生々流転
2010年の11月。
干支一回り前のことだったのですね。
地域の小学校で行われたアートの学校開放に私たちのNPOも参加させていただいていました。
なぜ、今そのことを思い出したかというお話。
私たち以外にもアーティストさんたちや、地域の大人、そして旅するムサビプロジェクト「旅ムサ」ちゃんたちも参加していました。
一週間くらい学校に通い、その間に色々な方とお話をしたり、制作の過程を拝見することもできとても楽しい時間をすごせました。
生徒さんが誰もいない多目的ホールでながーい紙を貼り、巻物にして絵を描いている旅ムサちゃんがいました。
私の丁度半分くらいの年齢の、確か美術の先生になりたいと言っていたSちゃん。
彼女は巻物にずっと空を描き続けていました。
その日、膝を抱えて泣いていたSちゃん。
「私の空の色がわからない」
ポロポロと涙を流していました。
「えっ。。。」
私は何もかけてあげられる言葉を持ち合わせていませんでした。
彼女は、自分の空の色を見つけることができたでしょうか?
12年たった今、小学校の美術の先生になっているでしょうか。
アーティストとして活躍されているのかもしれません。
お母さんになって、子どもの為に絵を描いてあげていても不思議はないですね。
東京国立近代美術館では今、「重要文化財の秘密」という展覧会が開催されています。
横山大観の描いた「生々流転」が展示されています。
展覧会の紹介をテレビで見ていて、
「あぁ、Sちゃんが描いていたのはこれだったのか。横山大観も泣いていたんだな」
長い時間かかりましたが、私の中であの話に決着がつきました。
「生々流転」見にいって、ください。
ながーい状態で展示されるのは数年に一度だそうです。
そして、大観先生が涙を流して(たぶん)たどり着いた作品を見てきてください。
重要文化財となった作品からは若き日の苦悩が伝わらないかもしれないので、Sちゃんのことをみんな思い出して。(まあ、検索するなら朦朧体かな)
なんか、おんなじ。
若かりし頃の巨匠も、Sちゃんも。
みんな、悩んで自分の空を探していた
ただそれだけの話。