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雨よ恋 10

ずっと気になっていたことがある。どんなカタチであれ、好き好んで雨風の強い日を選び撮影した作品に、観る人はどんな感情を抱くか?。

山口県は平成30年西日本豪雨、その4年前の広島県の豪雨災害が記憶に新しいところだ。そして今年もまた7月、九州に豪雨災害が…時間が進むにつれて事態は酷くなるニュースが耳に入る。

『撮る人の気持ち。撮られる人の気持ち。そしてそれを観させられる人の気持。』撮影やセレクトをしながらも、そんな話を投げ掛けて、話し合ってもらった。

場合によっては、他人の不幸に乗っかり不愉快な思いをさせる可能性だってある。
かと言って映画『雨に唄えば』や『ショーシャンクの空に』、日本で言えば『台風クラブ』や『天気の子』が豪雨災害被災地の方からお叱りを受けたか?
これが後で思えば、立木義浩審査委員長が本校の作品レビューで指摘された『非常識な常識の落とし穴も用意されている…』に当たるのかも知れない。

結論こそ出ないが「他人の不幸をネタにだけはしない。そこらを充分配慮した作品にしたい」と言う申し合わせは出来ていた。ただ面白いから、創りたいから…だけではダメなのだ。そんなことに気づかせるのは顧問の役目かと思う。

例年よりも遅い期末テストは月後半。7月の前半は、セレクトもしたが、何か皆、釈然としていなかった。

というのも、6月最終日の早朝に光市の土手で撮影した2年の写真が良過ぎたからだ。それだけでも1作品できそうだった。3年はあんな写真がもっと撮れればと思っていた。びしょ濡れでぶっ飛んでいる髪。風に持って行かれる傘。そんな写真を欲っしていた。

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7月10日。その日も屋上で2年で先日の土手撮影に参加できなかったメンバーが悔しかったのか、放課後、渡り廊下で髪を濡らして、扇風機で髪をはためかせていたが、「そんなんじゃない」とダメ出ししていた3年。一度は投げ捨て挫折までしていた先輩達の心に火は点いていた。

そして同じ日の17:30。そろそろ帰りましょうかの雰囲気になっていたところに…

「ゲリラ豪雨だ!」
誰かが叫んだ。高性能なお天気アプリを頻繁に確認していたようだ。「先生行きましょう!あの土手へ!雨が来る!日が暮れる!」
「う あ…イイよ? でも衣裳は制服で?」
「家に取りに帰ります!車回してください!」「2年!カメラ準備して!」40秒で支度しなの世界だ…。

カッコイイ…頼もしい…見惚れる私をよそに、本当にそのくらいで準備して校舎を駆け下りる。

モデル役の自宅を2件回って、現地到着し車内で着替えるもすでに18:00を回っていた…
「もう少し!」「走って!」「飛んで!」
開始10分でまたもビニール傘は壊れていたが、
いつの間にか豪雨を見越して防水カメラも用意している。暗くなるだろうと見越して、フラッシュを持って来ていた。そのせいもあってか、日が暮れても、まだ撮影は続く。全員に遅くなる了解を保護者にもらうよう連絡するよう伝えると「もう、LINEしてまーす!」「さっき家を出る前に行って来ましたー!」
先が読めるようになったということか…本当に頼もしい。

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本校の美術部員には運動部あがりも多い。風に飛ばされるのは、自然の強風だが、さらに風に乗って吹っ飛ばされる演出は、元バレーボール部員Rの役目。さすがの飛ばされっぷりである。

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強風も豪雨も本物には敵わない。ヘロヘロになって撮影終了。日はとっぷり暮れていた。毎度お馴染みビニールシートの出番。
そして本日の破損:ビニール傘2本
        :レンズ不具合1本

ご愁傷様でした😭


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そしてこれらの写真を次の日、サーバーに保存し、色調補正した後にコンタクトシートに追加し、いよいよ最終セレクト。

7月11日。期末考査発表まで1週間。実質、そこが写真甲子園応募の最終〆切だった。


                            つづく

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