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匿名女性の小切手がアメリカ行きを止めた・・ホルバインの美しい肖像画ー【美術品と来歴を探求するシリーズ】

海外の美術館のサイトを見ると、作品紹介に”来歴”(英語ではProvenance)が書かれています。

来歴とは作品が誕生してから現在に至るまでの旅の軌跡。注文主、オークション、コレクターやギャラリーなど、どんな人々の手によって大切にされ、時には国境を越え、盗難や破壊などの影響を受け、文化や時代を超えて受け継がれてきたのかを教えてくれます。

美術品がただの物体ではなく、生きた歴史を持つ宝物であることを思い出させてくれて私を魅了します。

作品そのものと同じくらい来歴に惹かれるのは、歴史が好きだった子供時代とも大きく関係しているのかも。

『美術品と来歴を探求するシリーズ』では、気になって調べずにはいられなくなった作品が、どんな人の手を渡ってきたのか、どのように美術館に収められたのかを探るシリーズです。

noteの有料記事は、一度購入していただいた記事は更新されても読むことができるという私のようなクリエイターにはとってもありがたい。

ある時ふっと調べていた情報に出会うことはこれまでにも何度もあって、公開したら終わりではなく、出会いがあればこの記事も随時更新していきたいと思っています。

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ロンドンのナショナル・ギャラリーにある、デンマークのクリスティーナの肖像画。この絵にはなかなか興味深い背景があります。

もともと、イングランド王ヘンリー8世がお妃候補の顔を見るために描かれた肖像画でした。宮廷画家であるハンス・ホルバインの描いた美しい絵です。ヘンリーはとっても良い反応を示したにもかかわらず結婚は実現しませんでした。

それにもかかわらず、ヘンリーはその絵画を非常に気に入って、それを手元に置きたいと思いました。さらにイギリスでもその絵をずっと保持してきた。

しかし、20世紀初頭に絵はアメリカへ売却される寸前にまでなりました。それを止めたのが、匿名の女性からの小切手。

2023年秋に、ロンドンのナショナル・ギャラリーで、クリスティーナの穏やかな表情と美しい指先を見つめてきました。このエピソードを書こうと思ったきっかけです。

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