イスラム教徒の初詣
1980年代に明治神宮に初詣したときの話です。年が明けてすぐ、0時台の参拝です。参道はギチギチに人で埋まって、一歩が靴のサイズ以下、いわゆる牛歩状態です。
上流階級の外国人が
初詣にフォーマルで来る人はいます。そのときも隣にものすごく高そうなコートを羽織った外国人男性がいました。これは珍しい。懐に忍ばせたワンカップを差し出して、
「How about a drink?」
と勧めるも
「お酒は飲みません」
と日本語で返ってきました。
「もしかしてイスラム教の方ですか」
「そうです。よく分かりましたね」
少し話してみると近くの大使館の方のようです。上流階級の雰囲気を醸し出しています。もしかしたらとても偉い立場の人かも知れません。
雑談をしながら本殿の前まで来ると、向こうの方に機動隊員がこっちを向いてずらっと並んでいます。その向こうが賽銭箱というか「賽銭を投げ込む広大なエリア」です。かなりの距離がありますが、10mくらい後ろの方からも賽銭を投げ込みます。しばしば硬貨がぶつかるので機動隊員はヘルメットをかぶっています。フェイスカバーもしているので痛くは無いでしょうが、数十万人から何時間も硬貨を投げつけられるという大変な仕事です。
隣のイスラム教徒が発行されたばかりのピカピカの500円硬貨を取り出して投げました。すると機動隊員のヘルメットにスコーンと命中。ニヤリと笑ってこちらを見ました。そして、もう一枚投げると再び命中。ナイスコントロール。「イエッス!」とか言いながら笑っています。変なヤツです。
終夜運転の京王線で高尾山へ初日の出を見に行くので、イスラム教徒とはお別れです。分かれた後に気がついたのですが肝心のことを聞くのを忘れていました。
「イスラム教徒が初詣に行くのは教義的に問題ないの?」