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【旅行記2日目】Cragside クラッグサイド:世界初の水力発電で照明された、ヴィクトリアンインテリアのファンタジーな邸宅

イングランド北部、スコットランドに近いノーサンバーランドの旅行の2日目。

ウィリアム・アームストロング氏が作り上げた、科学技術と芸術の素晴らしい組み合わせでできたCragside( クラッグサイド)という邸宅に行ってきました!

▼1日目はこちらから

今回の旅の日程は

1日目 Bowes Museu(ボウズミュージアム)

2日目 Cragside( クラッグサイド)  ← 今回はここ
3日目 Alunmick Castle(アニック城)
4日目 Wellington(ウォリントン)

クラッグサイドは、ファンタジーという言葉が似合う場所でした。
ファンタジーって、空想、想像とか非現実的という意味で、科学者の作る邸宅には不釣り合いな言葉のようなのですが・・・

現実離れした、ちょっと夢のような美しさや、想像を遥かに超える革新的さ、そして弁護士から、世界中のVIPたちが訪れる場所を作り上げたっていうところが、ファンタジーだなと思ったんです。

今回は、どんなファンタジーな要素があるのか?
じっくりとお楽しみください!!

驚異な発明家、アームストロング卿とは

21歳のウィリアム・アームストロング

ウィリアム・アームストロング卿(1810-1900)はまず弁護士としてキャリアをスタートさせます。
それからエンジニアに転身し、“油圧機械“を作成。
この油圧機械がのちに作り上げる クラッグサイドを驚異の館にするのです。

イングランド北東部のニューカッスルにある経営していた工場では、最盛期には25000人の従業員を雇い、油圧クレーン、船舶、兵器の製造で大成功します。
ロンドンにあるタワーブリッジの建設にも関わっていたんですよ。

1887年、その数々の功績のよって、ヴィクトリア女王から男爵の爵位を授けられます。彼は貴族院のメンバーになった最初のエンジニアなんだそうです。

革新的な家には驚く仕掛けがたくさん

水力発電で邸宅内の照明に成功しました
七宝の花瓶を土台にジョセフ・スワンの白熱灯がつけられたもの
キッチンにある食材などを運ぶエレベーター
明るいキッチンの右側には回転する焼き串が
自動食器洗浄機に似たようなものもありました
トルコ式バス
温室にはセントラルヒーティングも

クラッグサイドにある邸宅の中は本当に驚く仕掛けがたくさん。
今となっては当たり前のようなものばかりですが、当時は本当に多くの人が驚いたと思います。

例えば、敷地にある人工湖と地下の配管によって、世界初水力発電で照明された家なんです。
ジョセフ・スワンというこちらもイギリスの発明家が白熱灯を発明し、彼の白熱灯を使うことで1880年には広範囲に照明を使うことができました。

そして、油圧機器は家に水を供給するだけでなく、他にもこんなことも可能にしました。
・人や物を運ぶエレベータ
・キッチンには食器洗浄機
・肉を焼くときに回転する焼き串
・庭園の温室にはセントラルヒーティングがあり果物栽培を
・植物が日に満遍なく当たるように回転する植木鉢

広大な敷地にあるものは

Cragside全貌

アームストロング家の広大な敷地は、712ヘクタール。
もうよくわからない広さですが、71.2平方キロメートルとなります。
東京都町田市の面積が71.6平方キロメートルだということなので、ほぼ同じくらいですね。
(と言われてもああなるほど!とはわからないですが・・・)

敷地の中は、一言で言うと森でした笑
車で クラッグサイドに向かう途中、遠くの方に明らかに他と違う濃い緑の木が生い茂った森が見えてたんです。
その中に、邸宅と、ロックガーデン、人工湖、鉄の橋、温室もある美しい庭園などが広がっています。

森となっているのが、160年前に植えた700万本の木たち。
特に北米の針葉樹を、この地に合うように選び植えられました。
イギリス国内でも最も高い木もあるそうですよ。

もともとは不毛の土地を、アームストロング夫妻は25年の歳月をかけ各方面の専門家とともに現在の姿にしていきました。

ロックガーデン
途中車でも移動して・・・

ファンタジーな外観の秘密

建物の外観は、いろいろな建築スタイルが組みあわせて作られています。

『ハリーポッター』の映画に登場するホグワーツも色々な建築スタイルが組み合わさっていますが、それに似たものを感じます。

ギャブル、城壁、チューダー様式の煙突、ゴシック様式のアーチなど、多様な建築スタイルと要素の組み合わせによって作られています。

アーツ・アンド・クラフトの最高のインテリア

邸宅の内部は、ウィリアム・モリスやダンテ・ガブリエル・ロセッティらによるデザインが特徴。ヴィクトリア朝の美意識を反映した、豪華で手の込んだインテリアが素敵です。

ステンドグラスはダンテ・ガブリエル・ロセッティのデザイン
ウィリアム・モリスのステンドグラス
こちらもモリス
ベッドルームにもモリスの壁紙
廊下にも
大理石の豪華な暖炉
階段の装飾なども素敵です
エキゾチックなラグとステンドグラスの組み合わせが美しかった!

お客様はロイヤルファミリー

その豪華さと革新性から、Cragsideはロイヤルファミリーなどの名だたる訪問者を数多く迎え入れていました。

アフガニスタンの皇太子、イランの皇帝、中国の政治家など。
そしてのちのエドワード7世とアレクサンドラ女王となる皇太子夫妻も滞在。

そのような重要なお客様様の滞在する部屋は・・・

日本との深い繋がり

邸宅内には”Japanese Room”があり、日本の美術品や家具も多数置かれていました。
この部屋は3代目のアームストロング男爵が代々の日本との繋がりによって作ったのだそうです。

昭和天皇の義理の叔母にあたる徳川為子様とご主人の徳川頼貞様との交流も深かったようで、2人から贈られた浮世絵などが飾られています。

日本の間

さらに帝国海軍の強化のために、日本はアームストロング男爵の重要な顧客として、船や武器を購入していました。

1953年には、当時皇太子殿下だった今の上皇様が、エリザベス2世女王の戴冠式に出席するためイギリスを訪れた際、ここ クラッグサイドに招待され滞在されたそうです。

対日戦で多くの兵士が日本軍の捕虜収容所で苦しむことになるなど、第二次世界大戦が終わっているとは言え、当時のイギリスでは日本に対する感情は快くないものでした。
そんな中アームストロング男爵は長い日本との付き合いから招待をすることを決めたのだとか。

邸宅内の応接間には陛下の写真が今も飾られていました。

 クラッグサイド訪問を終えて・・

 ここからは、今回クラッグサイドに行っての感想です。
私は数年前、カントリー・ハウスのオンライン講座を開催していました。
そこで参加してくださった方から「カントリーハウスにはいつ頃電気が通ったのでしょうか?」というご質問をいただきました。
そのことを調べているときに辿り着いたのがこちらの クラッグサイドでした。

発明家によるアイデアとそれを実現した集大成の場所。
そこに自分の大好きなウィリアム・モリスやロセッティのラファエル前派の世界のインテリアが広がっていて。
日本との深いつながりも興味深かったです。

海外に行くと日本のこと考えること多くなります。
戦争後の戴冠式に当時の皇太子様はどんな思いで出席されたのか、またアームストロングさんと親しかった徳川頼貞氏や駒子さんはどんな方だったのか。
知らないことがたくさんです。

この クラッグサイド、イギリスの歴史の中でも結構重要な場所なのですが、以外にも名前すら知らないというイギリス人がたくさんでした。
日本でもそうですが、近いとなかなか行かないとか、文化施設に興味がない人には全く縁がない場所なんだろうなと感じました。


さて今回は 、ノーサンバーランド旅行の2日目、クラッグサイドをお届けしました。
次回はアニック城をたっぷりとお届けします!!
お楽しみにー。

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