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“わたし”という神話 第4話「堕天使降臨」

第1話   天地創造
第2話   人間の誕生
第3話   闇の誕生

第4話   堕天使降臨
第5話   悪の誕生
第6話   広がる恐れ
第7話   光と闇
第8話   偽りの光
第9話   宗教の誕生
第10話  古代の叡智の破壊
第11話  神になる堕天使

4 堕天使降臨


 闇の天使が重力の重たい世界に落ちた時に、あらゆる宇宙から、かつて人間だった者たちの魂がそこに落ちていった。

 またある者は、堕ちた魂を救おうと、自らその次元に入っていく天使に順ずる魂もあった。

 我が子供たち人間は、この宇宙で唯一、“わたし”と同様に『創造行為』ができる存在である。

 我が子供たち、人間の自由意志は、低い次元に堕ちたとしてもやはり何よりも強いものだった。

 子供たちは時間と重力の制限ある星の中で、重力に縛られない「祈り」という時間を作り、「瞑想」という行為を通して大いなる神、わたしとの繋がりを忘れなかった。神との交流は、どんな場所でもできるのだ。

 重たい世界の惑星では、大地の活動も活発で、火山や自身、津波、洪水などの自然の猛威で命を落とす人間もたくさんいた。

 しかし子供たちは肉体を去る時は潔く脱ぎ捨てて、わたし、神の懐に還っていった。

 その惑星の中で、堕天使の計画はほとんど機能しなかった。

 人間たちと神との絆が強く、祈りと瞑想行為が行われる限り、憎しみや破壊への願望は人間たちの中に起きなかった。彼らは調和し、満ち足りた感覚を自らの力で獲得していったのだ。

 そして闇の天使自身もまた、この惑星の重たい重力の中で具体的に「滅び」を創造するために、何をして良いのかわかっていなかった。

 そもそも堕天使が望まなくても、自然に生命は光から闇へ、つまり生成から消滅という、闇本来の働きが行われていたからだ。

 しかし、その重たい世界で太陽が何万回、何億回と惑星を回る中で、堕天使は人間たちの世界を観察し、徐々に自分のやるべきことがわかってきた。

 ついに人間たちの中に、自らの楽園に飽きてきた者たちが現れた。

 それは「退屈」という感覚だと彼ら自身も認識はできなかったが、ほんの心の奥底に、繰り返される世界への“虚しさ”を感じる部分があったのだ。その虚しさは心の中に一点の影を生み出した。

 堕天使はわずかな心の影も見逃さなかった。

 なぜなら、その影は自分と同類だからだ。

 堕天使はすかさず彼らの中に入り込み彼らの内面に「差」を植え付けた。彼らが感じた虚しさは、神との「差」に対する虚しさに変わった。

 そしてそれは常につながりを持っていた神との“分離”だった。

 神と、人間。

 自分と、自分以外。

 これまでと、これから、という分離。

 分離の意識は堕天使の意志と共鳴したのだ。

 人間にとってのに生は、自身の魂の一部の生であることを知っていた。そして、魂は肉体を脱ぎ捨てても、また別の肉体として体験するので、一つの惑星で一つの生は、ある種のゲームのようなものだった。

 だが、それが心の中に密かに植え付けられた「差」という、小さな小さな種の放つパワーが、彼らの虚しさを徐々に徐々に強めていった。

 人間たちは虚しさを埋めることを考えた。

 常に満ち足りていたが、もっと強い満足感や充足感を得るために、彼らは時間の中に不満と不足の感覚を創造した。

 人間たちはすべてを平等に愛していたが、特定の仲間を深く愛する気持ちをより感じるために、分離し、恨み、憎しみ、嫌う感情を生み出した。

 人間たちは常に喜びと至福の中にいたが、より多く喜び、快楽を味わうために、彼らは生の中に不快感と怒りを創造した。

 対極は宇宙の原理であり、重力の重たい星では、それらの創造は容易くできた。

 人間たちの心はどこまでもどこまでも対比し、枝葉が分かれるように、分離した感覚が増えていった。

 堕天使の撒いた種は、ようやく芽を出し始めた。

 しかし、堕天使は焦らなかった。

 堕天使は計画を遂行するためには、どんな努力も忍耐も厭わなかった。だからじっくりと、彼らが分離していくのを待った。

 人間たちの心の波動が下がるたびに、惑星自体もその波動を弱め、宇宙の中で孤立していった。惑星は人間たちの重たい波動に呼応するように、身震いしたり、マグマを放出させながら、重力を重たくしていった。その度に多くの人間たちが命を失った。

 宇宙にそのような惑星がいくつか生まれた。その中の一つに、自分達の惑星を「地球」と呼ぶ星があり、堕天使はそこでは大いに自らの創造性を行使する段階に入ったことを理解した。

つづく

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