01_ アテリオバイオのnote、始めます
初めまして、アテリオバイオ代表の三輪と申します。バイオの研究を始めて20年ほどになります。ライラック乳酸菌という独自の乳酸菌を開発して、サプリメント(機能性表示食品)として販売しています。
この度、日本初の乳酸菌EVサプリメントを販売することにしました。世界的にも類似商品は見当たりません。EVとは、細胞外小胞(Extracellular Vesicles)というちょっと聞きなれない名前ですが、EVは健康に革命をおこすと期待されており、いま世界中で研究が盛んに行われている最先端の素材です。
先日(2023.10.23-24、北海道大学)、当社の研究成果を第10回日本細胞外小胞学会学術集会で発表しました。
当社がいち早く製品化にこぎつけたのは、ライラック乳酸菌という優れた素材を、すでに開発済みだったことに加えて、生成AIの力が大きかったと思います。研究開発の方法も着実に進化しつつあります。
生成AIが、研究の開発の方法を劇的に進化させた
私たちが細胞外小胞EVを知ったのは2020年の初めでした。EVの研究としては後発でしたが、2022年11月末に公開された生成AIによって、研究のスピードが劇的に早くなったのです。
といっても生成AIの回答は質問次第です。曖昧な質問には常識的な回答しか得られませんし、間違った回答が返されることも少なくありません。そのため引用文献のチェックは必須の作業です。
生成AIには欠点もありますが、ちょっとしたコツをつかめば、世界の最先端の研究成果を把握して、自分の研究に生かすことができます。短期間に世界レベルをキャッチアップできる。これは正に夢のような時代が幕開いたといえます。
乳酸菌サプリメントの生菌と死菌の違いとは_死菌が効くのは、なぜ?
乳酸菌のサプリメントには、生菌と死菌があります。生菌は文字通り生きている菌で、生きたまま腸に届けば、腸内で増殖して乳酸をつくる可能性があります。腸内環境は乳酸をつくることで整えることができます。しかし死菌は死んでいるのでその可能性はまったくありません。
乳酸菌の外側にはいろいろな突起(リポテイコ酸やペプチドグリカンなどと呼ばれる分子)がついています。これらの突起が、ヒトの免疫細胞を刺激すると、病気に対する抵抗性が上がったり、宿主が腸内の微生物を調整する抗菌物質を出したりします。いわゆる「免疫を上げる」効果は、死菌でも生菌でも変わらないといえます。
今回わかったのは、乳酸菌が出す小さな粒子の機能です。この小さな粒子が大きな効果を発揮することは、これまで知られていませんでした。
天の恵み、ライラック乳酸菌の開発
ライラック乳酸菌は、ライラックの花から採った独自の有胞子性乳酸菌です。もとはBacillus coagulansという属の細菌に分類されていましたが、いまは編成替えになって、Weizmannia coagulansという属名になりました。
この属の菌はもともとは土壌菌で、土の中に住んでおり、直射日光を浴びても生きられる高温耐性があります。土壌菌の摂取を薦める専門書もあり、Bacillus coagulansはその中でも最も推奨するもののひとつと評されています。
ライラック乳酸菌は、Bacillus coagulansの中でも、さらに高温タイプの菌株を厳選し、遺伝子解析を行って特許登録を行っています。
ライラック乳酸菌にはもう一つ別の特許があります。それは強いライラック乳酸菌をオカラの粒に固定して、さらに強くする技術です。こうすることで腸の奥まで届いて大量の乳酸をつくることができます。さらに腸内の細菌を活性化して、短鎖脂肪酸をつくることも確認しています。
このようにして、最大限の効果を発揮するように工夫を凝らしたライラック乳酸菌ですが、腸内環境の改善では説明のつかない、不思議な効果があるということに気づいたのです。
乳酸菌の新しい効果、「炎症抑制」
ライラック乳酸菌を定期的に飲んでいただいている多くの方から、花粉症が治ったというお知らせをいただきました。調べてみるとスギ花粉には効き目があるようですが、シラカバ花粉には効かないようでした。シラカバの花粉症には大豆に交差反応があり、大豆を原料として使っているライラック乳酸菌がシラカバの花粉症に効かない理由は、そこにあると考えました。
さらに知り合いの保護ネコのボランティア団体の代表から、救出した瀕死の子ネコを助けたいと連絡が入りました。点滴で何とか命をつないだ子ネコに、ライラック乳酸菌を飲ませました。すると子ネコは一晩で回復してご飯を食べ始めたのです。
この話を聞いた方は、よかったね、で終わると思いますが、私たちはそれまでの経緯と併せて、ライラック乳酸菌に強い炎症抑制作用があると確信しました。
ライラちゃんの言霊を知りたくないですか
私たちがライラック乳酸菌の不思議な力の源は何だろうと考えていた時に、知り合いの研究者から「ライラちゃんの言霊を知りたくないですか」と聞かれました。2020年の初めでした。その時、始めて細胞外小胞EVの存在を知ったのです。
「言霊」とはEVのことでした。彼は、微生物が出すEV研究の第一人者の先生の講演で、微生物由来のEVのことを「言霊」と表現しているのを聞いて、「なるほど!」と感動したそうです。
正しいものを追求する科学者があえて「言霊」というには、理由があるのかもしれないと思い、ライラのEVを試しに作って調べてみました。そうするとライラック乳酸菌は、ほかの菌の10倍以上のEVを出していることがわかりました。
不思議な力の源は、ライラック乳酸菌が出す大量のEVのおかげなのかもしれない。私たちはEVの魅力に取りつかれました。
それからEVの研究に一気に火が付いたのです。2020年末には研究用の素材として、ライラEV(Lilac01-EV)を販売することになりました※。
※コスモ・バイオ株式会社より
世界が注目する細胞外小胞:EV
当社でのEV研究は、2020年から始まったと書きましたが、その時点で世界ではすでにEV(エクソソーム)の研究が盛んにおこなわれていました。
私達は社外の協力者を含めても、数人の小さな研究グループです。しかも予算は極小。できることは限られています。
後発の私たちができることは何だろうか、私たちは真剣に悩みました。そして考えたのが、そもそもEVとは何なのだろう、ということです。
多くの研究者は、EVをメッセンジャーと考えています。メッセージはどこにあるかというと、EVの中です。EVの中にはマイクロRNAやメッセンジャーRNAなどの遺伝物質のほか、いろいろなたんぱく質などが入っていて、多くの研究者が聞こうとしている「言霊」は、これらのメッセージなのです。
私達は、後発ゆえにそもそもEVとは何かに興味がありました。そのために多くの研究者とは逆に、EVの中身ではなく、外側の膜に注目しました。
その研究は苦労の連続でした。何しろあまり行われていない研究ですので、先例がないのです。北海道大学などの協力者の力を借りて、何とか膜の分析に成功しました。
そして分かったのが、なんとライラEVの成分はミトコンドリアと似ていたのです。
ミトコンドリアは細胞の中にあって、エネルギーをつくる大切な小器官です。
しかも、太古の昔に外の細菌を取り込んで一緒に生きる(共生)ことになったのがミトコンドリアです。
ライラEVはミトコンドリアと似ている!不思議な力の源はここにあったのです。
EVは地球上に生命が現れた最初から、細胞同士のメッセージをやり取りする役割を果たしていたと考えられています。
私たちが今ここに存在するのも、EVによるメッセージのやり取りがあったからなのかもしれません。ライラの言霊は、壮大な生物進化のメッセージを私たちに語りかけていたのです。
次回の予定
02_炎症を抑えると、老化を予防できる?
ライラEVは生物の間のメッセージを伝えていました。生命の成り立ちを知ることで、難問が一つ一つ解決していきます。次回は私たちが目指す「健康革命」の根っ子の部分になる「炎症と細胞の死」のお話です。