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フランスはアートが日常に溶け込んでいる

「最強のふたり」(仏語訳:Untouchable)を観ました。

下半身不随の富豪であるフィリップと前科持ちの人情味溢れるドリスが、境遇の違いを物ともせず、最強のコンビになっていくというフランスの実話を元にした作品でした。

実話を元にしているだけあり、ストーリーは時折リアルさが滲みてていて、とても面白かったです。フィリップが「障害者」ということを特に気にせずに、いい意味で容赦無く(普通に)友達になっていったドリスの人柄が素敵だなと思いました。

そして個人的に印象的だったのは、作品の中でフランスの日常生活に溶け込んでいるアートでした。※以下多少のネタバレになっています。




ドリスが一時的にフィリップの介護士の仕事を外れて、他の仕事を探すシーンで、配送会社の面接に訪れた時、面接官のオフィスに入るや否や、壁にかかっていた絵画に気づきました。

その絵画はサルバドール・ダリの「記憶の固執」だったのですが、ドリスはそれを切り口に面接官と会話を弾ませ、無事仕事を得るという展開でした。

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実はドリスは、元々アートに対する知見があったという訳ではなく、フィリップ邸で働く前は、(育ってきた環境とか境遇的な要因により)アートに対する造詣がなかったのです。しかしフィリップと出会い、アートに関する興味を深めていきました。

ドリスがアートに対して興味を持つようになったのは、フィリップの付き添いで現代アートのギャラリーに行くシーンが挙げられます。ドリスはそこで、フィリップが(ドリス的に誰でも描けそうな)作品を、500万円くらいで買っているのを目の当たりにします。

ドリス的には白のキャンバスに赤の絵の具を少し垂らしただけの誰にも描けそうなものと映ったようで、「高すぎる」「なぜ人は芸術に興味を持つ?商売になるから?」とフィリップに尋ねました。

するとこのような回答がありました。

「唯一の残せる足跡だから」

確かに、、、、とかなりこの回答も心の中に残りました。

最近はデジタル化の時代だけど、どうしてもPCの画面上では表現しきれないものって、アート作品の作家の筆致や息遣いのようなものですよね、、、、特に絵画はキャンバス上に色がのった状態で「足跡」を物理的に存在しているので、それを火とかで焼かない限り、「足跡」は消えることはないです。

少し前の記事で、どうして現代アートに値段がつくか?という疑問を提示してみましたが、現代に生きるアーティストたちがメッセージを表現しようと苦労して「足跡」を残す姿は心揺さぶられるものがあります。(さらに腑に落ちおました)

ちなみにドリスはこの画廊での体験をきっかけに、自分で実際に絵画を描いてみたのですが、それをフィリップや富豪の友人の目に目にかけてみたところ、案外100万近く値段がつき、その収入を得るに至っていました。笑

そのシーンはユーモラスでしたね。

アートは一見近づきづらいけれど、その良さを伝えてくれる人が身近にいれば、興味を持ってみようかな、と感じられるものの典型だと改めて痛感しました。



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