリーボード委員長 芹沢高志さん

アドバイザリーボード委員 石上城行さん

<コメント抜粋>
発端としては2012年にさいたま市が「さいたま市文化芸術都市創造条例」を制定し、さいたまの文化力向上について検討する会議を立ち上げたことが始まりでした。
その会議の中で内容や質で助成金額に傾斜(差)をつけるような制度が必要なのではないかという意見を申し上げたところ、直接関係はないと思いますが、一昨年「アーツカウンシルさいたま」が発足しました。こういった助成制度が実行されたということは大変素晴らしいことだなと思っております。
今日の発表について講評をするのは差し出がましいので、今後に関わる視点でお話をさせていただきます。いわゆる日常的なお稽古ごとの毎年の発表の機会を行政が支援することは、とても大事な文化支援の在り方だと思います。と同時にまだ評価の定まらないもの、多くの人が見ても価値があるのかないのかが分からないようなものでも、何かしらの可能性があるものに対して支援したり、伴走をしたりして発表の機会をつくる、これも重要な文化を支える仕事であると考えます。ACさいたまには是非マンネリ化していないチャレンジングなものを支えて新しいさいたまの文化を育てていく、そういう仕事に取り組んでいただきたい、と期待しているところです。

アドバイザリーボード委員 石上城行さん

次のレポートでは、事業報告会の第3部より、市民サポーター事業、さいたま文化発信プロジェクト「空想するさいたま」、調査研究事業についての報告をレポートします。


当日の様子のダイジェスト動画をYouTubeにて公開中です。ぜひご覧ください。


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