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【開催記録】第76回 アート対話カフェ      2024.11.18 mon.

芸術の秋、食欲の秋…秋の夜長、皆さんはどのように過ごされてますか。
自己紹介では、皆さんの今読んでいる物語を紹介し合いながら楽しく会がスタート。皆さんいろいろな本を読まれているのですね。
今回は2作品を皆さんで鑑賞しました。最初の一枚はこちら(鑑賞時は作者名、タイトル等は伏せています)。

鏑木清方『曲亭馬琴』(1907年) 鏑木清方記念美術館 所蔵
  • 作品の中の女性が老人から何かを学んでいるように見えると感じた。手相の見方や占いの法則、またはデッサンの技術を教わっているように見えた。作品の奥にいる2人の子供が手遊びをしているのも興味深いと感じた。

  •  作品の中のおじいさんの指の近くに女の人の絵が描かれているように見え、その絵がまるでスノードームのよう。さらに、手が透けているように見える。

  • 作品の中で子供が遊んでいるので、女性が母親なのではないかと感じた。夜に勉強している場面だと考えた。その場所が自宅であり、老人が祖父なのではないか。

⇒夜だと思われたのは、作品のどこからそう思いましたか。

  •  真ん中にあるライトです。あと全体的に黄色い感じが照明の明かりを表現しているような印象を受けました。

  •  作品の中のおじいちゃんが目が見えないのか、どこを見ているのかが不思議に感じた。女性はおじいちゃんの手元をしっかり見ているが、おじいちゃんは上目づかいになっていると感じた。滝沢馬琴のように、目の悪い方の口述を女性が筆記しているのではないか。

  • 確かに高齢の男性の目線が不自然だ。だから会話しているのかどうかがわからないと思う。

  • 左下の人物が幽霊だったら面白い。現実の世界と幽霊みたいに左と右で二つの世界が混在しているように見える。そしてこの男性が着ているものが何かの職業に関連しているのではないか。外套のように見えるが、お坊さんや占い師のような職業の人が着るものかもしれないと推測した。時代によってはお坊さんの可能性もある。

  • 行灯が絵の正面にあることに目が行く。もっと端にあってもいいのではないかと感じた。行灯が現実世界と幻想的な効果を出しているように見える。行灯が存在感を持ちすぎていて、夜を表現するには主張が強すぎると感じた。絵でこんな風にどんとものを描く人は少ないため、珍しいと感じた。

先ほども、左と右でちょっと世界が違うんじゃないのってお話があったのですが、この行燈がその境界線みたいな感じにも見えるんじゃないっていうふうにお話しいただきましたね。

  • 皆さんの意見と重なる部分が多いが、舞台は江戸時代のように感じる。行灯が大きく描かれているが、明かりをあちこち設置して、それに子どもたちの部屋にもあるように見える。子どもたちの服装が良い着物のように見えるし、裕福な家庭のように感じた。

  • お母さんか奥様が特殊な勉強をしているように見える。おじいさんのしぐさから、手相や一般の人に教えない何かを教えているように感じた。

  •  男性の手元にあるものが平安時代の絵のように見える。屋根が抜けたように描く平安時代の描き方(吹抜屋台)に見えるし、絵の中に貴族がいるように見える。

  •  葛飾北斎がその書き方を指導しているのではないか。顔が似ていると感じた。子どもがいるのは不思議だが、北斎の娘さんも確か絵が上手だったと思うので、彼女に教えているのではないかと考えた。

  • これは想像だが、女性の後ろにいる子どもは、女性の子どもだと思った。女性が一人で子育てをしていると感じた。男性から仕事や稼ぐための知識を学んでいるのではないかと考えた。部屋が裕福な感じがするので、貧困ではないと感じた。

⇒ 皆さんのお話を聞いているといろいろな推測や想像がありましたが、いずれにせよこの男性がこの女性に何かを教えてるんじゃないかというのは共通のようですね。


二枚目はこちら。

月岡芳年『百月姿』より「石山月」1892年 仙台市博物館 所蔵ほか
  • 背景の岩や山、木が雑な描き方でわかりにくいと感じた。大河ドラマ「光る君」を見ていて、ちょうど望月の回で、丁度この絵も満月だから紫式部を思い出した。さっきの1枚目の絵の中の女性が紫式部だったら面白いと感じた。

  • 行燈の代わりに柱が邪魔になっていると感じた。これも1枚目のポーズが一致していて面白いと感じた。

  • 岩みたいな感じの山か崖かわからないけど、その高いところに女性はいるのでは。

  • 背景が岩山っていうか山奥だろうか。行灯のようなライトが神社にあるものに似ている。そこで修業中か黄昏れているか、満月を眺めてゆっくりしている場面かな。木の柱に落款やサインのようなものがあると感じた。

  • 女性が台に肘をのせていて、左側に巻物がある。おそらく文字や歌を書こうとしていたのだと思う。机は本来柱の内側にあるべきだが、女性は前に出して景色を見ている。それほど外の美しい景色を見たいという気持ちが強いのだろうな。

  • 女性が微笑んでいるように見える。女性が恋していて巻物に手紙を書く場面かもしれないと感じた。昔の恋する女子学生のようなポジティブなイメージを受けた。

季節はいつ頃だと思いますか。

  • 羽織っているので季節は多分ちょっと肌寒い時期だが、雪が降っていないので冬ではなく秋から冬の間の時期だと感じた。自分も女性が微笑んでいるように見えて、夜の時間帯に楽しい思い出や好きな人のことを思い出しているのではないか。

  • 絵の視点がどこから描かれているのかがわからない。女性のポジションから見ると、月や提灯、山や岩などの遠近感がおかしいと思う。特に真ん中の岩がやる気のない書き方に見える。女性が持っている感情が景色に反映されているのではないか。外から見ている視点の絵だとすると、おかしな絵だと感じた。

  • 初めに一人で鑑賞していたとき、女性の周りにあるものが波しぶきだと思っていたが、皆さんの話を聞いて危ない状況ではないとわかり、安心した。季節は秋だと思う。最近お月様が綺麗なので、今ぐらいの時期だと想像した。女性の心の様相が風景に映し出されているという意見に納得した。

二つの作品を並べてみることで、何か考えられることがありますか新たな視点や共通点が見えてくるかもしれません

  • 女性がどちらも座っている。どちらも物書きか、1枚目の女性は熱心に勉強をしていて、2枚目の方は物思いにふけっている感じ。行灯と柱が共通している点や、女性が同じ人物かもしれないという意見が出た。

  • 夜が共通しているため、昼間は何をしているのか興味を持った。夜じゃないと勉強できないのかと感じた。修行しているのではないかと感じた。夜になると何かをする人たちなのかな。

  •  紙があるので、何かを聞いて書き写しているのではないかと感じた。女性の巻物と紙が関係しているのではないかと考えた。二枚目の絵の台が非常に粗末に見える。スチール製のように感じた。初めの絵の台はガッチリしていて、現代性があると感じた。

  • 左のスノードームが気になる。二枚目の女性の羽織の中が白い。寝巻なのか巫女さんの装束なのかがわからない。左上のドームの中の女性の服装も気がかり。両方の女性の身なりが気になった。


今日の裏テーマは「物語を紡ぐ」。
どちらも日本の歴史に名を刻んだ作家、そして彼らが物語を生み出している場面が描かれた作品でした。
1枚目:滝沢馬琴(曲亭馬琴)は目が見えなかったため、息子の嫁に口述して南総里見八犬伝を発表した。
2枚目:紫式部が石山寺で源氏物語を構想している場面を描いている。これは月岡芳年の「月百姿」の一部で、他にも様々な物語と月の作品が含まれている。

皆さんも1日の終わりに、対話型鑑賞会に参加してみませんか?ご参加お待ちしております!

次回イベントはこちらから!

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