Azuki Paris

パリ在住。イロ、カタチ、心につきまとう美しさ。感じること。

Azuki Paris

パリ在住。イロ、カタチ、心につきまとう美しさ。感じること。

マガジン

最近の記事

  • 固定された記事

そこに宿る何か。

物心ついた頃から 色の組み合わせと、ものの配置というのが気になって気になってしようがなくて、 大人になってそれはどうなったかというと、 思わず二度見したり振り返ったり、あいかわらずそれはそのまま。 今もそれが気になって気になってしようがない。 目を凝らしたり。瞼を閉じて観察したり。 ハッ とする瞬間がある。 街の一角、寄せ集めで出来上がった空間に浮き出る完璧に思える色の組み合わせ。 カフェ。からみあった足の隙間から見える床のタイルの模様。 向かいに座っている女性の

    • 羊のチーズと体温

      恋人との取り止めもない深夜のメールのやり取りは、 わたしの食指を動かせ、 そしてわたしの体温をほんの少し上昇させる。 ーねえ、もう寝てる? ーまだ寝てないよ。 ー君のこと考えてた。 ー伝わってたよ笑  ねえ、羊のフレッシュチーズって日持ちするのかな? ーうーん、ある程度はするんじゃない? ーおととい美味しそうな羊のチーズ買ったんだけど、週末一緒に食べれるかなと思って。羊の好きだったよね? ーマジ?食べたい。 君の体も食べたい。 ー何の話してんの笑 チーズ?わたしの体? ー両

      • 食べること、味わうこと、その色気

        フランス人の男子は料理好きが多い。わたしが引き寄せているだけなのかもしれないけれど、出会う人出会う人、料理好き、食べること大好き。 なぜかわたしは若い時から、食べること、味わうこと、その時の感覚というものに執着があり、気づけば、食べることとセックスをすることに共通する独特の感覚を覚えるようになった。そして、30歳手前あたりから、その感覚を一緒に共有できる人としか恋愛ができない体質になってしまった。 出会って、話をして、どれだけ話が盛り上がったとしても、食事を共にしてある種の

        • 秋の月、香りの人

          自慢の庭で誕生日を祝うからと女友達エマの誕生日会に誘われた。彼女は夫と6歳になる息子と一緒に街の中心地から少し離れた場所にある一軒家に住んでいる。彼女の家に行くのは初めてで、路面電車の最終駅から山道を車で5分ほどだからね、と住所を渡されたものの、街の中心地の徒歩圏内で生活しているわたしには、山道と聞いてピンとこない。 「家自体は特別でもないんだけど、なんたって彼らの庭がすごいんだよ」 自慢のヴェスパで路面電車の最終駅まで迎えに来てくれた男友達アンドレの言葉に、どれほどの庭な

        • 固定された記事

        そこに宿る何か。

        マガジン

        • フランス私的色彩帳
          9本

        記事

          身体を満たすもの

          今、わたしの身体は完全に南仏の強い陽射しと、濃い青色の絵の具を何度も重ね塗りしたような空と、透き通る水色のゼリーのような海とでできている。 恵まれた地中海性気候、季節ごとのそれはそれは濃い色が中身にもそのままギュッとつまったかのような味わいの有機野菜や果物、朝獲れの魚、新鮮な肉。地元の旬の食材を食べて暮らすこと、それはこの土地に住む醍醐味である。 春が始まり初夏にかけて、ニースの市場はパチパチとはじけんばかりの水々しい食材で溢れ出す。生で食べるとその甘さが口いっぱいに広がる

          身体を満たすもの

          かんきんれいかいきん

          フランスでは、今ホヤホヤに、3月17日から2ヶ月近くに及んだ外出禁止令が、来週5月11日の月曜日から正式に解禁されることが報告された。 レストランやバー等人が集まる場所の営業はまだ禁止で、もう少し先になるらしけれど、もう外出証明証を持たずに普通に自由に外に出れるようになる。 なんだか不思議な感覚である。 指令が出されて一週間目は慣れずに自由が奪われた気がして、結構精神的な意味できつかったが、それもつかの間、二週間も経った頃には監禁生活にも慣れた。自分の好きな時間に起きて寝て

          かんきんれいかいきん

          光の粒

          監禁生活25日目 買い物用の外出許可書を持って外にでる。たいして買わなければいけないものもないのだけれど。 わたしの住んでいる街は、一年を通して雨の日がとても少なく、穏やかな気候と独特の突き抜けるような青い空と青い海が有名な観光地である。 3月の終わりに夏時間を迎え、朝の8時には太陽がきらきらと光出し、夕方の太陽の斜めの強く眩しい光にサングラスは必需品、それは夜の9時頃まで続く。 ああ、この一番いい季節の到来だというのに、監禁生活だなんて。もう今日なんて海に入れるのに。普

          テーブルまでいそいで

          住んでいるアパートの建物を出て左にまっすぐ歩く。一つ目を通りすぎて、二つ目の通りを左に曲がる、と、つき当るボナパルト通り、通称ナポレオン通り。通りに出てすぐの場所に店を構える長身のカフェの店主に挨拶、その隣の洋服屋のスキンヘッドの店主にも挨拶、少し歩いて雑貨屋の前で店主に挨拶、そのまま進んでお洒落さんたちが集まる眼鏡屋も、薬屋も、ゲイが集まるバーも何百種類ものチーズをショーウィンドウに誇らしげに並べているチーズ屋も甘いヴァニラの香りで客を呼ぶクレープ屋も通り越して、角のカフェ

          テーブルまでいそいで

          アイデンティティ。 光。

          監禁令が二週間延びた。 ここ4、5日ほど気分がすぐれなかった。何をしようにもやる気がでない。ここに文章を書こうと思うにも、なかなか書けなかった。 初めは、誰とも会えない、四六時中ひとり、という生活を余儀なくされて孤独でしかたがなくて悲しいのだと思っていた。けれど、本当のところはそれが問題なのではない、ということに昨日はたと気づいた。 誰とも合わず、四六時中ひとりということは、自分とずっとずっと向き合うことを余儀なくされるということだ。1、2年ほど前から自分と向き合うという

          アイデンティティ。 光。

          ジョバンニの買った夢

          歩道の脇、食料品スーパーの前、メトロの構内、メトロの車内、ありふれた日常の中、日本では全く見かけない光景というものがここフランスにはある。 物乞いである。 自国の紛争で自国を去ることを余儀なくされたいわゆる難民とよばれる人たち、高い失業率や病気のために職を失い、もしくは企業に失敗し、果ては住む場所さえも失った人たちが、歩道の脇、道端に座り込んで道行く人へ物を、ほとんどの場合はそれはお金であるが、恵んでもらうよう声をかけているのである。メトロの車内では大きな声を張り上げて演説

          ジョバンニの買った夢

          Paris 私的回想録 - 6 区 -

          初めてパリを訪れたのは、今から十年以上も前、当時働いていたアパレルブティックで次シーズンの秋冬物を買い付けるための1週間の出張旅行だった。その当時働いて会社の女社長から、次のパリコレクションの買い付けにあなたを連れて行くわと任命され、彼女と専務を務める彼女の夫と三人の旅だった。 わたしがその当時働いていた会社が経営するブティックはパリやミラノコレクションが好きな人なら誰でも知っているそれはそれは錚々(そうそう)たるブランドを取り扱うセレクトショップで、女社長が一代で築き上げ

          Paris 私的回想録 - 6 区 -

          Paris 私的回想録-4区

          アンドレと出会ったのは、今となれば名前も覚えていないけれど、サンポール駅から少し歩いたところにあるマレ地区の屋根裏部屋みたいなバーだった。 友人の誘いで顔を出していた、お互いのドレスを褒め合うだけのつまらないパーティを抜け出し、行く当てもなく夜道を散歩している時にたまたまそのバーを見つけた。他に行くあてもなかったし、せっかくの土曜日の夜で早い時間でそのまま帰る気にもならなかったのだ。 入り口の扉を開けるとすぐに上階へと続く古びた階段が現れた。誘われるようにして上に上ると、ま

          Paris 私的回想録-4区

          ハリボテの世界

          昨日から、全面的にフランス全土に、15日間の外出禁止令が政府から出された。 とはいえ、食料や薬、その他生活必需品の買い出しや、軽い運動や犬の散歩などで近くに出ることは許可されている。もちろん病院に行くことも許可。ただし、毎回何の用事で外出するのか、日付、サインした証明証と身分証を持ってしか出られない。外出する時は一人、グループでいることは禁止。警察と軍隊が街を巡回し、許可された外出でないと判断された場合は罰金となる。基本、外に出ることは禁止。 わーい、オフィシャルな休みだぜ

          ハリボテの世界

          光が入る。

          朝目が覚めて、窓を少し開けてみると、そこにはいつものここ特有の突き抜ける青があった。久しぶりに昼前くらいまでゆっくりと寝てしまったので、もう太陽はゆっくりと景色を温めている。それでもまだ空気の中にはしんとした冬の匂いが残り、澄んだ青い色を部屋の中に取り込みたくなって全開に窓を開けた。 昨年の暮れから週7日毎日休みがなく働いていた。がむしゃらな気分になっていたのかもしれない。ただただ自分の好きなことを見つけたい、そんな子供みたいな思いだけが心の頼りにするかのように、毎日を貪る

          光が入る。

          欠片、何かを呼び起こす瞬間

          ピカリと鈍い銀色に光る冷蔵庫の中にその大きな体ごと中までどんどん入っていくんじゃないかと思うほど、ごそごそと頭を突っ込んでスタンが長い間何かを探している。 料理をするからみんなでワインでも飲もうよと、久しぶりにフランスへ帰ってきたスタンから呼ばれ、気の置けない仲間で集まるまだ日中の明るさの名残が残る夜の始め。 朝の市場で調達してきたという食材をどしどしとキッチンの作業台に並べていくスタンの手つきは、無造作でいてけして乱暴ではなく、心地の良いリズムにのっているかのようななめ

          欠片、何かを呼び起こす瞬間

          自己紹介

          とりあえず簡単な自己紹介を。 いろんなことがあって、フランス在住です。 物心ついた頃から、色と形の組み合わせが気になってしかたなくて、 美しい芸術作品を見たり、美しいデザインに触れたりすることがたまらなく好き。絵画、コラージュ、写真、家具、雑誌、建築物、街、人、レストランで出されたお皿の中、いつでもどこでも、はっとする美しい構図や色彩の虜になってしまう。 食べることもこの上なく好きなこと。 日本の書籍を手に入れるのがあまり簡単ではないので苦労していますが、子供の頃から本

          自己紹介