Nvidia Corporation(NVDA)25’3Q決算時チェックポイント, 時価総額4Tへの鍵は25’4Qガイダンスにあり。そしてその期待Surprise率はなんと19.8%, Nvidiaはこの壁を超えられるのか!?
各企業の24’7月期~9月期の決算発表も10月の中旬から始まり早1ヶ月が過ぎようとしております。これまでSP500企業の内約91%が決算を発表しており、その内の約75%の企業が売上高、EPS共にConsensus予想を上回る数字を報告している様です。
また平均PERは約22倍と10年平均の約18倍を上回る規模で買われており、一部の投資家の間では買われ過ぎを問う声も上がっております。
さてそんな中11/20にはいよいよNvidiaが25’3Qの決算発表をします。
今回の決算ではBlackwellの出荷による売上はさほど計上されず、今までのHopper GPU(H100,H200)が売上を牽引する形だと思われます。
Jensen Huang CEOの講演でのコメントではBlackwellの需要の高さや、年内はBlackwellは完売したとの好調さをアピールしておりますが、Blackwellの売上が反映されない3Qの決算はどうなるのだろうと疑問に思っておりました。
しかしTSMCの7月~9月期の出荷内容を見て見ると5nmの出荷比率が一番多いのはNvidiaを始め、AMDやQualcommといったファブレス企業への出荷が旺盛だったとも解釈できます。
※3nmは恐らくAppleのM4チップだと思われます。
TSMCの7月~9月期の出荷金額も前年同期比+39%、前期比でも+12.8%上回っておりますのでNvidiaに対する出荷量も前期比より増えているだろうと予測は付きますが、Nvidiaの場合少しConsensusをBeatしたくらいでは投資家は満足せず株価は下落する可能性が高いと思われます。
Nvidiaは24’1Qの決算発表時からデータセンター向けの売上高が急増し始め、その後決算の度に予想を大きくBeatする数字を報告し、業績を反映した株価はうなぎのぼりになって行きました。
下記は24’1Q以降決算での売上高、EPSのBeat比率(Surprise比率)を表したグラフですが期を追う毎にその比率は小さくなって行っております。
売上高規模が大きく成長している為Beat比率が下がるのは当然なのですが、この数字が2%や3%だった場合株価はどうなりますでしょうか!?
確実な事はもちろん言えませんが、仮にSurprise率が2%~3%だったとしたら現在の株価を維持する為には予想以上の4Qガイダンスが必要だと思うのです。
投資家の” 期待値”と言う点ではもはや頭の中はBlackwellに向いていると思うので、20日の3Qの決算は3Qの数字よりも4Qのガイダンスの方に注目が集まるはずです。
サプライチェーンの問題なければBlackwellの売上を加味した4Qのガイダンスが聞ける事と予想いたします。
※個別銘柄に言及する内容が多く含まれますが、筆者の知識と経験を基に独自の見解を述べているものであって売買を推奨するものではありません。
この先に進まれる方はこの件に同意いただいたものとみなさせていただき、
損益に関する責任は一切負わないものとさせていただきます。
証券会社アナリストの評価
20日の決算発表を前に各証券会社アナリストさん達がNvidiaに対する評価をアップデートしておりますので、いくつか紹介させていただきます。
Piper Sandler Harsh Kumar氏:Overweight PT$175
Mizuho Vijay Rakesh氏:Outperform PT$165 from$140
Redburn :Buy rating PT$178
11/12(火)引け後のNvidiaの株価は$148.29なのでおよそ15%前後の伸びしろと言ったところでしょうか。時価総額が3.64Tと世界一の企業なので15%伸びるだけでも時価総額$4Tを超える計算になりますが果たして今回の決算で到達するのでしょうか!?
ここでアナリストさん達がNvidiaをどう見ているのかレポートを転載させていただきたいと思います。
Oakoff Investments, a quantitative research analyst
私は、Nvidiaが来る2025会計年度第3四半期にプレッシャーを受けるかもしれないと懸念しています。
1つには、Blackwellアーキテクチャへの切り替えは、有望ではあるものの、生産とサプライチェーンの物流に短期的な影響を引き起こす可能性があります。
さらに、Blackwellプラットフォームに対する需要は、利用可能な在庫を上回るため、遅延が発生し、短期的な収益に影響を与える可能性があります。
また、特に中国市場における地政学的な懸念や輸出禁止は、トランプ大統領就任後のNvidiaの上昇軌道を脅かすものとなっています。
もう1つのリスクは、エヌビディアがコンセンサスを上回ったとしても、レポートに対する市場の反応がネガティブになる可能性があることだ。
これは主に、エヌビディアがここ数四半期で予想を上回ることが増えているためだが、ここ数年を見てみると、ポジティブ・サプライズの規模が急速に縮小していることがわかる。
エヌビディアが常に予想を上回ることに市場が慣れていることを考えると、この傾向が以前と同じように続かない場合、市場は不利に反応する可能性がある。 つまり、エヌビディアが現在のコンセンサスEPSをほんの数セント上回ったとしても、それは誰にも感動を与えないだろう。
多くの投資家は、いつもよりわずかに上回ったことを成長/収益性のピークの兆候と考えるかもしれないので、それは実際に株価のネガティブな反応につながると思う。
それに加えて、他の多くの企業とは異なり、ウォール街は同社の第3四半期と2026年度の残りの予想さえも引き下げていない。
これは、多くの企業がフォワード予想の数字を大幅に引き下げた一般的な市場動向とは対照的だ。 従って、私見では、市場は報告書発表前に修正することなく、過度に楽観的な予測を続けており(最近の他のハイテク企業の多くがそうであった)、エヌビディアが潜在的にEPSを上回る可能性がある余地が少なくなっている。
Blackwellチップの生産と予想される販売は、収益の大幅な増加を意味しています。すでにFY24の第4四半期に生産が開始されており、2024年第4四半期には15万から20万ユニットの出荷が見込まれ、2025年第1四半期には50万から55万ユニットへと増産されると推定されています。
これは、市場の需要が初期供給を上回ると予想されることを示しており、Nvidiaはこの高い需要とBlackwellのバックログ注文を活用することを促しています。
Blackwellチップのみで、Nvidiaは2四半期で300億ドルを超える潜在的な収益を達成する可能性があります。この推計は、高価格帯での約75万ユニットの販売(4万ドル×75万ユニット)を基にしています。
さらに、Nvidiaは2025年度の第2四半期および上半期に研究開発費の増加に焦点を当てており、報酬(株式ベースの報酬を含む)が35%および34%増加し、コンピューティングおよびインフラストラクチャへの投資が117%および118%増加しました。
これは、AI製品開発を推進し、ハイパフォーマンスコンピューティング市場での競争優位を維持するための集中的な取り組みを反映しています。
これらの投資は、HopperやBlackwellの開発に見られるように、Nvidiaのアーキテクチャ改善への直接的な支援となっています。
さらに、これらの費用に関する同社の予測は、2025年度には40%から50%の増加を見込んでおり、次世代GPUとプラットフォームの充実したパイプラインを示唆しています。
流動性の面では、Nvidiaのキャッシュフロー創出能力も向上しており、顕著な成長を遂げています。
フリーキャッシュフローは2020年度の43億ドルから2024年度には269億ドルに急増し、2025年度上半期には既に284億ドルを生み出しています。
この急激な成長は、強固な流動性と収益力を示しており、Blackwell関連の収益によりキャッシュフローはさらに増加する可能性があります。
同社は戦略的に資本を配分しており、2025年度上半期には149億ドルを自社株買いに充て、第2四半期にはさらに500億ドルの自社株買い権限を付与しています。
この資本配分は、株式の削減を通じて株価を高め、一株当たりの利益とキャッシュフローを増加させる効果があります。
エヌビディアのAIおよびデータセンター事業は、AI、機械学習、その他のデータ集約型アプリケーションの業界全体での採用増加に伴い成長しています。このセグメントは、HopperとBlackwellでのエヌビディアの最新製品の進展により、さらなる恩恵を受ける可能性があります。
AIやインフラモデルを開発する企業(例えばxAI、メタ、マイクロソフト)のGPU需要が増加しているため、エヌビディアは引き続き収益と事業の収益性を向上させていくでしょう。
中立派の意見、ポジティブな意見と両方記載させていただきましたが、NvidiaがBlackwellの出荷量を増加させる26’1Q決算期にはトランプさんが大統領に就任している時であり、関税の件がどうなっているのかによって少し見通しが変わってくる可能性があるのではないかと個人的には見ております。
米国に輸出をする製品全部に対して無条件で10%の関税を掛けるという大統領令を発令すれば、台湾からの半導体に関しても関税対象になるものと思われます。
アリゾナ州に建設中の工場が来年2025年に稼働予定なので米国内需要の半導体をこのアリゾナ州の工場で賄えれば問題も少ないでしょうが、生産キャパもコストも台湾とは比べ物にならないかもしれませんので稼働初期段階では問題もそれなりにありそうです。
この辺はトランプ政権がどのような方針で関税を発動させるかによって大きく変わりそうですので情報を引き続き追っていきたいと思います。
Super Micro Computer(SMCI)の混乱によってサプライチェーンリスクが浮上した!?
意外な面でのリスクを指摘しているアナリストレポートを見つけました。
抜粋転載させていただき最後に意見を述べたいと思います。
Nvidiaが直面している主要な脆弱性の一つは、AIサーバー部品の販売をSuper Micro Computer(SMCI)に依存していることです。
これらのAIサーバーはNvidiaのAI関連製品の需要を支える上で不可欠であり、サプライヤーの財務不安定性や操業中断がリスクとなっています。
Super Microの財務報告問題により、Nvidiaは注文を他のサプライヤーに切り替えざるを得ませんでした。しかし、ギガバイトやASRockなどの代替サプライヤーへの切り替えは、サプライチェーンの根本的なリスクを解消するものではないかもしれません。
特定のサプライヤーへの依存は、Nvidiaの成長戦略を他のサードパーティパートナーからの混乱に対して脆弱にしています。
代替サプライヤーは需要の変動を吸収できるかもしれませんが、ギガバイトとASRockへの注文のシフトは、遅延やコスト増加につながり、NvidiaのAIおよびデータセンター製品の需要増加を満たす能力に影響を及ぼす可能性があります。
Super microの財務不安定性はNvidiaのサプライチェーンに影響を与えています。報告によると、Super microは財務報告の遅れにより上場廃止のリスクがあり、最近のヒンデンブルグ・リサーチの批判的な報告により監査役が辞任し、状況はさらに悪化しています。
これらの財務問題は、Super microがNvidiaの継続的な要求を満たす能力に疑問を投げかけ、サプライチェーンの深刻な弱点を示している可能性があります。
特に、AI市場のような競争が激しい分野では、安定かつタイムリーなサプライチェーンの重要性が増します。Super microや他のサプライヤー(中国や台湾の企業を含む)が財務的または経営的な混乱に陥った場合、エヌビディアは生産コストの増大、製品の発売遅延、未満足の需要による収益損失を経験するリスクがあります。
これはエヌビディアの株価評価に重大な影響を及ぼす可能性があります。
ギガバイトとASRockは、エヌビディアの要求に応じた高度な冷却ソリューションを含む製品能力の拡張に積極的に取り組んでいますが、これらのサプライヤーは初期段階ではスーパーマイクロと同等の能力を持たない可能性が示唆されています。
急激な規模拡大は、エヌビディアが吸収するか、または顧客に転嫁する必要がある製造コストの増加に繋がり、AIサーバー市場における価格戦略や競争力に影響を与える可能性があります。
全体的に、エヌビディアは少数のサプライヤーへの依存度が高まり、これらのサプライヤーが財務的または経営的な問題に直面した場合、さらなる脆弱性が発生するリスクがあります。
確かに一理はあるように思えますがNvidiaもサーバー部品ではDellなどとも協業していると思いますので、仮にNvidia側に影響があったとしても限定的なのではないかと個人的には思います。
Nvidiaとしては当然Super microの財務不安やサプライチェーンに影響が出るかもしれない事は認識しているはずですので、Dellや他社サプライヤーに対する販路が広がりSuper micro側はさらに苦しい展開を迫られる形になるのではないでしょうか!?
(この件であまり裏が取れなかったので、予想程度の認識でいていただけると助かります)
Nvidia 決算前のオプション
Nvidiaの決算前のオプションは今までも総じてすごい枚数が積まれておりましたが今回はどうでしょうか!? 11/22(金)期日のコール、プットオプションの建て玉状況を見て行きたいと思います。
※ただこれは日に日に変化しており、あくまで執筆時での建て玉になってしまう点はどうかご了承ください。直前でガラッと変わる事もあります。
全体的にコールのプレミアム価格が上昇しており、市場がNvidiaに対して強気でいる事が分かります。
特に50%以上の価格上昇を見せている$160~$170は枚数も多く急なボラティリティに対して身構えている姿が目に浮かびます。
また現段階では最多枚数になっております$150~$155でのコールは決算後急騰した場合に行使しやすい価格帯と言う点もあり、現在のOpen intは85000枚を超えております。市場は今回も決算後に上昇すると踏んでいる方が多い印象です。次にプットオプションを見て行きたいと思います。
どの価格帯も総じてプレミアム価格が下落しており、こちらを見ても下落方向へのボラティリティは低いと市場は現在見ているようです。
執筆時のNvidiaの株価は$148ですが$140~$135のOpen intが約53000枚も積まれております。これだけでも相当な枚数ですが全体比較で見れば市場は決算後に株価が上昇する方に期待をしている事がわかります。
25’3Q収益予測(Consensus予想値)
ここでアナリストさん達が出しているNvidiaの25’3Qでの売上高、EPS予測を出しておこうと思います。
Revenue Estimate $32.94B(31.92B~34.51B)Y/Y+81.79%
EPS nonGAAP Estimate $0.74(0.72~0.80)Y/Y+84.36%
25’4Qガイダンス(ここが非常に重要になってくると思います)
Revenue Estimate $36.68B(34.00B~43.94B)Y/Y+65.97%
EPS nonGAAP Estimate $0.81(0.72~0.98)Y/Y+56.96%
25通期ガイダンス(このガイダンスを出してくるかは不明です)
Revenue Estimate $125.85B(122.58B~134.28B)Y/Y+106.57%
EPS nonGAAP Estimate $2.85(2.74~3.04)Y+119.75%
前記したSurprise率を仮に前期の比率(+4.48%)で25’3Qの売上高に当てはめると$34.41Bとなります。Surprise率3%で見た場合は$33.93BでいずれもConsensus予想値のTopラインを超えられない数字になってきます。
その為上記売上高が示された場合は(これだけを見て判断した場合)株価は良くて現状維持、期待に届かずで売られる可能性はそれなりにあると思います。
市場の関心が3Qの内容より4Qのガイダンスに偏重していた場合のSurprise率は、Blackwellの好調な数字が反映されてくる事もあり恐らく高めに設定されていると思います。ちなみに25’4Qガイダンス売上高のTopライン予想値はConsensus予想の数字からなんと+19.8%ものSurprise率が乗っかっております・・・ (-_-;)。
まとめ
昨年の2月以降Nvidiaの決算前は毎度ハラハラする事が多く、興奮して眠れない時もありました。今回は以前より自分自身の情報感度が鋭くなっている点もあり、比較的落ち着いている感じです。
さてここまで決算時の株価値動きのポイントとなる点を列挙してきましたがいかがでしょうか? こうしてピックアップしておくだけで実際に株価が乱高下した時に落ち着いた判断ができる可能性が格段に上がると思います。
私自身実際にこういった決算前にまとめておく事で理解が深まり、サプライズが起きた時もできるだけ冷静に売買やHoldの対処判断ができた事が多いです。
今回のNvidiaの決算が以前と大きく違う点があります。
それはBlackwellの期待値の高さで前記した4QガイダンスのSurprise率の高さに表れております。以前からJensen CEOが旺盛な需要だと各メディアでコメントしているだけにその分市場の期待値が高くなったのです。
これは別の角度から見れば株価が大きく下落してしまう可能性を増やしてしまった事にもなります。ここまでの決算後の株価値動きでも大きく買われるにせよ売られるにせよ、その振れ幅が大きい様に思えます。
オプションの価格帯や枚数を見ても投資家さん達のリスク(それだけ大きく動く事を覚悟してヘッジを掛けている)に対するヘッジが、今回は以前に比べ更に強いと思います。
いずれにしてもやはりNvidiaの決算は緊張する事の方が多いです・・・マーケットリーダーですからNvidiaにくしゃみをされると半導体セクターやTechnologyセクター全体が風邪を引いてしまうくらい影響力が大きいので、今回も固唾をのんで決算を見守りたいと思います。
長くなってしまいましたが最後までお読みいただきありがとうございました。
皆様にとって私の見解が投資判断の一助となっていただければ幸いです。
読者様、フォロワー様の収益UPにつながる事を心よりお祈りいたします。