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【レポート】Podcast企画の収録@フェンバーガーハウス

信州アーツクライメートキャンプの一環であるPodcast企画の収録が佐久市望月にあるロジャー・マクドナルドさんのご自宅に併設されている「フェンバーガーハウス」で行われました。

緑溢れる美しい自然に囲まれた環境で、信州大学人文学部の金井直教授とインディペンデントキュレーターのロジャー・マクドナルドさんによる対談が収録されました。

「FENBERGER HOUSE」のかわいい看板

年々深刻さを増していく気候変動(気候危機)問題に対してアートは何ができるのか、なぜアートを通して活動する意味があるのかという問いかけから始まり、今や地球の気候変動はかなり厳しい状態にあり政治や環境活動家だけではなく、全ての分野でアクションを起こしていかなければならないということを大前提として次のようなトピックが出されました。

・産業としてのアート(美術館運営や作品運搬などで大量のCO2を排出している)としてどれだけ脱炭素化の取り組みができるか
 →英のテートギャラリーでは美術館周辺の芝刈りをやめ微生物や生き物にとって良い環境を作り、さらに養蜂をしてその蜂蜜をミュージアムショップで販売している例や、2020年にはGCC(ギャラリー気候連合)という組織が設立され新たな試みが行われていることなどが挙げられた。

・美術史を紐解くこと人で類がどのように周囲の環境というものを意識し、接してきたかがわかる。

・アートは気候変動を自分ごととして捉えるための想像力を鍛えることができる。

・産業とアートは2つの車輪のようにバランスをとってきたが、そのバランスが崩れているのが現在なのかもしれない。
 →産業によって凄まじい勢いで地球環境が破壊汚染されていく中で、アートの世界でも「アースデイ」や「ランドアート」といった環境芸術、加速していく利便性に疑問を投げかける「アーツ&クラフツ運動」が起こるが、現在世界中には都市型の美術館が溢れ産業としてのアートの側面が勝利している。

・産業としてのアートが抱えるジレンマ
 →気候危機を訴えるようなメッセージを含む作品であったとしても、作品は飛行機に乗せられて大富豪に売られるのが現代アートの世界。自家用ジェットがいっぱいの世界。ランドアートは美術史上では環境問題を訴える作品として扱われるが、実際には多大な土木工事で環境に負荷をかけている。

・持続可能な美術館にするには…?
 →美術館でエコロジーな展覧会をしていても実際にどれくらいエコロジカルな対応ができるかというのが問われている。100年後美術館はどうなるのか。現在の状況は制度や枠組みを考え直すチャンスでもある。

話題は長野県という地域でアート×気候変動を考える意義へ移っていきます。
長野県という地域の特性についてのトピックは以下の通りです。

・人口に対する公民館数が全国最多。寺子屋も多く、上田には自由大学もあった。 →大都市に全てを集めるというモデルではなく、半径20kmくらいの地域の人に求められているものにフォーカスしていくモデルの方が持続可能であり、アートとの親和性も高い。

・戦争被害が比較的少なく、明治時代や大正時代の建造物が街中に残っている。
 →人々が過ごしてきた歴史や自然が身近にある。

・大都市がない。人口20万人規模で大都市と言われるくらいのあり方。自活できる都市がどれだけあるかが大事。

・年々、東京など都市部の気温が上がり「気候難民」が出て来た時、長野県はかなり重要な受け入れ先になるだろうことをリアルに考えていく必要がある。実際に移住者は増加している。

・草間彌生、松澤宥という長野県出身の二大現代アーティスト。
 →全くタイプの違う二人だが、共通するテーマは「絶滅」

・長野県のアートのテーマは「脱成長」

 豊かな資本主義はいつまでも持続できない。全てはいつか消滅していくということを教えてくれるのがアートと締めくくられました。

「ローカルはローカルで重要ながら、長野が1番!という変なナショナリズムにならないよう、わたしは地球の人間の一人であるという一つ上の意識を持つこと、地域と地球を行ったり来たりできる主体性を作っていきたい」というロジャーさんの発言に対し、「それができる、可能性を教えてくれるのがアートですよね。どこでもドアとまで言えなくても時空を飛べる」という金井教授の言葉も印象的でした。

様々な角度からの「アート×気候変動」のお話に興味津々の1時間でした。ファッション的、表面的なエコロジカルではなく、小さなことでいいので、すべの人が意識を変えてアクションを起こしていかなければならないですね。

気持ちの良い一日でした

(文:草深友貴)

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