「エスカレーター・テレポーテーション」　実話の不思議な話

最近起きた、ちょっと不思議な体験を書かせていただきます。

もちろん、これを読んでもあなたは「それはただの勘違いでしょ？」とか、「何かの間違いでしょ？」と思うかもしれない。

それは仕方ない。なぜなら、俺自身も、この不思議な出来事について、そういう疑いの思考はあるからだ。しかしそれでも、あまりに納得が行かない事だったので、書き記しておく。

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都内某所に買い物に来ていた。デパート、というか、５階建ての複合商業施設。

買い物の前に、カラオケボックスで発声練習をして汗を流し、その後、カフェのテラス席でアイス・ルイボス・ティーを飲んで読書をした。（最近、コーヒーやカフェインが苦手になってきた…）

読んでいた本は、小説だ。もう何年も前に読んだ本だが、何気なく本棚を見ててふと手に取った。文庫本なので、ちょっと出かける際に、バックに忍ばせていく。

物語は、読む前はほとんど覚えていなかったから、ワクワクする気持ちで読み進めることができた。満足な気持ちで、ちょうどキリの良いところで本を閉じ、アイスティーを飲み干して、カフェを出て買い物へ行くため、その建物に入る。

建物に入った瞬間、冷房に包まれる。クーラーが効きすぎている場所は好きではないが、３５度の猛暑の街から、冷房のある場所に入った時の爽快感は気持ちいい。

俺は１階からエスカレーターに乗った。３階にある自然食品売り場に用事があったのだ。

エスカレーターのステップに、足を乗せたとほぼ同時くらいに、ポケットのスマートフォンが振動した。妻からのLINEだった。

俺はエスカレーターを運ばれながら、その場でLINEを開く。内容は、買い物についてだった。『地下のスーパーに行ったら「〇〇を見て、良さそうだったら買っておいて』と、主婦から出先の夫へのよくあるLINEの文章だろう。

俺は「OK」を示すスタンプを一つだけを送信し、すぐにアプリを閉じてスマートフォンをポケットにしまった。

目指す３階に向けて、２階にたどり着くと、体を反転させてくるりと次の登りエスカレーターに足を踏み入れる。この動作に説明はいらないだろう。階段やエスカレーターとは、必ず踊り場のような場所があり、そこでなんらかの螺旋構造になる。

しかし、不可解なことに気づいた。登りエスカレーターに登る直前に「４」という数字が、足元の踊り場の金属部分に見えたのだ。

（４…？）

１の次は、２。一階の上は二階。うん。それ以外“ありえない”、だから何かの見間違えだろうと思ったが、エスカレーターが進む先に見えた景色は、２階の景色ではなく、まったく見慣れない景色になった。

エスカレーターで運ばれたそこは「５階」のフロアだった。

俺はこの施設には何度も来ているが、実は５階にはほとんど来たことがなかったので、あまりに見慣れない光景に驚いた。

俺は、フロアに降り立ち、周りを見渡す。階数を示す足下に書かれた番号はもちろん、フロアマップまで確認した。

間違いない。そこは５階だった。

俺は３階に行くために、１階からエスカレーターに乗った。よく覚えている。LINEを開き、短い文章を見た。記憶は鮮明にある。

念のため、スマートフォンを取り出し、LINEを確認すると、記憶通りだ。最後に俺の送ったスタンプに、既読マークがついている。

１階からエスカレーターに乗り、２階、３階と、踊り場で身を翻らせながら、俺はこのLINEのやりとりをしていたのだろうか？スマートフォンの操作に夢中になり、３階を乗り過ごしたのか？

おそらくここまで読んで、

「どうせあなたがぼけっとしてて、通り過ぎたんですよ？」

と、あなたも思うかもしれない。うむ。俺も、そう思う。

実際によく、歩きスマホをして嫁に注意されたり、ぼんやりして道を間違えたり、目的地を通り過ぎるなんてことはよくある。

しかし、その時俺が取った行動といえば、スマートフォンをポケットから取り出し、LINEアプリを開き、短い文面を読み、スタンプを返し、再びそれをポケットにしまう。それだけだ…。SNSを開いたり、仕事のメールやメッセージも見ていない。

その作業の間、わずか１０秒程度ではなかろうか？その間に、１階から４階にエスカレーターが移動する時間と、同等の時間がかかったというのか？

大胆な仮説、というか、荒唐無稽で、気違い沙汰の仮説だと、自分でもよくわかっているが、俺は一瞬で、なんらかの力が働き『瞬間移動』した、と思思っている。