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“わたし”という神話 第8話「堕天使による支配と偽りの光」
第1話 天地創造
第2話 人間の誕生
第3話 闇の誕生
第4話 堕天使降臨
第5話 悪の誕生
第6話 広がる恐れ
第7話 光と闇
第8話 堕天使による支配と偽りの光
第9話 宗教の誕生
第10話 古代の叡智の破壊
第11話 神になる堕天使
8 堕天使による支配と偽りの光
堕天使は、悪はその破壊と暴力の力を持って、人間を支配してきた。実行支配するのは、もちろん堕天使に乗っ取られ、取り憑かれた人間たちの肉体による。
しかし、悪によって抑圧された人間たちは必ず悪を行使する人間たちに報復をしたり、また、抑圧された中からも、宇宙根源の「光」を思い出す人が現れ、それが悪を倒した。
どんな強い破壊と暴力を用いても、その分人間たちも強くなった。
直接自分が乗っ取った人間とはいえ、報復に合うので危険だ。転生には労力を使うからだ。
なので途中から堕天使はさらに別の人間を立てて、その人間たちに実行支配させた。催眠術のようなものが効く相手ならはそれで操り、特権階級を与え、利益で誘導したりと、それは比較的簡単だった。
その操り人形のような代行役を、大衆から「王」と呼ばれた。
しかし、それでも暴力による支配はまた反発を生み、特権階級の「王」を定期的に入れ替えねばならない。
堕天使はそこでやり方を変えた方が良いと考えた。
王を使って民衆を暴力的に支配させ、王を入れ替えながら、長い時間をかけて、一番良い方法を思いついた。
それは堕天使自身を光に偽せることにしたのだ。光の人々が“好き”な、光を利用することにした。
そこで悪は初めて、地上で“光の衣”を纏ったのだ。
闇の堕天使は愛と正義という言葉とイメージを作り、その中に隠れることにした。
それまでの支配は、特権階級の王が暴力的な力を使って人々を恐怖によって行われた。
しかし、新しい支配方法は違う。
これまでは恐怖の象徴だった王たちにも、自身を正義として振る舞わせ、愛という言葉を使わせ、支配民へ「あなたたちのため」と、王であるための理由を信じ込ませた。
それと同時に、忘れてはならないことがある。民衆へ「恐れの未来」の情報を与えることだ。
大衆がこれまで何度も味わってきた飢餓。天変地異。病気や怪我、そして死を、それが起こる前から想像させ、痛みと苦しみのイメージをを与えた。
人々は、まだ見ぬ未来に不安を抱いた。
そしてそこから逃れるための方法としての“愛”を、堕天使、そしてその傀儡である王は人々に解いたのだ。
つまり、王による愛の支配があれば、恐れの未来はやってこないのだと。王が飢餓や戦争から人々を守り、天災から救済するのだと。
これは言ってしまうと、自分で火事を起こして、火事から人を救出して謝礼をもらったり、自分で井戸に毒を流して、井戸の水が危険だから、こちらの水を飲みなさいと救いの手を差し伸べるようなものだ。そして、その水にも薄い毒を混ぜてある。
しかし、不安に怯えていた人々は簡単に信じ込んだ。
堕天使に操られた光の衣を被った王を、愛と正義の人と信じて疑わなかった。
そしてここからが仕上げだ。
堕天使は人々を特定の場所に閉じ込めることに成功した。
その方法はこうだ。
本来誰のものでもなかった大地に『境界線』を引き、そこで偽りの愛と光を以て、人々の信頼を得る。
武器や兵力という暴力装置は保ち、時折行使して威力は見せておく。
そこで民衆にこう伝えるのだ。
「あなたたちは自由です。私たちは愛を以って、あなたたちをこの境界線の中で守ります」
光を纏った王はそう言って、これまでずっと支配してきた人々に宣言したのだ。人間たちの自由を認め、自由意志を認めた。
ただし、限られた境界線の中でだけ…。
人々は王の「自由」という名の隠れた支配に感謝した。
これで抑圧がなくなり、自由に生きていけることを喜んだ。
だがこれだけでは王は大衆と対等だ。あくまでも、民衆と支配者には「差」があり、支配者には特権的な立場と、格差が必要だった。
そこで民衆から「税」というものを集めることにした。
しかしこれまでのように、暴力や恐怖を使って強制的に奪うのではなく、民衆の意志によって「収めさせる」という手法だ。
そのために堕天使は民衆にこのようなことを伝えた。
「境界線の外には、危険がたくさんあります。かつての我々のように、暴力を使い、人々を力で支配しようとする凶暴な悪がいます!しかし、我々はあなたたちをこの境界線の中で守ります。そのために、あなたたちは我々の軍を維持し、城壁を作るために協力が必要です。皆で平等に税を払い、その力で我々は高い城壁を作り、武器を作り、軍を養います。ただし、それはあなたたちの自由です!何度も言います。あなたたちは自由なのです。だから無理にそれをやれと言いません。しかし、この境界線の中ではルールです。たくさんの人々が暮らし、皆で防衛するためのルールです。そのルールが守れない人は、ただここから出ていけばいいです。それも自由です」
人々は考えるまでもなかった。
外の恐ろしい世界に出ていくなんてできなかった。そこには何よりも恐ろしい暴力と痛みがあり、そして死が待っている。
それよりも、この中で働き、その中から税を納めれば、守ってもらえるのだ。それさえ行えば、我々は自由なのだと…。
堕天使はこうしてまんまと、人々を支配した。しかし、今度の支配は、愛と自由という名のもとの支配であった。
人々は支配されていることすら気づけなくなった。
むしろ恐ろしい外的から守られている愛であり、友好の証だと思った。なぜならその様子は光そっくりなのだ。王である支配者自身も、それを「良いこと」だと思っていたので、悪意がない場合も多かった。
だから民衆の中にいた一部の“光に目覚め始めた人々”も、なかなか気づけなかった。
ただし、堕天使はルールを乱すものには容赦はしなかった。
税を払わぬものや、自分達の支配を脅かすものは、それこそ「悪」とレッテルを貼り、厳しく取り締まったが、民衆もそれが正しいことだと思うようになった。
おかげで、これまでのように民衆による反発がなくなった。
偽りの光を纏うという堕天使のアイディアによる支配により、世界は堕天使の求める理想の姿に大きく近づいた。
つづく
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