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トランプ大統領返り咲きの市場への影響についてもう一度冷静に考えてみようと思います。

昨日の株式市場、債券市場、仮想通貨市場は歓喜に沸いたような値動きでした。仮想通貨関連は既に日本時間11/6(水)の早朝から上昇しており、債券や為替が徐々に反応していきました。

いわゆるトランプトレードと言われる取引が進み、当確が出た後のプレマーケットでは金融、工業や資本財、Tech系銘柄が大きく上昇し、反面ディフェンシブ系のHealthcare、一般消費財そして高金利下では逆風になる不動産、公益といったセクターは売られておりました。

この動きを見ていて個人的に少し行き過ぎな印象も受けました。市場引け後に色々と記事を読み込んでみて、これは一度頭をリセットする必要があると考えましたので自己分析も兼ねてこの記事を書こうと思った次第です。

トランプさんが選挙活動中に公約として公言されておられた点をもう一度見直し、どの市場にどういう影響が考えられるのかを整理する事で次のポジションが組み立てやすくなると考えましたので、この後色々と調べて書いていきます。まずは昨日の選挙結果を掲載しますがトランプさんの圧勝でした。

大統領選開票結果

※この記事は筆者自身の知識と経験を基に独自の見解を述べているものであり、売買を推奨するものではありません。この点を十分ご理解いただいた上でお読みいただけますようお願いいたします。


専門家はどう見ているのか

Societe Generale analysts presented their top U.S. election trades, as Former President Trump is now president-elect.
(ソシエテ ジェネラルのアナリストは、トランプ前大統領が次期大統領に就任したことを受け、米国選挙のトップ・トレードを発表した。)

トランプトレードの行方

大統領と上院は既に共和党が過半数を取る事が確定しており、残るは下院になります。現在のところ下院のForecastは共和党過半数となっておりますが、残り30議席のうち12議席の行方次第で民主党過半数に変わる可能性がありますので一旦保留にしておきます。(執筆時の状況では下記の状態になりますのでご了承ください。)

11/7時点での下院選開票結果

ソシエテ・ジェネラルの米国株式部長マニッシュ・カブラ氏によると、トランプ前大統領の勝利はS&P 500のEPSを5%押し上げると予測されています。彼は、「もし米10年債の利回りが5%にとどまるなら、S&P 500が6666になるという我々の青空シナリオは妥当だ」と述べています

加えて、米国のシクリカル・トレードは少なくとも大統領就任式までは好調を維持するはずだ、と同氏は述べた。
また、ソシエテ ジェネラルのアナリストは、"トランプ大統領の下での厳しい関税の背景は、分割された議会とともに、大統領の権利として貿易と移民に関する権力を与える "と想定している。

このモデルは、"非常にポジティブ "を意味する2つの矢印から、"非常にネガティブ "を意味する2つの矢印までのスコアリングシステムを使用している。

大まかな見立ては私も変わりませんがこの評価の時間軸が書かれていないのと、前提とした条件がイマイチ明確ではない(関税発動の問題や追加の減税措置法案の中身)のでねじれ議会の場合の株式市場がネガティブと言う点は少し疑問に思います。欧州、日本がネガティブ、中国が超ネガティブと言う点は関税が発動されてきたらネガティブだと思います。

金利やイールドカーブは総じて同意で為替が主にドル高方向だという点も理解できます。あとはcommodityでGoldが金利関係なくポジティブだという点には少し驚きました。実際に6日の取引ではGoldは約3%も下落しており、代替資産の仮想通貨にシェアが傾いた形かと思いましたのでこの後もGoldの価格にはアンテナを張って行きたいと思います。

半導体関連の行方

11/6(水)米国株式市場で多くの半導体銘柄が上昇する中、世界最大のファウンドリー企業TSMCの株価は約1.3%下落しておりました。
これは恐らくTSMCが中国とつながりが深い点、台湾から米国に半導体が輸出される際には関税が掛かりTSMCの収益が圧迫される事への懸念などによるものではないかと推測いたします。

では実際にTSMCに対して関税が発動されたらどういう事が起こるのか!?
順を追って確認していこうと思います。

  1. TSMC側の製造コストが上昇する可能性がある

    1. TSMCは主要米国企業の半導体の製造をほぼ一手に引き受けております。ここに関税が導入されれば輸入コストが増加し、結果として半導体製品の製造コストが上昇します。このコスト増加は最終的に製品の価格に転嫁される事になると思いますが、短期的には契約が済んでいるものについては契約時の内容の影響を受ける事になります。

    2. コスト増によって業績に影響が出始め、投資家が未来の業績に対して懸念を抱くようになってしまう(すなわち株は売られる)

  2. TSMCの供給チェーンが混乱する可能性がある

    1. 関税の影響で生産者側の生産体制の見直しを迫られる可能性はあるかもしれません。発注者側は望む量を確保できない可能性もあり、代替生産先を探す必要が出て来るやもしれません。

  3. これらは全て米国企業に跳ね返ってくることになる。

今や世界を席巻している先端半導体はほとんど米国内で製造されておらず、台湾や韓国といったアジア諸国でありその製造装置や製造原料は日本も多く貢献しております。
無条件関税はこれらのサプライチェーン全てに影響を及ぼすものであり、個人的には米国にとって利益がある事とは到底思えません。ただ選挙公約でうたっている以上やらない訳にはいかないと思いますので、個人的に半導体関連は短期的に軟調な動きになるのではと予想しております。

半導体に限らずですがもう一人トランプ政権下での株式市場を楽観視する声に警笛を鳴らしているアナリストのコメントを抜粋転載いたします。

潜在的なマイナス要因

  1. 財政赤字と国家債務

    1. トランプ氏が大統領に就任すると、戦時下を除けば米国史上最高の循環調整後の財政赤字に直面することになる。 これは米国経済にとって大きな課題であり、米国債利回り、金利、全体的な流動性状況に影響を与える。 これはひいては、米国経済に大きな悪影響を及ぼす可能性がある。

    2. 原則として、トランプが提案する減税は財政状況をさらに悪化させるだろう。 トランプ氏は、政府支出を削減するための委員会(委員長はイーロン・マスク氏)を創設すると述べているが、トランプ氏のコミットメントや財政コスト削減を実現する能力には重大な疑問がある。 第一に、トランプ氏は政府支出の削減や財政赤字の削減に熱心だったことはない。 実際、彼の最初の任期中に歳出は増加し、財政赤字は拡大した。 第二に、どのような歳出削減案も議会を通過しなければならないが、その実現は極めて困難である

  2. 貿易政策のリスク

    1. トランプ大統領は、特に輸入品に高関税を課すことで、グローバリゼーションを後退させたいと表明している彼の主張は、こうした動きがアメリカの雇用と企業を守ることになるというものだ。 しかし、企業の収益性や米国企業の評価には大きな問題がある。

    2. サプライチェーンの混乱:貿易制限、特に中国製品に対する制限は、世界的な貿易戦争の引き金となり、米国企業が依存している複雑なグローバルサプライチェーンを深刻に混乱させる可能性がある。

    3. 生産コストの上昇:「再シェアリング」、すなわち、製造業の生産を米国に戻すことは、人件費と操業コストの上昇により、米国企業の生産コストを上昇させる可能性がある。 これにより、利益率が縮小し、外国産のインプットに直接または間接的に依存している多くの米国企業の株価収益率が低下することが予想される。

    4. インフレの上昇:輸入コストの上昇はインフレを促進し、米国の消費者の購買力を低下させる可能性が高い。 一部の労働者はリショアリングの恩恵にあずかるかもしれないが、大半の消費者は物価上昇に直面し、経済成長と企業の収益性の重要な原動力である個人消費に水を差す可能性がある。

  3. 厳格な移民政策

    1. トランプ大統領の移民政策に対するスタンスは、米国への移民の流入を厳しく制限するものである。 これは賃金を押し上げることで一部のアメリカ人労働者に利益をもたらすかもしれないが、おそらく企業の収益性を悪化させるだろう。

    2. 人件費の増加:移民政策が制限されれば、労働力の成長が鈍化する。 これは賃金を上昇させ、企業のコストを引き上げ、利益率を圧迫する傾向がある。 また、インフレを加速させる「賃金価格スパイラル」を引き起こす可能性もある。

    3. インフレ圧力:賃金が上昇すると、企業はコスト増をできるだけ消費者に転嫁し、インフレを助長する。 これは多くの消費者の購買力を低下させ、経済の一部分野の売上に悪影響を与えるだろう。 さらに、インフレ率の上昇は金利上昇につながり、収益期待の低下とPERの低下を通じて株価のバリュエーションを低下させる傾向がある。

  4. 中央銀行の独立性を尊重しない怖れがある

    1. トランプ大統領は、中央銀行の独立性に反する発言を数多く行っている。 これにより債券利回りが上昇し、米国債の調達コストが上昇する可能性がある。

    2. 金利の上昇:FRBの独立性が損なわれれば、金利が上昇し、債券や株価の下落を招く可能性がある。

    3. 市場の信頼性と安全性の低下:中央銀行の独立性は、先進国経済の安定の特徴である。 この独立性が損なわれるような兆候があれば、高水準の不確実性と信頼の喪失を引き起こし、債券市場と株式市場の両方に影響を及ぼす可能性がある。

トランプ大統領は「ビジネスに優しい」という漠然とした認識から、当初は米国株にとって有望に見えるかもしれないが、提案されている政策や性向を深く検討すると、非常に深刻なリスクが明らかになる

財政赤字、国際貿易、移民、連邦準備制度に関するトランプの政策はすべて、経済の安定と企業の収益性を脅かす可能性がある
さらに、トランプと大手ハイテク企業との敵対関係や、論争を好むトランプは、市場に悪影響を及ぼす可能性のある予測不可能な変数をもたらす。

おそらく最も重要なことは、トランプ氏の経済世界観が、米国企業の収益性とバリュエーションを歴史的な高水準に引き上げてきたグローバリゼーション・プロセスそのものに敵対的であることだ。
トランプ政権下でグローバリゼーションのプロセスが逆転すれば、米国企業の収益性、利益成長率、バリュエーションも逆転することが予想される。

従って、投資家はトランプ氏の大統領復帰が自動的に株価にプラスに働くと考えることには慎重であるべきだ。 トランプが勝利した場合、株価は短期的には上昇するかもしれないが、長期的な投資家は、彼の反グローバリズムの提案、移民制限政策、民族主義的な世界観、スキャンダルを起こしやすい個人的なスタイルが長期的に及ぼす影響を慎重に検討すべきである

2017年の時代と現在の違い

トランプさんの大統領としての評価を論じる場合に過去の功績が持ち出されますが、就任した2017年と2025年の世界がどう違うか少し論じてみたいと思います。

ドル指数:
約束された関税引き上げはドルの価値を押し上げる効果があります。
外国通貨は、関税引き上げ後もドルベースの価格がほぼ同じになるように調整される必要があります。

トランプ大統領が全面的な関税引き上げに踏み切れば、中国には60%、メキシコの自動車輸入には特別に高いレベルの関税が課されることになり、ドルはさらに上昇するでしょう。

2016年選挙時のICEドル指数は97、現在は104です

2016年~2024年のドル指数グラフ

SP500の株価収益率(PER):
2016年の株価はもっと安く、S&Samp; P 500は予想利益の16倍だった。
S&Pは現在、予想利益の22倍であり、多くの好材料がすでに価格に反映されております。
(企業の収益構造が8年前とは比べ物にならない程進化しているのも事実です)
同様に、10年債利回りは2016年の1.8%に対して4.4%、ICE米ドル指数は97に対して105である。 2016年の方が3つとも上昇しやすかったので、トランプ大統領の政策の方向性やスピードに失望すれば痛手を被る事になるやもしれません。

トランプさん自身の変化:
2016年の選挙時、トランプさんのサプライズ勝利に対する直後の反応は、株式先物の大幅な売り越しで、一晩で5%下落しました。
その後、債券利回りとドルは11月から12月にかけて急騰し、投資家たちは1月のトランプ大統領就任に備えた経緯があります。そこから8年、米国経済は大きく成長し時代背景も大きく変化しました。

世界の需要はAIが席巻し始め米国はAI産業に於いて先端を走る先進国家として君臨しており、世界経済は米国を中心に回っていると言っても過言ではないくらいに進化しました。

投資家さんたちは、トランプさんが今回何をするかは把握していると考えているやもしれません。 しかし彼らが政治を見極めるのが上手になったわけでも、トランプさん自身が予測しやすくなったわけでもなく8年の歳月がトランプさんをどう変えたかまだ知る由もありません。

もし11/6の相場がそこまで強い反応でなければこんな記事は書かなかったと思います。しかし株式4指数同時に過去最高値を更新、10年債利回りは当日朝の4.13%からお昼には4.45%まで上昇、30年債利回りは2020年のパンデミック以来1日で最高の上昇(バイデン大統領とトランプ大統領の両者による制御不能な財政赤字がいつまでも続くことを示している。)
そしてビットコインの史上最高値更新と、市場は予想以上に強い反応を示しました。

私はこれらの理由からこの上昇はトランプさんの政策の細部まで見ていない一時的反応だろうと解釈いたしました。その為自分でもう一度理解をする為にも論理的に順序立てて考え、バイアスをできるだけ排除し自身の相場観を一度リセットして相場を俯瞰的に見直そうと思いました。

ただし相場は多数派の意見が動かすものであり、私の意見や考えは市場心理に反する可能性は十分にあります事はご了承ください。
個人的には昨日の大幅な上昇や今回こうして記事を書いたことにより、冷静に相場をみる事ができそうですので現在の自身PFを少しリバランス調整する事にいたします。

まとめ

これまでトランプさんが選挙中の公約として掲げてきた点をまとめて現在の相場観に当てはめてみました。しかし下院は民主党が取るとか、半導体のような先端技術に対しての関税発動は行わないなどの政策が取られた場合は大きく変化してきます。

また実際に上記のような懸念事項が表面化してくるまでにタイムラグがあるとも思われ、相場自体が上昇しているうちは素直に乗る事をお勧めいたします。Technologyセクターの中でも米国内でビジネスを展開しているソフトウェア企業は半導体産業に比べ対中国へのエクスポージャーが少ない分、リスクが少なくなる為減税面の恩恵を受けやすくなると思います。

ただ反面インフレになった際の高金利や10年債利回りが5%を超える状態になった際は逆風になりかねませんので、マクロ経済の動向に注意を払う必要がありますね。

金融セクターはストレステスト分野の規制緩和、高金利による純金利収入の増加の影響が考えられトランプ政権下では強いセクターになると個人的には思います。昨日一番上昇したセクターが金融なので、高金利下恩恵を受けると認識されている証拠です。

あともう一つ自身が注目するセクターはIndustrialのElectrical Components(電力機器や部品)です。ここは今後米国内でデータセンターの建設が進み電力需要が各地で上がってくる際に大きな需要があるセクターだと思います。
実際昨日の市場を見てもPowell Industries(POWL)と言う銘柄が1日で18%も株価が上昇しました、決算も材料も何もないのにです。それだけ市場は電力系には注目しており、このセクターはトランプさんの関税影響が少ないと思われ減税恩恵や補助金などにも期待ができるかもしれません。

ここまで自分の意見を専門家のかたの見解を引用しながら述べてまいりましたがいかがでしたでしょうか? なるほどと思う部分もあったり、いや・・・そうは思わないかなぁという意見もあると思います。

実際どうなるかは私自身でも分かりませんが、市場が上がる為には相応の理由があってそれが力学的に何が原因なのかを想定できれば、当たらなくても最悪の状態は回避できる可能性が上がると思っております。

相場はたとえその時勝てなかったとしても負けなければ次にまたチャンスはやって来る・・・2020年、2022年と2度の大暴落を経験した自分が相場から実際に学んだ事です。
相場に長く居続ける事が次のチャンスに備える唯一の方法であり、その瞬間に決断できた内容で損益の度合いが変わりますので、どうしても上昇相場では熱くなってしまいがちです。

ですが勝っている時こそしっかりと地に足を付けて冷静に相場を見直し、立ち位置を見直す様心がけたいと思います。

めんどくさい話になってしまいましたが、私自身が気を付けている点でもありましたしnoteは自分が思っている事を素直に表現できるプラットフォームでもありますのですいません・・・。

最後までお読みいただきありがとうございました。みなさまにとって投資判断の一助となり、年末年始に渡って皆様が相場で利益を上げられる様お祈りしております。

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