私が「持続可能なエコハウスをつくる」と決意するまでのこと。
今回は、タイトルにある「持続可能なエコハウスをつくる」という決意に至るまでの、私の色々な出会いといきさつについて書いてみたいと思います。
地球環境セミナーで衝撃を受ける
あれは1996年夏のことでした。兄に誘われて「地球村」の高木善之さんの地球環境セミナーを聞く機会がありました。
人間の活動により地球環境がここまで悪くなっているという事実を突きつけられた私は、大きな衝撃を受けたのを覚えています。
しかしその時は、ただ衝撃を受けただけ。自分ひとりが地球環境のために何が出来るか?その方法が浮かぶことはありませんでした。
私の人生を変えた”4R”デザインとの出会い
1997年5月、仕事で欧州に2週間ほどの出張がありました。
その途中、スゥエーデンのデザイナーからのオファーがあり、急遽ストックフォルムのデザインスタジオでデザイナーから、エコデザインを基本にしたプロダクトデザインの提案を受けることになりました。
デザイナーは、ヤン・ドランガーさん。イノベーターの創立者の一人で、
70年代世界中でヒットしたイノベーターの椅子Stunsをデザインした本人です。素晴らしいプレゼンテーションで、この製品はのちに、エアソファーとして商品化されました。
その時、ヤン・ドランガーさんから初めて聞いた環境のキーワードが4R。これが、私の人生を大きく変えたキーワードです。
1R:Refuse(やめる)
2R:Reduce(減らす)
3R:Reuse(再利用)
4R:Recycle(再資源化)
日本では2001年以降に最初のRefuse(やめる)を抜かした環境省の政策3Rで知られている環境キーワードの原型であり、数字が小さいほど環境への負荷が小さく、小さい数字順から行動すると言われています。
だからこそ1RのRefuse(やめる)が実は一番重要であると私は考えています。
日本において当時Refuseを抜かした政策を取られたのも「やめる」という言葉にネガティブなイメージが持たれたからかもしれません。しかし、一度現状を否定して、新たなやり方を模索すると考えれば、1R(Refuse)はとてもイノベーティブなことではないかと私は思います。
無印良品のプロダクトデザインに4Rを取り入れる
私はプロダクトデザイナーとして、どこかでこの4Rをデザインコンセプトに取り入れたいと考えていましたが、その最初の機会となったのが良品計画から依頼されたハンガーのデザインの仕事でした。
1R Refuse やめる:プラをやめて再生可能なアルミを基本にする
2R Reduce減らす: 多種類のハンガーの要であるプラパーツは最小でかつ1種類のみにする
3R Reuse 再利用:要となるパーツを簡単にリペアできるようにする
4R Recycle 再資源化:プラパーツとアルミの分別を簡単にできるようにする
このコンセプトは販売時には表に出さなかったものの、ユーザーが使い続けることでこれらのコンセプトの意味や価値を理解してもらえたと思っています。このMUJIアルミハンガーは、2001年 ドイツの代表的デザイン賞であるiFデザイン賞のエコロジカルデザイン部門最高賞と製品デザイン賞、日本のGOOD DESIGN賞を受賞する事ができました。またフランスの世界のハンガーデザイン「CINTRES HANGERS」の本でも紹介され、私の代表作の1つとなりました。
同じように、MUJIの掃除用品シリーズのコンセプトにも取り入れてみました(こちらは3Rまでですが)。
1R Refuse やめる:全ての用具を買うのではなく、必要なパーツだけ購入して組み合わせて使用できる仕組みに。
2R Reduce減らす:1種類のポールで全ての掃除用品が接合できる。接合部だけでも持ち手として使用可能。接合穴が両面にありフックかけとしても兼用が可能。
3R Reuse 再使用:消耗品部分のみ購入して入れ替えができる。
この掃除シリーズは2002年にGOOD DESIGN賞を受賞し、JIDAミュージアムパーマネントコレクションに選ばれました。このコンセプトは現在の無印良品掃除用品シリーズでも受け継がれ続けています。
重要なことは、商品をお客様に提供する段階では「エコ」というキーワードや4Rのことはあえてアピールしないということです。このようなプロダクトとして第一に重要なのは、お客様にとって使いやすく、便利で、快適なデザインであることであり、エコだから購入するのではありません。
お客様が「これは便利だ」「良いデザインだ」と思うことで買っていただくけど、使ってみたら結果エコにもなっていたと後で気づいて頂くことがポイントだと思います。
暮らし自体も4Rで考えられるはず
その後私はプロダクトとしてのエコデザインから、持続可能なライフスタイルのエコデザインを考えるようになりました。
もうひとつ、大きなきっかけとなったのが東日本大地震でした。当たり前のように利用していた電気などのライフラインや食の供給が滞ったときに、いかに私たちの生活が外部に依存し、弱いものであったかを痛感しました。
逆に言えば、人間は食とエネルギーと快適な住まいを確保することができれば、何が起ころうと生きていくことができるということです。
当たり前だったライフスタイルを一度否定して、見直して、別な方法を考えてみる、そんなモデルケースをつくることが出来ないだろうか?
そんな考えから、「持続可能なエコハウスを作ろう」という考えに至ったのです。
これから、noteでそのエコハウスづくりのプロセスをお伝えしていきたいと思います。
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