「フレイル予防としてのアート鑑賞」講座の報告
目次
①講座の流れ
②ヘルスサポーターさんフレイル予防
③アートフレンド前説
④1つの作品をじっくり対話型鑑賞
⑤「ねこのほそ道」展の見どころ紹介
主催者:「豊田市美術館作品ガイドボランティア自主活動アートフレンド」
場所:豊田市井郷交流館
日時:5月11日 13:00~14:30 参加人数:10人
①講座の流れ
「アートフレンド」よりご挨拶と今日の講座流れの説明
井郷地区ヘルスサポートリーダーさんに予防講座(フレイル予防についての説明と簡単な体操)を担当して頂き、アートフレンドのスタッフで1つの作品をじっくり30分かけて対話型鑑賞を行います。その後で豊田市美術館今開催中の「ねこのほそ道」展の見どころ紹介をします。
②ヘルスサポーターさんのフレイル予防の話と運動
簡単な運動で体かがほぐれます。
③前説「アートフレンド」スタッフから 資料確認、フレイル予防(誰にでも起こりうるが、なる前に健康に気をつけましょう)の重要性を説明しました。
「予防の為には社会参加が必要です。社会とのつながりには当然言葉は大切!
見て感想を言うアート鑑賞はうってつけ。
言葉のキャッチボールが脳の活性化に繋がり、アート鑑賞や、美術館出かけることも非日常の体験はフレイル予防に繋がります。」
アートフレンドと美術館の紹介の短いビデオを見ていただく。(「アートフレンド」メンバー作)
豊田市美術館のお得情報も紹介(年間パスポートは3000円、パスポートは有効な間は全ての展覧会を何度でもご覧いただけます。市内の高校生以下、70歳以上は無料など)
④1つの作品をじっくり対話型鑑賞
「アートフレンド」メンバーがファシリテーターとなり、約30分の対話型鑑賞をスタート!
「」ファシリテーターの言葉
『』参加者の言葉
「ポスターの作品を皆さんと一緒に鑑賞しましょう。(チラシとポスター参照)黙ってみるのでなく、好きな人とワイワイするように、声を出してみましょう。アートの見方は自由です。自分と他者との違いを確かめる場でもあります。
聞いたところによりますと、通常美術館で絵の前にいるのはたった10秒だそうです。専門家の解説を勉強のように聞いたとしてもあまり覚えていないそうです。そこで現在世界中でアート鑑賞には対話型鑑賞が有効で楽しいと急速に広まっていす。
今からは、みんなで一つの作品を約30分も見るというこれまでにはした事の無い体験を行います。そして、自分の考え、感想を語っていただきます。それは頭をギューっとひねることかも知れません。でも、その事が、脳の活性化につながりフレイル予防に繋がります。
この絵画が見られる展覧会の説明は後ほど致します。
この作品を見て、最初に思ったことは何ですか?浮かんだ言葉は何ですか」
『・生まれて間もない子猫かな?
・かわいい! 座り方が変わっていて人間の赤ちゃんのよう
・かわいい! 真剣な目に見入ってしまう
・かわいいが私は猫が好きでない
・かわいい! 私は猫が大好きだけど、丸でなくキツネ顔が怖い
・目が真剣で訴えている 抱っこしてと
・あっ猫だ
・猫大好き 見つめられている 何を見つめているのか
・この座り方は犬みたい あまり猫に詳しくないのでわからないが
・写真から描いているのかも?』
「同じ一つの物を見ても皆さん考えや思いが違いますね。でも、全部正解です。勉強だと1+1=2だけど、アート鑑賞に間違いはありません。自分の感想を話しているのだから、人と違って違って当たり前です。でも、日常ではその事に気が付かないものです。
自分の感想も変わります。その瞬間の感想があり、人の話を聞いて変わることもありますね。」
「次に、この猫はどういう状況に置かれていると思いますか?
猫は壁ギリギリにいます。猫が自分で下がったのか?不安で警戒しているのか?緊張しているのか?どういう状況に置かれているのでしょうか?」
『・一人で取り残されて不安で回りを見ている
捨て猫?親と一緒でない?
・お母さんと離されて不安でしょうがない
・初めて写真を撮られていて、カメラ、スマホを向けられ緊張してる』
「皆さんの意見は1つのお話のようになってきましたね。
一つの作品を見て、ストーリーにすることは、作品を深く鑑賞していことで、自分の日常の体験から来るものだとおもいます。
他に意見はありませんか?」
『・首が傾いているので、前に餌があってそこに目がいっているのかな?
・足を踏ん張っている様にみえない。だから、にげようとしてはいない。』
「タイトルは、《ねこ》です。作家の紹介をします。佐々木健さん、1976年生まれの46歳。東京芸大で油絵を学び、通常は絵画の主題にならない様な身近なものを油絵で写実的に描く画家です。今回この絵が展示されている「ねこのほそ道」展の図録に佐々木健さんと絵のモデルになった猫との出会いが書いてあるので紹介します。雨の日に死にそうな子猫を助けるが、自分はまだ画家として一端ではなく、猫を飼えないこの借家から引っ越す余裕もない。しかたないので、当時の彼女の知り合いに引き取ってもらった。その彼女とも分かれ、今はこの猫のことは分からない…と書かれています。
実物の猫を描いています。この猫を作家は、どういうまなざしで描いていると思いますか?」
『・耳が立っているので作家の不安が猫に出ている?私を飼ってくれるのかな?って、不安に思ってる。
・グレー毛の色から暗い気持ちが見える。作者のシリアスで深刻な感じが色に出ている。』
「作家は猫の事をどのように思っていると思いますか?それは、どこからそう見えますか?」
『・お互いに不安』
「それはどこから感じますか?」
『・色から
・頼りない感じ
・しっぽがちょこっと立っているので緊張している
・作家は結局飼えなくて飼い主を探した。かわいいので飼いたい人は大勢いたが、選べなくて最後は付き合っていた彼女の親戚に飼ってもらうことに でも彼女とは別れたのでこの猫がどうなったかは分からないくて寂しい』
「みなさん、たくさんのユニークなお話しありがとうございます。
まとめに入ります。
佐々木さんが猫を描いたのはこの作品が初めてで、猫を描く画家というわけではありませんが、今回ね「ねこのほそ道」展のためにもう1枚新たに描いた猫の作品を紹介します。
彼は東京芸大卒で絵がうまいですね。抽象画のように何が描かれているから見ただけではわからない絵画もりますね。具象的な絵として、人間を描くならそれは肖像画ですね。昔はそれが絵画の役目でした。王様や貴族の肖像画を描く。でもカメラの発明でリアルに描く絵画の役目は必要がなくなった。そして、抽象画が出てきた。この絵は描き方が古典的です。昔なら王様を描いていた伝統的な描き方といえます。でも、モチーフが違う。昔の人は猫を絵の端に描いても、肖像画のようには描かなかった。絵画とはどういうものか?を考えさせる作品と言えると思います。佐々木健さんは、偉い人しかた描かなかった伝統的な昔の絵画をおちょくっているのかもしれませんね。」
「佐々木健さんの他の作品を紹介します。《ぞうきん》《テーブルクロス》。キャンパスに油彩のみで描いています。本物の雑巾がそこにあるようです。美術館の真っ白な壁に雑巾がかかっているようで不思議です。あえて主題は身近なもので、古典的な絵画では決して主題にならないものを描いています。どう見ても本物にしか見えない雑巾の絵が並んでいる様子は、とてもへんてこりんな不思議な展示空間で、面白いですよ。
皆さんから、たくさんのお話しをおきかせ頂きました。よく見た事、たくさん語ったことで猫と作家の不安まで 話してもらいました。まさにそれぞれの見方は自由で正解がない対話による鑑賞になったと思います。
これを機会に、皆様には、御家族、友人と、豊田市美術館で、今日の様な元気なお声は少し小さくして(笑)会話を楽しみながらアートをお楽しみ下さい。ありがとうございました。
⑤「ねこのほそ道」展の見どころ紹介
ここで終わって、皆様には頭の中をぐるぐる回ったままお帰り下っても良いのですが、私たち「アートフレンド」は豊田市美術館の作品ガイドボランティアです。皆さんに美術館をぜひ訪れて頂きたいので、現在開催中の皆さんとじっくり見た《ねこ》が見られる「ねこのほそ道」展の見どころを、スライドを見ながら紹介します。
以上