不思議な話。
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不思議な話
渋谷のパルコ前のベンチに腰掛け友人を待っていた。友人は当時「キャッチィ」と呼ばれる仕事をしていた。
キャッチィーは“キャッチセールス”の略で、当時は総称として、駅前とかでナンパのように声をかけてセールスするそういう人たちの事を「キャッチー」と呼んでいたが、今では死語だ。
「キャッチーなデザインですね」とか「キャッチコピー」とか、キャッチーはそういう使い方が一般的だと思うが、20年くらい前はそういう言葉があったのだ。ちなみにイントネーションも「キャッチー⤵️」ではなく「キャッチぃ⤴️」だ。
キャッチーといっても実に様々で、友人は数十万円もする化粧品だか美容器具だかを売ってると言ってたが、詳細は覚えていないし、もちろん興味もない。しかし、どう考えても渋谷の街の中で若いおにーちゃんが女性に売りつける化粧品なんて明らかに胡散臭いのだが、毎日毎日何百人に声をかけているうちに、たまにそれが売れるのだから世の中は不思議なところだ。
そう、不思議なところだ。
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今回話す不思議な体験から数年後に、俺は数人の友人から言われた。
「ねえ、昨日新宿にいたでしょ?声かけたのに黙って行っちゃったけど、急いでたの?」
と。
「え?いやいや、昨日は家にいたよ。どこも行ってないよ」
「うそだー!間違い無いから!そんな嘘つくって…、なんかあやしいことでもしてた?」
「してねーよ!なんだよそれ!」
そんな会話をして、数ヶ月後、別の友人から、
「渋谷のタワレコで見たよ〜。話しかけたけど気づかなかった?すぐにいなくなっちゃったから」
と言われ、また数ヶ月後に、
「池袋のマックにいたでしょ?なんで無視したの?ひどくない?」
や、
「銀座でホコ天歩いてたよね?名前呼んだけど無視するなよ〜」
最初に断っておくが、これらを、中には苦情のように伝えてきた友人たちは、まったく別の繋がりの人である。バイト先、音楽仲間、遊び仲間など。
そしてこれらに対して、俺は一つも心当たりがない。俺自身は家にいたり、例えば池袋のマックにいたと言われた時間、俺はバイトのシフトに入っていたという、れっきとしたアリバイがある。
初めは単純に「ずいぶんと俺にそっくりな人がいるもんだなぁ」と思っただけだったが、立て続けに言われるとさすがに薄気味悪くなった。
顔、髪型、背格好、仕草、表情。完全に俺そのもので、服装も詳しくは確認していないが(確認しようないが)、俺が普段着ているような服装だったという…。
ドッペルケンガー、と呼ばれるものが、この世には本当にいるのかもしれないと思った。そして、それと会ってしまったらどちらかが消えてしまうと聞いたことがあるので、密かに会うことを恐れていたし、会ったらとにかくそいつに勝たないとならないと思っていた。
だが、立て続けにドッペルケンガー目撃情報を耳にしたのは、俺が25歳くらいからの2年ほどの間だが、21歳の頃に、渋谷のパルコ前でそれと似たようなことがあったのだ。ひょっとすると、それが一連のドッペルケンガー(?)目撃例のヒントにつながるかもしれない。
*
「水戸、…くん?」
突然、見知らぬ女から声をかけられた。20代前半の、いかにも渋谷あたりをうろうろしてそうなチャラい、ケバケバしい顔の化粧の濃い女だった。同じような人種の友人と思しき女と二人だった。
「ねえ?やっぱりそうだ!水戸くん!」
初めは、俺に話かけていると思わなかったので、俺は頬杖ついたまま、街ゆく人を見ていた。その女が美人とか可愛いとかだったらもっと食いついたのだろうけど、残念ながらまったく好みではなかった。
「友達?」
もう一人の女が、最初に話しかけてきた女に言う。
「うん。ちょっと待ってて。すごい大事な話なの。ねえねえ?」
そしてまた俺の方を見る。
「なに?俺のこと?」
と、さすがにしつこいので答える。
「水戸くん!元気?どこに行ってたの?ずっと連絡とれなくてみんな心配していたんだよ?」
女は俺に近づいて、少し泣きそうな顔をして言う。どうやら「水戸」という男と勘違いしているようだが、本当に心配をしていたそうだ。
「いや、あの、俺、水戸とかって人じゃ無いんですけど?」
と言った。水戸なんて、水戸納豆か水戸黄門くらいしか聞いたことない。
「あはははは」女は突然笑い出した。「もう、ふざけないでよ〜」
まだ勘違いしているようだ。
「ねえ?マジでさ、どにで何してたの?ほんと、みんな心配してたんだよ?突然連絡つかなくなったから」
真面目な顔で俺を問い詰めるが、
「いや、だから知らねーって。人違いですっって!」
と言うしかない。水戸くんって誰だよ?
「ちょっと!ふざけるのもいい加減にしてよ!間違うわけないじゃん!」
女は声が大きくなる。
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言葉を紡ぐ、心を繋ぐ
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