フォロワーさんリクエスト銘柄分析 #2 Lululemon Athletica 決算前ポイント,財務状況確認,
今回は、いつもお世話になっているフォロワーさんからリクエストのあったブランドを分析してみたいと思います。
今回分析するのは、カナダのバンクーバーに本社を置くアパレルブランド、Lululemon Athleticaです。
スポーツウェアとしてだけでなく、日常生活でも着用できるスタイリッシュなデザインで、10代からシニアまで幅広い年齢層に愛されております。
アパレル市場のトップはNIKEで、米国でのシェアは40~60%、ルルレモンは10~20%とその差は歴然ですが、女性をターゲットに主にアジアに進出をしておりこちらでの市場の伸びは他社を圧倒しております。
都市部の富裕層や健康志向のユーザーにも広く支持されており、得意分野(ヨガウェアやランニングウェア)でのシェアは高いようですね。
決算を目前にして、この市場をさらに掘り下げてみたいと思います。
※個別銘柄に言及する内容が含まれますが筆者の経験と知識を基に見解を述べているもので売買を推奨するものではありません。
この先に進まれる方はこの件に同意されたものとみなさせていただきます。
株価は現在年初来安値付近
Lululemon Athleticaの株価は、2023/12/29の516$から現在の311.99$まで、約60%下落しております。
ここに至るまでの記事を読むと、大きく下落した起点は前回の決算発表であることがわかります。
この時、25'1Qと25年通期のガイダンスが発表されたのですが...
25'1Qガイダンス
Revenue 21.75B~22B(217億5000万$~220億$)
Consensus 22.60億$(226億6000万$) miss 850M
EPS GAAP 2.35$~2.40$ Consensus 2.55$ miss 0.15$
25通期ガイダンス
Revenue 10.70-10.80B ($10.7B-$10.8B)
Consensus 10.94B ($10.94B) miss 240M
EPS GAAP 14.00-14.20$ Consensus 14.29$ miss 0.29$
どうやら、このガイダンスが株価の急落につながったようですが、昨今に発表されている経済指標で消費者は支出を控えている事が分かっております。
こういった背景を考えるとLululemonの様な一般消費財セクターは生活必需品ではない為、支出の優先順位が低くなってしまうのは致し方ありません。
別の角度からの視点を取り入れる為に、ここで前回の決算発表後に出されたSeeking Alphaのアナリストレポートを見てみたいと思います。
24’4Q決算発表後
2023年第4四半期 Lululemonは主要指標において前年同期比で著しい成長を遂げた。
純収入は16%急増し32億ドルに達し、米州の純収入は9%増加した。
国際的な純収入は54%、恒常為替レートベースでは56%という著しい伸びを示した。既存店売上高も力強い伸びを示し、全体の既存店売上高は12%増、米州の既存店売上高は7%増、海外の既存店売上高は43%増(恒常為替レートベースでは44%増)となった。
Luluは再びその成長を印象づけることに成功した。
経済環境は依然として厳しいが、同社は2桁の増収を達成し、同社製品に対する需要が依然として強く、堅調であることを証明している。
今後、消費マインドの改善により、今年後半から来年初頭にかけて、同社の業績はさらに向上するものと思われる。
来年は成長が鈍化すると予想しているが、それでも1桁台後半から2桁台前半になると見ている。
この成長期待が多くのアナリストの予想を下回ったため、株価は大幅に下落した。以前のバリュエーションは確かに高かったと考えるが、売りが正当化されたかどうかについては、バリュエーションのセクションで詳しく説明する。
収益性
決算報告を見るとき、通常は収益性の指標を重視したい。
2023年第4四半期の売上総利益は25%増の19億ドル、調整後売上総利益は20%増の同額となった。
売上総利益率も大幅な伸びを示し、430ベーシス・ポイント増の59.4%、調整後売上総利益率も200ベーシス・ポイント増の同数値となった。
営業利益は191%増の9億1,390万ドルで、営業利益率は28.5%となり、2022年第4四半期の11.3%から上昇した。実効税率は前年同期の62.3%から28.1%に低下し、希薄化後の1株当たり利益は2022年第4四半期の0.94ドルから5.29ドルとなった。同期間の調整後1株当たり利益は4.40ドルであった。
過去数年間の収益性の推移を少し振り返ってみよう。以下のグラフは、売上総利益率、営業利益率、純利益率を示している。
〈粗利率、営業利益、純利益がかなり高い事が見て取れます。この財務基盤が海外に新規出店をする原動力になっているので、この経営は見事だと思います〉
今回も利益率と収益性の改善は投資家にとって魅力的であり、この傾向が続くか、この水準で安定することを期待したい。
総合的に見て、収益性と急成長を含む同社の財務実績は、ファンダメンタルズの観点から同社を魅力的な企業にしていると我々は考えている。また、2021年の純収入62億5000万ドルから2026年までに125億ドルに倍増させるという「パワー・オブ・スリー×2」戦略で掲げた目標達成への道も順調に進んでいる。
しかし2024年度4Qの決算発表後の25’1Qガイダンスから成長率が極端に落ちてしまいました。
売上高成長率 24’1Qの 24% → 8.8%へ
EPS成長率 24’1Qの 54% → 3.1%へと大幅にダウン
5月に入ってChief Product Officerを務めていたSun Choe氏が突然の退社すると発表し不安感にかられた投資家は更に売り込み株価は下落しました。
〈突然の退任報道から8日後、VFコーポレーション(NYSE:VFC)がSun Choe氏をバンズ・ブランドのグローバル社長に任命したと発表した。Choe氏は7月下旬から職務に就く予定だそうです〉
現在の価格バリュエーション
LULUは24年3月期までは20%以上の高成長企業であり、よりラグジュアリーな選択肢であることを考えると、同業他社のスポーツウェアよりも不況を乗り切れる可能性が高い。
では、これを今日の市場に当てはめるとどうなるだろうか?
競合他社を見ると、ナイキは24年度に1%の成長、25年上半期にLSDの減収を、アディダスは2024年にMSDの売上高を案内している。
市場はLULUの成長も鈍化するのではないかと懸念しているかもしれないが、これはジェフリーズも同様の見方をしており、LULUの米国での売上高成長率は来年マイナスに転じると予想している。
景気が悪いときの業界のパフォーマンスを分析すると、私はLULUが同業他社よりもはるかに持ちこたえると予想している。
加えて、ナイキがNA売上高を3%減少させたのに対し、LULUは23年第4四半期にトップラインを大きく伸ばしたことにも注目したい。
米国の消費者心理は確かに弱まっているが、アパレルとハイエンドの若年層の個人消費は堅調を維持している。
LULUはナイキやアディダスのようなスポーツウェアの同業他社よりも良い業績を上げるはずであり、投資家は同業他社のガイダンスが弱いからといってLULUを悲観すべきではない。
しかし、LULUの11~12%の売上成長率は、~HSD成長率に下方修正される余地がまだあると私は考えており、投資家は慎重にナビゲートする必要がある。
LULUの株価下落は、低成長企業への再評価によるところが大きい。調査は今後の低成長を支持しており、米国の女性はすでに認知度がピークに達し、メンズは~15%で安定している。
海外は唯一の主要カタリストだが、出店ペースは比較的遅い。熾烈な競争にもかかわらず、私は、店舗のフットフォール、消費者調査、グーグルトレンド、ネットプロモータースコアを考えると、LULUの強力なブランディングが維持されていることに満足している。
LULUは不況環境下でも同業他社よりは持ちこたえるはずだが、消費者見通しの弱まりと適正なバリュエーションから、私はLULUを様子見したい。
安全マージンが十分ではない。
PERが20を下回れば、魅力的なエントリー・ポイントになるだろう。
まとめ
現在の高金利下はアパレル業界全体にとって逆風となっているのは明白かと思います。消費者は支出を控え昨今の経済指標でインフレが鈍化傾向にある事を私たち投資家は喜んでおりますが、半面こういったアパレル企業にとってみれば景気全体が弱くならない事を祈る思いなのだと思います。
上記アナリストのコメントにもあるように同業、競合他社と比べLululemonの財務体質は強力で配当も支払っていない為成長原資として資金を回す余裕があります。
中でも米国よりアジア地域(特に中国圏内)の出店を加速させており今後1年で25~30店舗を中国本土に向けて計画中の様です。
実際の売上高成長率も2023年は中国市場で66.5%を記録しており、米国本土の成長率を大幅に上回っております。
既存店売上高でも中国本土は39%増、その他地域は32%増とここでも差が出ております。
こういった背景を考えるとLululemonの潜在的需要とファンユーザーは根強くマクロ経済の状況には影響を受ける業種ではありますが、経済の発展と共に売り上げも戻ってくると思われます。
その点を考えた場合現在の株価312$、P/E 22倍という数字は過去に比べると割安な水準だとは思いますが、現在の株価モメンタムはかなり低下している為、決算前に乗るのはちょっとリスクが高い様に思えます。
これがP/E 20倍を切ってくる水準(恐らく280$前後)まで下がってきたら、中長期で保有したいと考えている投資家の方々にとってかなり割安な水準なのではないかと想像いたします。
最後までお読みいただきありがとうございました。