ある二人の男の物語
⭐︎12月19日(土)
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お笑い芸人の「コージくん」と「ミチオくん」は有名人だ。二人ともピン芸人で、同時期にブレイクし、日本でその名を知らぬ人はほとんどいないと言えるくらいの国民的な芸人だった。
コージくんとミチオくんは、売れる前から友人であり、ライバルであり、お互い切磋琢磨し合い、情報交換をして、お笑いについて、芸について、タレント活動において、芸能界について、議論をかわし、勤勉に学び、先輩たちからもいつも教えを受けていた。
二人は苦労が実り、人気芸人になり、テレビ業界では欠かせない存在となった。
そんな彼らがお茶の間に旋風を起こしてから10数年の月日が流れた。
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コージくんはずっとテレビに出続け、趣味であるカメラを本格的に学び、写真展を開き、芸術性も評価が高く、どんどん評価は上がるばかり。そして、旅行が好きなコージくんは、全国の回った先のグルメを、個人的に、だが、面白おかしく紹介するユーチューブ番組を何年も前からやっていて、ここ数年、その動画も人気になり、毎日アクセス数が数十万となっていた。むしろテレビよりも、自身のオンラインサロンや、斬新なアイディアで、お笑いのみならず、若者のカリスマ的存在となっていった。
一方、ミチオくんはこの頃はテレビで見ることもほとんどなく、時々バラエティ番組の大勢の芸人の中で見かけるくらいで、十代の若者などは、もはやその名前すら知らない存在だった。
今年からユーチューバー活動を始めたが、あまりにも同じようなタイミングでユーチューブを始めた芸人が多すぎて、あまり話題にもならず、コンテンツもテレビでやっていた企画ものが、ずさんになっただけに過ぎなかったので、あまり面白みも、個性もなかった。
どうして、ライバルで友人同士だったコージくんとミチオくんが、これほど明暗をわけたのか?時間を遡ろう。
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二人が有名になった頃。
それまで冷たかったテレビ局のディレクターや芸能事務所の人間たちが、掌を返したがごとく優しくなり、ちやほやし始めた。どの局も、コージやミチオに出演してもらいたかった。それまでは仕事を選べなかったが、今は気に入った仕事を選ぶ立場だった。
接待があり、賄賂まがいのことが横行する中で、コージはあくまでも「やりたい仕事」を選び、ミチオは「ギャラの高い仕事」を選んだ。
二人とも、忙しく過ごした。お互い会うことはなくなった。めまぐるしくすぎる仕事仕事仕事の中で、睡眠時間もろくに取れない日もあった。
しかし、その中でコージは、空いた時間には本を読んだり、映画を観たり、違う芸人のDVDを観て、趣味のカメラも合間合間に楽しんで行った。カメラを通して、お笑いやテレビ業界以外の人たちの接点をたくさん持ち、いろんな会話をした。コージはとにかく、人々との交流や会話の中で、彼らが何を求め、何が足りないのかを見抜き、それがネタにもなり、次の戦略に役立った。
しかしミチオは、朝から晩まで仕事をしててから、毎晩後輩たちや、従うテレビ局のディレクターたちを引き連れて繁華街に繰り出し、明け方まで酒を飲みどんちゃん騒ぎをした。後輩たちには気前よくおごり、どんどんミチオの元には人が集まった。
まとまった時間ができると海外旅行に行き、とにかくいつも派手に、大勢の人たちに囲まれて過ごした。
ミチオと対照的に、人付き合いの少ないコージは一時期完全に孤立し、後輩たちや先輩たちからも疎んじられたが、それは気にせず、自分の芸を磨き、趣味を楽しんだ。時々、芸人の枠を逸脱したことをやるので、インターネットで炎上し批判を受けたりもしたが、逆に新たなファンを獲得し続けることになった。
テレビでは、ミチオの話すことやリアクションが、デビュー当時からまったく変わらず、いくつかの流行的なギャグもあったが、どんどん新しい若手が現れて、明らかに飽きられていった。視聴数が取れないので、テレビ側はミチオに出演を頼むことは減っていった。
しかしコージは、常に新しいことをチャレンジして、定期的にSNSで炎上を起こしたり、テレビに飽きていた若者中心に、人気は上り続けた。話の内容は多種多様に富み、そのすべてにユーモアを交えてわかりやすく語ることができた。一方ミチオの話は一辺倒で、ずっと同じギャグやネタを使い回し、新しい事にチャレンジしても浅はかで中途半端なので、何も話題を生まなかった。
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二人の名前を知る人は、日本に多くいる。しかし、明らかに仕事の量、人から必要とされている量は違った。
コージとミチオ、どちらが「幸せ」に生きているのかを、想像してはいかがだろう?
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芸人という、極めて異端な人のストーリーをだが、この話には誰しも、幸せに生きていくための大事なヒントが含まれている。
物語、なのでこれ以上説明する必要ない。ここで終わりだ。この物語で、あなたが何を感じるか?が重要なのだ。
しかし、あえて補足的に解説をしよう。
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