詩を書こう!!

ある日、詩を書こう、と思いました。詩みたいな小説は書いてたんですけどね。 海望というペ…

詩を書こう!!

ある日、詩を書こう、と思いました。詩みたいな小説は書いてたんですけどね。 海望というペンネームで小説書いてました。 https://hametuha.com/novel/60852/ ここでは日々感じることを詩にしてみました。

マガジン

  • 紙芝居デリバリー・アーカイブ

    世田谷公園の紙芝居おじさんのいつもの紙芝居。コロナでなかなか公園で出来ないし、映像で子供たちに届けることにしました。音楽入りの大迫力の紙芝居ですよ!!

最近の記事

花束

花屋の若い男の人が 花束を持って歩いている あの花束はどこの誰に届けられるのだろう 恋人からの贈り物だろうか なにかのお祝いだろうか 女の人はそんなふうに 人生の華やいだ瞬間に花束を贈られる かくして自分などは 花束はいつも お別れのお疲れさまの花束だ この次に花束を贈られるのは 人生のお疲れさまのお別れに 写真が花に囲まれる時なのだろうか いやだいやだ その前に 誰か素敵な人に 花束を贈ろう 美しい恋する人に バラの花束を贈ろう 人生はそんなに儚くない その夢のために 真っ

    • 雨蛙

      窓ガラスをつたう雨粒を見ていると 楽しいことを思い出すことはない思い出すのは 若い頃の夢はひとつも実現しなかったとか あの時の深い後悔とか まだ切り傷も新しい 深い悲しみとか そうしてみるとあの雨蛙は いつも悲しくて憂鬱に違いない 悲しくてやりきれないと 夜の田んぼで鳴き声を上げ 雨を呼ぶのだろう 今日の私は雨蛙だ こんな日に家にはいられない 外はずいぶん激しい雨だ 傘をさして どこかの葉かげで雨宿りしよう 雨蛙のように 今日の悲しみを堪えるには きっとそこしかない

      • 爆弾

        私は座っている 自分の部屋の椅子に ひとりで 私は座っている クーラーの風をほんのり受けながら ぼーっと座っている 私は座っている 座っていることに 目的はない ほかにすることもなく うちには猫がいないから 相手をしてくれるものもなく ただ座っている 私は座っている こうして座っているうちに 今日のこの時間が過ぎてゆき 今日と同じあしたが来ることを なんの疑いもなく ただ座っている しあわせは たくさんの努力を積み重ねて はじめてやってくるのに ふしあわせは なんの前

        • 英霊

          今日は祖先の霊が帰ってくるそうだが ここは露店のタコ焼きの ソースの匂いでいっぱいじゃないか 浴衣の若い娘が連れ立って 団扇片手に笑い合っている こんなきれいな娘たちと なんの話も出来ないなんて いくつになっても少し 胸の奥が軋むのに 若くして霊になった連中は さぞかし悔しいだろうな 楽しげな喧騒が 蝉の声をかき消す かき消されたのは 蝉の声だけだろうか

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        記事

          グラジオラス

          見たことのない黄色い花が 花瓶にさしてある 緑いろの細長いのに 黄色い花がみっつよっつ 規則正しく咲いている 聞くと 「グラジオラス」という花だそうだ グラジオラス たいそう立派な名前じゃないか 着飾った貴婦人みたい名前じゃないか なんかこむづかしい哲学でも語りだしそうじゃないか どうやってそんな立派な名前をもらったんだい そんなに由緒正しい花なのかい さっきまでぼんやり見ていた黄色い花が すました横顔でこちらを見返す

          グラジオラス

          天井

          まったくたいくつだ 今日はなにもすることがない しかたなしに ごろっと寝転がる 天井が見える そうだ小学生のころも こうして寝転んで 天井を見つめていた 少し雨染みのある 合板の天井 天井の模様が 雲になり 波になり 動物になり 人間になった そして動物と人間の戦いが始まり 天井をビーム光線が飛び交い ぐわっだのぼわっだのの 戦闘の音を口ずさみながら 戦いはいつ果てるともなく 続くのだった あの時天井は 宇宙であり星座だった そこに長い物語が紡がれていった こうして寝転

          スイカ

          スイカはどう見ても あるひとつの惑星である この見事な球体は 自転と周回を繰り返して 美しく形成されたのだろう この波だった縞模様は 幾重の紫外線と気体の力で その表面に刻まれたのだろう このみっちりとした重みは その内部の燃え盛るマントルの重みである この完璧な惑星にざっくりと 包丁を入れるのはしのびないが いや今日も暑い こうしてまた ひとつの惑星の崩壊を 目の当たりにする

          街で猫を見かけなくなった 少しふてぶてしげに なにやらものをよくわかったような顔をして そのままぷいといなくなる あの街の猫たちに 出会うことはなくなった 街で猫を見かけなくなった 悟りすましたように 遠くを見つめて寝そべっていたのに 突然 高い壁の上に魔法のように飛び上がる あの猫たちは もうどこにもいない 街で猫を見かけなくなった ときどき気まぐれに こっちをじっと見て にゃあと話しかけてきて でもいつもそのまま立ち去っていく あの猫たちは もう夕暮れどきの幻のように

          生ビール

          「乾杯」 それはそうと 居酒屋の生ビールって どうしてこんなにまずいんだろう 出てきた炒め物も 体に悪そうに塩辛い となりでは4人の若い男が 若いやつ特有の妙にかがんだ姿勢で ひとりなんか片ほうの膝を立てて 例の斜め上で見かわす目線どうしで 小さな声で話している なんの話だろう こっちは今日はめずらしく だれもおやじめいた愚痴も 妙にまじめな話もしない まあこんな日もある そういえば自分たちが となりの若者ぐらいのころには どんなことを話してたんだろう もちろん思い出せも

          とんこつラーメン

          世界では今 あちらこちらで戦争があり たんさん人が殺されている それは知っているが わたしは今 とんこつラーメンを食べる 家を焼かれ家族を失い 泣いている子どもたちには申し訳ないが わたしは腹が減っているし ここのとんこつラーメンは評判なので 白いスープに沈む細い麺をすくいあげる 世界じゅうの人が こんな風にとんこつラーメンを食べられる 平和な世の中になりますように そんなものはただの偽善に過ぎないが うっすらそんなことを思いながら うまいとんこつラーメンを食べている 店の中

          とんこつラーメン

          川のテラスにて

          かんかんと日が照る川のテラス 日陰を探して 絵具を出し 絵を描きはじめる 前を何人もジョギングの人が走りすぎていく この暑いのになにも走ることない いやいや ジョガーたちからすれば あのじいさんこの暑いのに 絵なんか描いててまったく まあそうだよな 向かいの集合住宅のベランダには 洗濯物や布団が干され でも誰も人陰がない きらきらと日が照り返す川の上を がんがん音楽をかけたモーターボートが過ぎていく 半身裸の男3人 まったくマナーが悪いったら いやいや マナーなんてすぐに言

          川のテラスにて

          夏の公園

          こんなに暑い日の公園の 大きなクヌギの木の下には 100年も前に死んだばあさんと 50年も前に死んだイボガエルが わがもの顔に並んで座っている 「ああ本当に暑い暑い  こんな暑い日にはカラスも鳴かないねぇ」 「ああ、こんな日にはカラスも鳴かない」 「本当に暑くてたまらないよ」 「そんなに暑いんなら  とっとと成仏すればいいのに」 「成仏してもいろいろ面倒くさそうだからねぇ  極楽なんてタチでもないし  そいういあんたは何で成仏しないのさ」 「あたしはイボガエルだから  人間み

          蟻の目

          誰も知らないが 蟻のあの小さな目には 希少で高価なダイアモンドが含まれている だから蟻をどんどん捕まえて 目からダイアモンドを取り出せば 大金持ちになれる 蟻を養殖しても良いさ 蟻で金持ちになれるなんてすごいじゃないか でも誰もそのことを知らない 知っているのは蟻だけで もちろんそのことを人間に教えたりしない だから蟻は黙って歩く 下を向いて 目を隠しながら歩く 俺たちは忙しいんだ 人間たちの欲望なんかに構っちゃいられない 蟻はきっとそう言いながら 今日も黙って歩いているの

          トロフィー

          輝かしい栄光のトロフィー でもその足もとには 苦しみもがくたくさんの人の姿がある 黄金のトロフィーなんかぶっ壊して 苦しむ人たちに分け与えるべきだ みんなそう思うけれど そうなったらそうなったで 打ち砕いたトロフィーのかけらで わたしたちは引っ掻きあい 傷つけあい 血を流す 輝かしい黄金のトロフィー トロフィーはそのことを知っている 誰も自分を壊せない だから平気で笑って あんなに輝いている