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Palantir Technologies(PLTR)24’3Q決算分析,25年Forward P/Eを用いても現在の株価は95.5倍と超高倍率ですが投資家の熱は高まるばかり。潜在的リスクの面からも分析していきたいと思います。

24’3Qのビジネスハイライトを見て正直驚きました・・・( ゚Д゚)
もはや政府系のデータ解析(Palantir Gotham)企業という説明で納まる企業ではなく、民間企業向け部門(Palantir Foundry)がもう一つの収益の柱として十分に貢献しております。収益偏重のリスクを分散し営業利益やキャッシュフローの成長も目覚ましいものがあります。

Palantir 24’3Q Business Highlights
  • 米国全体売上高:$499M(売上全体の約68.8%を占めております)

  • 米国内売上高成長率:前期比+13%、前年同期比+54%($179M⤴)

  • 米国政府売上高成長率:前期比+15%、前年同期比+40%($320M⤴)

  • 商業契約高成長率:前期比+7%、前年同期比+32%

  • 100万ドル以上の契約数:104件

  • Operating Income(営業利益率):38%、$276M ※GAAPベースでは16%、$113M(ここがPalantirのWeak Pointでもあります)

  • EPS nonGAAP $0.10(前年同期比+43%)※GAAPベースでは$0.06(前年同期比+100%、以前まであった問題が今期解決したのかもしれません)

Palantirがここまで民間商業部門を伸ばせているのは自社開発のAI『Palantir AIP』〈Artificial Intelligence Platform〉というプラットフォームによる大量データ解析や予測、意思決定支援などが好評なためですが以下にもう少し詳しく述べてみようと思います。

  1. データ統合と分析能力の高さ:Palantirのプラットフォームは企業内外の多様なデータソースを統合し、包括的な分析を可能にします。これにより企業はデータに基づいた意思決定を迅速且つ的確に行うことができる様になります。

  2. カスタマイズ性と柔軟性:各企業のニーズに合わせてカスタマイズ可能なソリューションを提供しており、業界や業務プロセスに特化した対応が可能のようです。これにより自社の課題に最適化されたAIツールを活用できるようになります。

  3. セキュリティとプライバシーの確保:政府機関のような高レベルのセキュリティ情報を扱ってきたPalantirは当然高度なセキュリティ技術を保有しており、企業データの安全性とプライバシー保護に対する信頼性が高いです。これは民間企業にとって大きな安心材料になります。

  4. 導入と運用のサポート体制:専門的なサポートチームが導入から運用までを支援し、企業がAIソリューションを効果的に活用できるようサポートしております。これにより企業はスムーズにAI技術を導入し業務効率を向上させることができます。

これは私の推測ですがPalantirは自社のAIトレーニングや推論強化のインフラとして、主にAWSを利用している可能性が高いと推測しております。
※これは根拠がそこまで強くない予想として捉えていただきたいですが、現在の背景で一般企業向けにインフラを提供していて、尚且つAIソフトウェアの多様性に柔軟に対応できるインフラはAWSが筆頭格だろうと思うのです。

AWSとPalantirは長期的なパートナーシップを築いているため、AWSのインフラ(Amazon Bedrockなど)を活用する事で効率的にAIを育成させることができます。少し話が反れますがAWSのこの一般企業向け門徒開放インフラは将来大きなWAVEを起こす可能性があると個人的に思っております。

Palantirだけではなく多くのソフトウェア企業が大きなうねりを起こす可能性が広がって来たと思いますので、投資家としてこの第二フェーズの波に乗って行けるようマクロ環境とファンダメンタルズには十分アンテナを張っておきたいですね。
(もちろん私自身これからもどんどん発信していくつもりです)


Palantirのバリュエーション

先に24’3QのHighlightsを説明いたしましたので、ここからはPalantir株のForward P/E 95.5倍という投資家からの期待と評価について見て行きたいと思います。
TeslaやArmの株式は似たような株価倍率でも買われてきた部分があると思います。これは投資家の方々がその企業に対し数字だけでは評価しきれない特別な思いを持っているからであって、これは正しいとか間違っているという概念で語れない世界だと思います。

Palantirは恐らくこの領域に入った限られた企業だと個人的に思っており、本日AHで株価が12.6%も上がる(時価総額950億ドル近くある企業です)理由としては通常の企業に対する分析では測れません。こういった点からマクロ環境が崩れない限り、同業他社が好調な限りは指数組み込みを恩恵もあって上昇する可能性が高いのではないかと予想いたします。

ただ反面理論では説明しきれないレベルの株価ですので、期待感が崩れ落ちる様なニュースやマーケット全体に波及する様な事象が起きた場合はものすごい勢いで売られて行く事を覚悟しておくべきだとも思います。

実際にこの決算後の株価大幅上昇後にSeeking Alpha アナリストさん達数名がPalantir株に対して警笛のような印象を受けるコメントを出しておられますので抜粋、転載させていただこうと思います。

『約100倍の利益倍率は、Palantirのような急成長企業にとってもかなり高い。 同社が常に割高であったと主張することもできるが、Palantirが同じく急成長を遂げているNvidia(NVDA)の利益倍率の2倍以上で取引されているという事実は、Palantirが現在過大評価されている可能性があることを示している。
将来の大規模な成長がPLTRの株価にすでに織り込まれているのであれば、今後数年間でその成長が実現したとしても、株価はそれほど(あるいはまったく)上昇しないかもしれない。
YChartsによると、PalantirのEBITDAに対する企業価値倍率は80倍台で、これも非常に高い。
確かに、Palantirはその市場での地位と力強い事業成長により、プレミアム評価に値するが、それは必ずしも現在の評価が正当であることを意味しない。

結局のところ、Palantirが利益の50倍で取引されるなら、同様にプレミアム評価で取引されるだろう。』

『数字の観点からは、Palantirのビジネスの勢いは信じられないほどです。 しかし、売上高の~40倍というPLTRの株価は、実質的にアマゾン(AMZN)やマイクロソフト(MSFT)がドットコムバブルのピーク時につけられたような価格だ:

Palantir 直近P/S(株価売上高倍率)レシオ

絶対的なバリュエーションの観点から、Palantirは著しく割高であり、PLTRの株価は、当社の最新のフェアバリュー予想である1株当たり21ドル[または時価総額520億ドル]に対して、-55%のダウンサイドの可能性があります。

歴史が示すように、勝ち組の銘柄は長期にわたって割高に評価されることがあるためだ[例えば、Amazon.com, Inc.、Tesla, Inc.(TSLA)、NVIDIA Corporation(NVDA)など]。 Palantirの長期的なリスクとリターンを見て、十分な情報に基づいた判断を下そう:

P/FCFの積極的な出口倍率を25倍と仮定すると、Palantirの株価は2024年の46.7ドルから2029年には45.1ドルまで、年平均成長率-0.7%で下落すると私は見ている。』

とまあ論理的に考えれば現在の価格では買えない(業績が株価に追いついていない)株価である事は正論なのだと思います。ただ最近のPalantirの人気度は群を抜いており、AIを使用したソフトウェア企業の成功例の一つとして称えられている面も大きいと思います。

こういった面まで考慮すると一概に理論だけでは語れない銘柄に成長した事は賞賛に値するという思いです。

Palantir Financial Result

ここからは決算資料で開示された資料を見ながらPalantirの財務面を見て行きたいと思います。

Palantir Revenue

PalantirのRevenue表記で他社と少し違うのがStrategic Commercial Conrectsという項目(長期的かつ戦略的なパートナーシップ契約を指し、単なるソフトウェア提供にとどまらず業務プロセス全体に深く関与し意思決定の最適化を目指すもの)があり、こちらが減少している点は良し悪し両方あります。

現在発表されている売上高成長率は民間商業部門で前年同期比+55%と報告されているのですが、このStrategic Commercial Contracts部分を除外すると(下の数字と単純な引き算では数字が合わないと思います。)
売上高成長率はなんと約70%まで跳ね上がるようです。

Palantir Revenue Growth, Operating Margin Growth

売り上げ高成長率、営業利益成長率も前年同期比や前期比で見ても順調に成長しているのが見て分かります。

Palantir Cash Flow

営業キャッシュフローは凄まじい伸びを見せており、前年同期比で+214.6%を達成しております。2段目のCash Paid for Employer Payroll Taxes~の部分は従業員に対して報酬の一部を株式で支払っており、その給与税をPalantir側が一部負担しているようです。
Palantirの業績数字でnonGAAPとGAAPで大きな乖離がある理由の一つはこの株式報酬に対する税金やその他税金、減価償却費がかなりの額に上る為大幅に数字が変わってきてしまう為です。(一概に良い悪いは言えませんが、Nvidiaもこの部分の数字乖離は大きいです)

Palantir Operating Income, Margin

こちらの表ではOperating Incomeを基に調整後の営業利益(Adjust Operating Income)と調整後の営業利益率(Adjusted Operating Margin)を算出する為の項目を示しております。

この場合まず本業による営業利益から営業費用(Operating Expenses)を差し引いた後の営業利益で株式報酬や関連する雇用主の給与税を除外していない状態のものを示しています。この数字でも前年同期比では+183%とかなり凄い伸び率ですが、株式報酬や株式報酬に関わる雇用主側の給与税も総じて高額になっております。
Palantirのようなソフトウェア企業は優秀なエンジニアを確保する事が必須の業界だと思いますので、この株式報酬部分は今後も伸びて行く方向だと思います。

Palantir Net Income

最後にNet Incomeの部分を見て行きます。
Attributable to Common Stockholders(普通株主に帰属する純利益)
報告された純利益の中で普通株主に帰属する部分を示しております。

Income Tax Effects and Adjustments(所得税効果及び調整)
所得税などの効果を反映させて純利益を再計算したものですが、この部分前年同期比よりも大幅にマイナスになっております。要はPalantirの株式を報酬で受け取っている方(経営陣、従業員共に)が多いという事です。

決算カンファレンスコール

David Glazer - CFO

第3四半期は非常に好調な四半期となり、売上高の伸びは前年同期比で30%に加速し、事前ガイダンスの上限を450ベーシス・ポイント近く上回りました。
米国がAI革命を急速に受け入れる中、このAI需要の増加が米国事業の業績を押し上げ、前年同期比44%増となりました。

米国の商業用事業は前年同期比54%増、前四半期比13%増となりました。
米国政府関連事業は前年同期比40%増、前四半期比15%増となり、前年同期比で7倍の伸びとなり、過去15四半期で最も力強い伸びとなった。

この好調を背景に、通期売上高ガイダンスの中間値を28億700万ドルに引き上げ、前年比26%の成長率とする。
このような傑出したトップラインの業績を達成する一方で、調整後の営業利益率は38%に拡大し、当社の事業の強力なユニット・エコノミクスを浮き彫りにしました。

売上高と収益性により、「40の法則」スコアは第2四半期の64から第3四半期の68へと前四半期比で4ポイント上昇しました。

営業キャッシュフローは4億2,000万ドル、調整後フリーキャッシュフローは4億3,500万ドルとなり、それぞれ58%、60%のマージンとなりました。
調整後フリー・キャッシュ・フローが10億ドルを超えたのは、創業以来初めてのことです。
また、前四半期にはS&P 500にランクインし、当社の持続的な収益性と成長を実証することができました

AIPの勢いが続いていることから、世界のトップラインの業績は引き続き加速しています。
売上高は前年同期比30%増、前四半期比7%増の7億2,600万ドルでした。
戦略的商業契約による収益の影響を除くと、第 3 四半期の収益は前年同期比 32%増、前四半期比 7%増でした。

顧客数は前年同期比 39%増、前四半期比 6%増の 629 社。
最大手顧客からの収益は引き続き拡大している。 第 3 四半期の上位 20 社からの 12 ヶ月間の売上は前年同期比 12%増の 6,000 万ドルでした。

当社の米国コマーシャル事業は、AIPが米国における新規顧客の転換と既存顧客の拡大の両方を牽引し、AIモデルの生産配備を継続することで、空前の需要が続いています。

第3四半期の米国商業部門の売上高は、前年同期比54%増、前四半期比13%増の1億7,900万ドルとなりました。
戦略的商業契約からの収益を除くと、米国商業部門の収益は前年同期比59%増、前四半期比12%増でした。

政府部門に話を移します。 第 3 四半期の政府部門の売上は前年同期比 33%増、前四半期比 10%増の 4 億 800 万ドルでした。
第3四半期の米国政府部門の売上高は、前年同期比40%増、前四半期比15%増の3億2,000万ドルに加速しました。

第 3 四半期の国際政府部門の収入は 8,900 万ドルで、前年同期比 13%の増加でしたが、前四半期に指摘し た第 2 四半期の収入のキャッチアップと、案件のタイミングがあまり良くなかったため、前四半期比では 5%の 減少となりました。

第3四半期のTCV計上額は11億ドルで、前年同期比33%増、前四半期比16%増となった。

株式報酬費用を除いた調整後売上総利益率は82%でした。 株式報酬費用および関連雇用者給与税を除いた調整後営業利益は2億7,600万ドルで、調整後営業利益率は38%となり、8四半期連続で調整後営業利益率が拡大しました。

第3四半期の調整後費用は4億5,000万ドルで、前四半期比6%増、前年同期比14%増となった。 製品パイプラインに投資し、AIプロトタイプから生産への移行を加速させるため、第4四半期にかけて費用が増加する見込みです。

以前お伝えした通り、私たちは株価を含む会社の目標達成に連動した報酬制度を導入しています。当社の好調な業績、S&Samp;P 500への採用、株価の上昇を背景に、特定の市場ベースの権利確定基準が予想よりも早く達成された場合、株式報酬費用を前倒しする必要が生じるかどうかを引き続き注視していきます。

キャッシュフローに話を戻します。 第3四半期の営業キャッシュフローは4億2,000万ドル、調整後フリー・キャッシュフローは4億3,500万ドルで、それぞれ58%と60%のマージンとなりました。
調整後フリー・キャッシュ・フローが10億ドルを超え、マージンが39%に達したのは、12ヵ月間ベースで初めてです。

第3四半期末までに、当社は自社株買い戻しプログラムの一環として約180万株を買い戻しました。 当四半期末現在、当初の取得枠の残りは9億5,400万株です。 当四半期末の現金、現金同等物および短期米国債の残高は46億ドルでした。

次に見通しについてですが、2024年第4四半期の売上高は7億6,700万~7億7,100万ドル、調整後営業利益は2億9,800万~3億200万ドルを見込んでいます。
2024年通期については、売上高ガイダンスを28億500万ドルから28億900万ドルに引き上げます。
米国コマーシャル部門の売上高ガイダンスを6億8,700万ドル超に引き上げ、少なくとも50%の成長率とします。

調整後営業利益ガイダンスを10億5,400万ドルから10億5,800万ドルに引き上げます。 調整後フリー・キャッシュ・フローのガイダンスを10億ドル超に引き上げ、GAAP基準の営業利益と当期純利益を引き続き各四半期に見込んでいます。

Alex Karp - CEO

私たちはこの会社を立ち上げ、政府機関や民間企業におけるアメリカの採用を見守りつつ、私たちに変化を強いることなく、保険、石油・ガス、あらゆる複雑な製造業、サプライチェーン、ヘルスケア、防衛、インテルなど、企業をより良くする方法のアイデアの多くを受け入れながら、新しい、異なる方法でソフトウェアを構築し、それを実装する、つまりインフラにこそ価値があると信じています。

このようなことを書いている専門家たちは、LLMという商品こそが価値あるものであり、その商品をどのように管理するかという資産こそが価値あるものだと信じているようだ。

そして、私は特に、戦闘機がこれを採用したことを誇りに思っています。

ホワイトハウス、議会、国防総省、情報機関など、米国政府のあらゆる部署が、大規模な言語モデルをインフラに適用し始めています。
パランティアは特にこの分野を得意としています。 長い時間をかけて会社を作り上げるとき、良い局面も悪い局面もある。

しかし実際に、企業をより強く、より良くするために何が必要かという私たちの考えが、このような劇的な結果に表れたことは非常に喜ばしいことであり、今後も続けていくつもりです。

まとめ

24’3Qの決算内容、財務諸表、カンファレンスコールを一通り読みましたのでまとめたいと思います。

前記24’2Qの時も決算分析記事を書きましたが2Q時の成長率をさらに上回ってきている決算を出してきたのはさすがだと思います。今回7月~9月期の決算期にソフトウェア企業で有望は内容を報告してきたのはServiceNowとこのPalantirでしょうか・・・!?。2四半期前はソフトウェア企業の決算は芳しくない内容が多く、当時はソフトウェア企業のAIを用いた事業の収益化はまだ先の話だろうと言われておりました。

そこから約半年、ハイパースケーラーのおかげでAIの成長育成インフラが大分整ってきた点も大きいと思いますがPalantirのような企業はその成功例の一つではないかと思います。前記した様に恐らくPalantirはAWSを利用しているのではないかと推測いたしますので、今後もPalantirのような企業が大いに出て来るのではと思います。

この点が今後のPalantirにとってのリスク要因になり得る事でもありますので、まだ時価総額の低いグロース企業が成長して市場に出て来る事を期待したいと思います。

ここまで個人的な意見は途中途中で述べてきておりますので、最後に投資家目線で直近のPalantirの株価チャートを載せて見て行きたいと思います。

Palantir 直近株価チャート

現在のプレマーケットで$47.46と52週高値を更に更新しており、チャートの形も非常に綺麗で文句の付け所があまりない状態ですね。
現在株式保有者全員が含み益状態ですので、大きなしこり玉などの懸念は無いと思われ利確売りの投資家がどれくらいいるのかですね。

ただここまでの決算を出し、投資家にも評価されている株式ですので押し目はあまり期待できないかもしれませんね。
でも明日は大統領選の投開票、そして週末はFOMCと重要イベントが続きます。投資家としては今後の戦略を立てるのに大きく影響があるイベントですので、あまり波風が立たない程度に通過してもらいたいものです。

最後までお読みいただきありがとうございました。みなさまにとって投資判断の一助になれば幸いです。

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