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なぜ北斎なのか〜いま日本が果たす役割とは〜

清藤 誠(キヨフジ☆セイジ)アートドキュメント総合ディレクター

【日本が果たす役割とは】

21世紀初頭に地球上の全世界を襲った新型疫病の蔓延、感染拡大という騒動は、令和3年・2021年の今もなお終息の目処が見えず、先の未来はどうなるのかわかりません。 東京オリンピック・パラリンピック(令和2→3年)の開催是非に限らず、 2025年大阪・関⻄万博の現実的実行の道は、新時代における忠実なやり方を模索し、 極めて地球環境に即した生物の進化の過程において開発を進めて行くべきだと、 私たちアートドキュメントは願っています

年々度重なる地震や台風などの自然災害から、二度に渡る人類初の核兵器戦災や、原子力発電の災害事故 など、史上稀に見る歴史的困難を経験し、克服し続けているアジア極東の島国、わが国・日本。 (現在も新型疫病蔓延の観点から見れば、感染者数・死者数では他国との圧倒的に低い数値の違いがあり ます)   ある意味、”世界的にも特異な位置に立つ日本が、いま果たすべき役割とは何か? ”   私 た ち は 美 術・芸 術 、伝 統 文 化・芸 能 な ど 日 本 独 自 の 文 化 精 神 を 通 じ て そ の 問 い の 思 索 を 続 け て い ま す 。

【いま、なぜ北斎なのか】

日本の芸術文化が世界中の注目を浴びた最初のきっかけは、江戶の錦絵、浮世絵でした。 

当時、海外との唯一の交易国オランダから、最初は輸出する物品の包み紙として利用されていた浮世絵版 画の絵を欧州の収集家が発見(ドキュメント)したことに端を発します。ヨーロッパの絵画表現とは一線 を画す、描写・構図、色使いなど、それはその後の19世紀の⻄洋美術に多大な影響を与えることになる の で す 。印 象 派 と 呼 ば れ る 画 家 た ち 、マ ネ 、ル ノ ワ ー ル 、モ ネ 、ホ イ ッ ス ラ ー 、の ち に 頭 角 を 表 す ゴ ッ ホ 、 ロートレック、ボナールなど新しい芸術表現に革命的なインスピレーションを与えたのは、言うまでもな く日本美術・浮世絵だったのです


中でも、葛飾北斎は別格でした。オランダ商館医として来日していたシーボルトは、北斎に絵を発注し、 何枚かの肉筆画・版画が海外へ渡りました。現在でも世界的に有名な日本の絵画、北斎の冨嶽三十六景「神 奈川沖浪裏」や「凱風快晴」などは当時から、欧州の芸術文化、音楽・舞台芸術、デザインにまで多大な 影響を及ぼしたと言われています。また、19世紀中にも文芸評論家ゴンクールが、「歌麿」「北斎」の 本・伝記を執筆し、出版しています。北斎が描いた摺絵や、北斎漫画という絵手本(戯画見本)は、実際にプロフェッショナルな絵描きたち、 とくに印象派の画家たちのバイブル的存在ともなりました。


最初に大海を渡った絵師・北斎の創造性、日本独自のアート志向をあらためてドキュメントし、価値付け する。 いま地球の全世界が、未来への希望を見つめる上で大事な感性・日本の美術的思考を、自信を持ってお届 けするために。 私たちは200年前の江戶において90歳まで生きた天才絵師・北斎と、世界に多大な影響を与えた江戶 絵 画・浮 世 絵 文 化 に 焦 点 を 合 わ せ て い き ま す 。私 た ち ア ー ト ド キ ュ メ ン ト が 、こ の 数 年 に 渡 っ て 力 を 入 れ 、 注目し価値付けしていくこと。それが「北斎プロジェクト2024/Art Document Project “HOKUSAI”2024/25」です。

【北斎プロジェクト 2021 年 6 月スタート】
開幕スタートとして、劇場公開の映画作品、美術館の特別企画展覧会、大型イベントを取り上げ、ドキュメ ントします。 

はじめに、2020年の東京国際映画祭クロージング作品で、令和3年・2021年5月末より(東京6月1 日〜)に劇場公開となる映画「HOKUSAI」(監督:橋本一/出演:柳楽優弥・田中泯・玉木宏・永山瑛 太・阿部寛)開幕に合わせ、葛飾北斎と江戶浮世絵文化をめぐって、アートドキュメント映画評と美術史 論考を掲載いたします。



映画「HOKUSAI」ポスタービジュアル



【第一弾】画狂人北斎・浮世のドラマツルギー 〜映画「HOKUSAI」に思うこと〜/中村萬悠(なかむら・ばんゆう/美術史家)

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(7 月〜) 【第2弾】「江戶絵画・浮世絵の真髄をドキュメントする〜岩佐又兵衛・春信・清⻑・歌麿・写楽・北斎・広重〜」

 (8 月〜)【第3弾】「ニッポンが誇る世界的クリエイター北斎と北斎漫画」 


【Writer Profile】清藤 誠 Seiji Kiyofuji アートドキュメント総合ディレクター

TVプロデューサー/番組ディレクター。NHK、日テレ・TBS・フジ・テレ東など放送局、プロダクションを経て現在、株式会社ザ・パス代表取締役。1995年より在京キー局の放送局で番組製作に携わる。2025年大阪・関西万博も視野に、未来と海外に向けた日本の芸術文化コンセプトを提案し、伝統と新秩序に新たな価値付けをする一般社団法人「日本藝術文化思索協会・アートドキュメント」総合ディレクター、理事。

主な作品に、NHK E テレ『日曜美術館』(「ジョルジュ・ルオー“聖顔”に込めた魂の救済」2018/「エロスと死の香り~近代ウィーンの芸術 光と影」2019)。TOPPAN印刷博物館などのVRシアター(「システィーナ礼拝堂・ミケランジェロ創世記~最後の審判」2014/「唐招提寺~鑑真和上がもたらしたもの~」2021)。アート番組、映像作品の企画・構成、プロデューサー

テレビマンとして長年の取材・調査で得た知識により美術史・宗教民俗学の研究と考察で独自の活動を続ける。占星術・運命学、祖先信仰にも詳しい。経営者や組織リーダー、個人に向けた運命鑑定・陰陽師としても活動する。東京〜全国、京都・大阪で開催される美術展・展覧会の最新情報、おすすめの作品、鑑賞ポイントなどの情報を網羅している。公開前の劇場映画作品、能・歌舞伎、神社や寺院、アート・文化、芸能・エンターテインメントなどの番組企画、レビュー、ガイド、イベント立ち上げの作家・ナビゲーター。


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