“わたし”という神話 第11話「神になる堕天使」 第一部完結
第1話 天地創造
第2話 人間の誕生
第3話 闇の誕生
第4話 堕天使降臨
第5話 悪の誕生
第6話 広がる恐れ
第7話 光と闇
第8話 堕天使による支配と偽りの光
第9話 宗教の誕生
第10話 古代の叡智の破壊
第11話 神になる堕天使
11 神になる堕天使
堕天使は満足しつつあった。
この星にはもはや、自分に逆らえるものなどいないことがわかっていた。
すでに堕天使自らが指揮したり、指導することもなく、神官長時代に育てた優秀な部下たちが、大衆を支配する仕組みを考え、実行していた。
それから時代は何百年、千年、二千年と移り変わり、やがて国を統治し実質的な運営をするのは「王」ではなく、大統領や総理大臣という肩書きに変わった。支配するのは王という武力装置に代わり、金融という「システム」が世界を統治し、それを民主主義という光を被せて支配させた。
金融の力は強かった。
金を通貨として使っていた時代から、金を使わずに通貨発行をする権限を確立し、ある血族が中央銀行を牛耳るようになった。その血族は特定の宗教を信じ、長い間「王政」により虐げられたきた者たちであり、他の宗教や人類全体を憎んでもいた。
堕天使はその者たちに金融の仕組みと支配をさせた。
やがて政治システムより金融がパワーをまし、世界は政治ではなく金融によって全体的に影響し合うようになった。
国の権力は表向きは政治にあったが、実際は金融に権力が集中し、金融を支配する者たちが圧倒的な権力を持った。しかし、そこは堕天使のアドバイス通り「表には出ない」ことで、金融の支配をしている者が実際誰なのかは、民衆にはわからないようになっていた。
大きな戦争も何度があった。その中でより強力な兵器が生まれ、スイッチひとつで地球そのものを破壊しかねない装置が生まれた。軍事技術から、テレパシーを使えなくても、世界中で瞬時に通信し、情報を共有できるネットワークも生まれた。
民衆はそのネットワークのある便利な社会で、自らを自由だと思い、自分の意志で動いていると思い、何も知らず、無知なままで蠢いている。
時代が進んでも、堕天使の人間支配の根本とも言えるのは、人々を自分で考えることのできない無知に貶め、全体的に破滅へと導くことは変わりなかった。
堕天使は人々を不健康にして、脳の機能を低下されることにも成功した。
簡単だった。食品の中に脳の発育を阻害するものを混ぜ込めばいいのだ。味覚を刺激し、美味しいと思えば民衆はなんでも食べたし、体に良いと謳えばなんでも信じこんだ。
作る方は、それらを製造し販売するほど、安易な利益が生まれるような仕組みを作った。そもそも、自分達が毒物を製造し、流通させてることに気づいていない。
また、医療という名のもとに、民衆の健康を奪い、病院通いと薬品依存にもできた。
予防接種と称して、中には脳機能を低下され、免疫を下げる物質を混ぜ込んだ。そして、それらの医療行為を実施する側も、何も知らずに、むしろ自分達が良いことをしていると思っている。邪教徒として、善良な人々を無知な大衆に殺させた方法と、原則は変わっていない。無知な人々は、自らの無知無明の元に築き上げられた正義と良心で、土を汚し、海を汚し、森林を破壊し、そして人々の命を奪うのだ。
もちろん、堕天使の部下として近しい者たちはそれを知っている。彼らはかつては神官だったが、今は金融の支配する血族たちだった。
彼らは自分達の菜園で採れた、自然のままの健康的な食品を食べている。病気や怪我にも薬品は使わず、自然のハーブや漢方薬を使うので、彼らはとても健康で長寿だった。その知恵は堕天使が教えたのだが、それは古代の叡智を持った人々が行っていたことだ。人間を殺す方法も、最も生かす方法も心得ている。
食品や医療と同時並行して、民衆の退化した脳に、テレビやインターネットで、安易で興味の引くコンテンツだけを見せて、物事を考えられなくさせることにも成功していた。
民衆はますます自らの人生や、生命の意味や、魂のことを考えず、与えられた偶像を崇拝し、本来の宇宙を創成した大いなる存在のことを考えれなくなった。祈りの本質的な意味を知らず、偶像や科学を信じ、その通りに生きることで満足していた。
地球の波動は下がり、エネルギーが枯渇していくのを堕天使は感じていた。
しかし、まだ人類全てを滅ぼし、地球を破滅させるには早い。まだまだ人間たちに、地球を破壊させてもらう必要があった。
そのために無知な人々が必要だったが、さすがに地球上に人口が増え過ぎて来たので、堕天使は従順な部下たちを使い、世界的な感染症を広げ、その予防接種剤に有害物質を混ぜ込み、人工を削減することも始めた。
以前は人口が増えると戦争を起こし、大規模なことをやって減らしたが、今は暴走した無知な指導者が核兵器などを使うかもしれないので、大きな戦争へ誘導することはやめて、確実な効果のある薬品での削減方法を使っている。
完璧だった。
堕天使が長い長い年月をかけて行って来た支配は、完結しようとしていた。
水と大地は汚れ、森林は失われ、生態系は維持できなくなりつつある。
古代の叡智は廃れ、人々は真実に無関心になり、まもなく大災害や食糧危機を起こし、その救済方法として、肉体を捨てさせ、意識だけをネットワーク世界に閉じ込めることになる。
現実の肉体に飢えと苦痛と恐怖を与え、意識をネットワークに送り込むことでそれらのあらゆる苦難から解放されると謳えば、民衆の喜んで自らを差し出すだろう。そう、あくまでも彼らの意志でそれは行わなければならない。
しかし、意識を閉じ込めてしまえば、彼らは完全に、かつて神と呼ばれる大いなる光と共に生きていたことを忘れ去り、叡智を思い出すことは無くなるだろう。
そして堕天使はついにそこで新たな地球を創造する。
堕天使は創造者になるのだ。そして堕天使は神になる。大いなる神との“差”を埋めるのだ。闇が光を奪うのだ。
第一部 完
あとがき
この連載は、小説ではなく、淡々と出来事だけを述べる形式の、寓話に近いかもしれません。
宇宙創生から始まる壮大な物語。読んでいただいた人のインスピレーションになれば幸いです。
「わたし」とは、「I am」であり、すべて。大いなる「わたし」から分化していった世界と、現在の地球の様子へと歴史書のようなものでした。
第二部は、現在を生きる、人としての「わたし」から始まる物語になります。
補足
10話からだいぶ時間が空きました。アップしたと勘違いしていて、「最終話はどうなったんですか?」と人から言われて、「下書き保存」されていたことに気づいて、今さのアップとなりました。
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