情動
小学生のわたしが、泣いている。
みんなは、どうしてみんなで一緒にいられるの?
自分はどうして、広い校庭で1人なの。
頭にボールを強くぶつけられて、泣いている。
驚いてうずくまるわたしを見て、みんな笑っている。
どうしてみんな、笑えるの?
下校の時間がやっと来て、涙のあとが頬に残り。
下駄箱には、靴がない。
裸足で泣いて、道路を歩く。
母もさぞ、悲しかっただろう。
腹が立ったことだろう。
でも、学校は絶対に休ませてもらえなかった。
そんな時代。
わたしはすっかり気も強く、やさしく、自分というものもしっかり持てるようになったと思う。
大人になったことですし、
今を生きているわけですし。
けれど、あの道、あの角、あの場所一帯、今も直視することはできなくて。
絵を描いている時、皿を洗っている時、好きな曲を聴いている時、頭上から降りてくる記憶には、今でも打ちのめされるのだ。
いとも簡単に。
そんな世界を、持って生きている人が、世界中にきっとたくさんいるのだから。
わたしだけじゃないのだから。
そう言い聞かせると、大きな涙のつぶが溢れ出す。
こんな歳になったのに。
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