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法隆寺西円堂修二会 (2月1日〜2月3日) / 法隆寺・薬師寺・東大寺修二会の「松明」と「鬼」の関係
法隆寺西円堂 (さいえんどう) 修二会 (しゅにえ 2月1日〜2月3日)
結願日の3日は西円堂 (国宝) で追儺式 (ついなしき。鬼追い式 [おにおいしき]) が行われ、
3人の鬼が西円堂の外側を時計回りに歩きながら、火のついた松明を投げます。
19年に参観し、写真も撮ってきました。
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〔📷 ↑ 法隆寺西円堂修二会追儺式。画面右端から二人目のオレンジ色の衣装が毘沙門天役。法隆寺のこの毘沙門天は、(興福寺では鬼と闘って倒す場面があるのと対照的に) 鬼たちの後ろを殆ど歩くのみで、お祓い的な役割に見えます。 [注1] 〕
薬師寺修二会の結願日の追儺式も17年に参観し、
その時にも鬼が松明を振り回していました。
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そこから連想されるのは、東大寺二月堂の修二会 (通称 お水取り) で行われる、有名な「お松明」や「達陀 (だったん)」などの、松明を扱う場面です。
二月堂 (国宝) 内で行われる「達陀」は
「火天」役の練行衆の僧侶が松明を持ちますが、
二月堂外縁の懸崖造りの舞台で行われる「お松明」は
寺男たちが、元来練行衆の足元を照らす松明を持って走り、
舞台から下の参観者に向けて松明を突き出し、火の粉を降らせます。
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〔📷↑二月堂南西角の下から撮影〕
東大寺二月堂修二会は、法隆寺や薬師寺の修二会と違って、
松明を持つ鬼も、
後ろから鬼を追い払う「毘沙門天」も出てきません [注2] が、
法隆寺、薬師寺の修二会で松明を持つのが鬼である以上、
やはり東大寺修二会の走る松明も
「鬼」を暗示しているとの解釈が可能でしょう。
さらに、
松明を持つ寺男が二月堂の西縁の舞台を
北から南へ走る先には、
或る有名な存在が見えます。
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🔍 森本公穣さん (東大寺のお坊さん) のTweet. 写真は東大寺法華堂 (三月堂) 執金剛神 (しつこんごうしん) 立像 (天平時代 塑像 国宝)
【拡散希望】12月16日は東大寺初代別当の良弁(ろうべん)僧正のご命日法要「開山忌」です。開山堂「良弁僧正坐像」、法華堂「執金剛神立像」、俊乗堂「重源上人像」「阿弥陀如来像」を特別開扉します。どうぞお参り下さい。 #奈良 #東大寺 #仏像 https://t.co/srxKRqDVxL pic.twitter.com/s4fRca4vTc
— 森本 公穣 @東大寺 (@kojomrmt) December 12, 2019
天平時代 (奈良時代) と鎌倉時代の複合の名建築・法華堂 (三月堂 国宝) です。
安置されている、いずれも天平時代の国宝の仏像群の殆どは
二月堂に背を向ける形で南を向いていますが、
ただ一体、執金剛神 (しつこんごうしん) 立像 (天平時代 塑像 国宝) だけは
右手に金剛杵 (こんごうしょ) という棒状の武器を執って高くかざし、
刮目決眦の憤怒形で北方を向いています。
この配置には幾つかの解釈が考えられますが、
私には、
火の粉を撒き散らしながら南へ走ってくる「松明」と
北を睨む執金剛神像とが向かい合っているように見えます。
松明を突き出して火の粉を降らせるポイントの一つ、
二月堂の南西の角を見上げる位置にあり、北向きに開いているのが
法華堂の北門で、
そこから間近に法華堂の北の面、執金剛神を祀る北の間の戸口が見えています。
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[ ↑ 📷 右が法華堂 (西側面) すぐ左が法華堂北門、その左上が二月堂 ]
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[↑ 📷 法華堂 画面での左側面 (北面) の戸口を覗くと、北向きの執金剛神像を安置する厨子が見えます ]
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[↑ 📷 夜の法華堂 ]
🔍 森本公穣さん (東大寺のお坊さん) のTweet.
1268回目の #修二会(しゅにえ・ #お水取り)。いよいよ本行が始まりました。全ての生命のため、 #練行衆(れんぎょうしゅう・僧侶)11人は #二月堂 本尊の #十一面観音 に対し、3月15日の満行までただひたすらに祈ります。その練行衆が上堂する道灯りとして、#お松明 は用いられます。 #奈良 #東大寺 pic.twitter.com/oagl8Klsrs
— 森本 公穣 @東大寺 (@kojomrmt) March 1, 2019
📝 Tweet写真は二月堂の南西の角から火の粉を降らせる、お松明。写真の右下外側の位置に「法華堂北門」があります。
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注1.
(🔍 興福寺公式ページ [追儺会] https://www.kohfukuji.com/event/tsuinae/ )
薬師寺の毘沙門天は儀式の終わりに、ちょっと気合を入れた風に早足で去って行きました。これらのニュアンスの違いはほぼ「予想」通りで、各寺院の発願者のスタンスが反映したものと感じます。
(🔍🎞 薬師寺公式ページ [鬼追い式] https://yakushiji.or.jp/event/hanaesiki.html#onioishiki )
注2.
「お松明」が運び上げられる
二月堂の北西にあり、東へと堂に上がる登廊の麓に
東向きの毘沙門天像が祀られています。
あたかも登っていく「お松明」を後ろから見つめているような位置関係です。
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〔📷 ↑ 二月堂への登廊で振り返って見た状態。左の格子戸の中に毘沙門天像が祀られています。左の建物は修二会に参加している僧 (練行衆) の食堂 (じきどう [ 毘沙門天とほぼ対称の位置に鬼子母神を祀る ]) で、右は練行衆が寝泊まりする参籠所。間の通路がトンネル状になっており、細殿 (ほそどの) と呼ばれます。〕
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📷 ↑ 二月堂の舞台から見た登廊。麓に毘沙門天の戸口が見えます。
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📷 ↑ 二月堂から西を望む
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📷 ↑ 毘沙門天の戸口とほぼ対称の位置に有る鬼子母神の局 (二月堂食堂西面)。
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🔍 朝日新聞社公式YoutubeChannel 東大寺二月堂修二会お松明動画
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(参考)
📷 法隆寺西円堂 (国宝) 大般若経転読法要 (2018年10月18日)。 法要後一定時間、堂内へ入れました。
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📷 東大寺法華堂 (三月堂 国宝)
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📷 東大寺二月堂 (国宝 右上) 画面左下は閼伽井屋
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